ICカード事業について

  1. ICカード市場概況
     ICカードは、プラスチックカードにCPUやメモリ(EEPROM、ROM)などのICを組み込んだもので、 リーダライタとの通信形態により「接触式」と「非接触式」に大別されます。 また、「接触式」は、「CPU付き」と「CPUをもたないメモリーカード」に分類されます。 このうち、当社は、「CPU付きの接触式ICカード」と「非接触式ICカード」を事業領域ととらえています。
     ICカードの導入分野としては、(1)決済分野(2)データキャリア分野(3)ID分野(4)これらの複合領域があります。 特に決済分野では、クレジットカードの事実上の国際標準となっているEMV仕様(*1) の制定や国内銀行業界の仕様(全銀協仕様)が決定されたことで、 今後急速な利用拡大が予想されます。 金融決済向けのICカードの国内需要は、 今年が約90万枚、2000年には約850万枚と大幅な伸長が見込まれます。 金融決済の応用分野である電子商取引分野では、 当社とビザ・インターナショナルが幹事を務める「スマート・コマース・ジャパン(SCJ)」(*2) の実験が昨年10月にスタートし、具体的なノウハウの蓄積も進み利用者からも高い評価を頂いています。 また、2月には大宮でも実験が開始され、今後も渋谷、 新宿などで大規模なICカードを使った電子商取引の実証実験が予定されています。 自治体などを中心に、こうした電子商取引関連システムの導入を具体的に検討する動きが出始めています。
     また、社会インフラとしてICカードを導入するという気運も高まっています。 住民台帳等の行政サービス分野や高速道路用の料金カードとして接触式ICカードを導入する動きや、 テレフォンカードや鉄道乗車券として非接触式ICカードを採用する等の具体的な動きが活発化してきています。
     さらに、インターネット・イントラネットの利用拡大にともないパソコンなどの端末の情報セキュリティを確保するためにICカードを利用するニーズも高まっています。 当社を含む日米欧の関連9社は、パソコンとICカード間の標準インターフェースとなる仕様を策定するため、 「PC/SC WG」(*3)を設置し、昨年、具体的な仕様を公表しました。標準化により、 ICカードによる情報セキリュリティ管理が容易になるとともに、 電子商取引などにおけるICカードの利用環境が家庭のパソコンにまでひろがるものと期待されています。
     CPU付きICカードの市場規模は接触式・非接触式合わせて、98年に国内1500万枚、 世界市場で5億6千万枚、2001年には国内2億4千万枚、 世界で22億枚と予想されています。

  2. ICカード事業の展開について
     当社は、84年に国内で初めてICカードの開発を行って以来、 86年にはビザ・インターナショナルと共同で現在の電子決済の先駆けとなる、 「VISAスーパースマートカード」(*4)の実験を行い、 その技術及びノウハウの蓄積を図ってきました。 また、国内外のICカード標準化作業でも、 S型・ISO・EMV・JICSAP・全銀協仕様の策定などで、大きな役割を果たし、 ICカード業界をリードしてきました。

     今後、当社は、新組織を核に、CPUを内蔵したタイプのICカードを軸に、 プリペイド用の低価格タイプから決済分野に応用できるコ・プロセッサ(暗号演算用付加プロセッサ) を内蔵した高機能カード、非接触式ICカードまでラインナップの拡充をはかり、 幅広い顧客ニーズに対応していきます。 すでに、昨年1月に業界初のEMVカードを、 今年1月には業界初のEMV仕様にも対応した全銀協仕様カードを発表しており、 高機能カードの製品化で業界をリードしています。 端末事業では専用端末機器の開発、製造に注力し、汎用端末については、 世界共通のPC/SC対応の標準端末機器を提供していきます。

     ICカード技術は、(1)カードにチップを実装するカード化技術、 (2)ICカードの基本機能を決めるカードアーキテクチャー領域、 (3)端末・サーバ開発、SIからなるアプリケーション領域があります。 この中で、特にアーキテクチャー領域は、 長年にわたりICカードの標準化作業に取り組んできたことにより蓄積された開発技術・ノウハウが生かされる領域です。 当社は、ICカードシステムの心臓ともいえるCOS(カードOS)技術で複数の有力特許を保有しており、 ここを大きな差別化要素として発展させ、今後の顧客のシステムニーズに幅広く応えていきます。 さらに、サービス提供者が独自にICカード上でアプリケーションやサービスを追加変更できるようにするため、 カードOSのオープン化を推進しており、JavaTMCardの開発にも積極的にとりくんでいます。

     販売面では、ビザとの連携により国内外での拡販をはかります。 当社は、ICカードの導入を推進する「ビザスマート」(*5)の国内唯一のベンダーパートナーにも選ばれており、 SCJで開発したビザカードの拡販に注力していきます。 システム事業では、各種実証実験に積極的に参加し、 業務ノウハウの取得と顧客のニーズ開拓を行いながら、 社内のSI部門や社外のSI事業者と連携し、大規模システム物件に取り組むとともに、 システムのパッケージ化を図ることで、小規模システムへの展開をはかります。


プレスリリース記載の情報(製品価格/仕様、サービスの内容、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。最新のお問い合わせ先は、東芝全体のお問い合わせ一覧をご覧下さい。