消色可能なインクの開発について

1998年9月25日

古紙のリサイクル/再利用を促進

 当社は、熱や溶剤を加えることにより大量の紙に書かれた文字などの色を消すことができ、 古紙のリサイクルや再利用に最適な「消色可能インク」を開発しました。

 熱により消色された古紙は再生紙の原料に適しており、 製紙メーカーが脱色済みの古紙として再生紙の原料に使用した場合、 60%から80%程度の製造コストダウンを図ることが可能です。
 一方、溶剤で消色した場合、 紙の繊維を痛めずそのまま同じ用紙を10回程度は繰り返し使用することができるため、 用紙の使用量の大幅な削減につながります。

 今回開発したインクには、色素と発色剤のほかに消色剤を添加しています。 発色剤は色素と分子的に結びつく事により発色します。 しかし、インクに熱や溶剤が加わると、色素と発色剤の結合が切断されて色が消えます。 さらにこの過程で、切り離された発色剤を消色剤と結び付かせることで色素と発色剤の再結合による再発色を防ぎ、 色が消えた状態を維持します。

 さらに、大量の用紙を120度以上で加熱したり(紙の発火温度は約250度)、 溶剤に浸せば、従来は不可能だった大量処理が可能となり、 効率的なリサイクルや再利用が可能となります。

 インクの材料として、色素にはロイコ染料という感熱紙に使われている染料、 発色剤には没食子酸プロピルという食品添加物、 消色剤にはコール酸という胆汁の成分のほか様々な材料を使用できます。 また、消色過程で使用する溶剤には注射の際の殺菌などに使用されるイソプロルアルコールを採用するなど、 人体に極めて安全な材料を使用しています。

 この色素、発色剤、消色剤という基本構成を維持すれば、 使用する材料を変えることでインク、トナー、クレヨン、インクリボン、 着色剤など広範な画材に応用することが可能です。

 今後はこの消色可能インクの普及を図るため、 新しい材料や目的に応じた処理装置の開発を進め、 一層のコストダウンと大量処理の実現をめざしていきます。

 なお、当社は今回発表した消色可能インクを9月30日より名古屋にて開催される「第47回高分子学会」にて発表する予定です。 また12月3日の日本化学会主催の化学フォーラム(お茶の水)で発表する予定です。


開発の背景
本開発品の主な特長


資料1:消去の原理
資料2:種々の画材に適用可能


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