計画の柱と具体的な取り組み

 本計画の柱は、(1)モバイル、ネットワークを中心とする「IT事業への注力による成長」、 (2)将来にわたり安定的な成長を継続していくための「強固な収益基盤の確立」、 (3)経営環境の変化にスピーディーに対応し、競争企業に勝ち抜くための「新しい時代に対応した経営スタイルの確立」の3点です。

(1)IT事業への注力による成長

 IT事業への注力は、全部門にわたって行っていきます。
 なかでも、IT事業分野において、当社の注力領域は、(1)システムソリューション、 サービス、コンテンツ(情報・社会システム社、iバリュー クリエーション社が主体)、 (2)情報・通信機器、AV機器(デジタルメディアネットワーク社が主体)、 (3)コンポーネント(セミコンダクター社、ディスプレイ・部品材料社が主体)です。
 IT事業の中での最重点分野は、モバイル、ネットワーク分野です。 各カンパニーは、それぞれの事業領域で、この最重点注力分野であるモバイル、ネットワーク分野にリソースを集中し、 価値ある製品・サービスの提供と、事業の拡大をはかり、存在感のある企業をめざします。

 また、各カンパニーがそれぞれの領域で事業の拡大をはかるだけでなく、 これらのカンパニーが有機的・戦略的に連携し、バリューチェーンを効果的に形成することにより、 全社的付加価値の増大と事業の拡大をはかります。(インターカンパニー・バリューチェーンの追求)
 全社の重点分野として、当面インターカンパニー・バリューチェーンを構築するのは、 (1)モバイル、(2)ネットワーク家電、(3)メディアカード、(4)デジタル放送、 (5)インターネットサービス、(6)ITS・自動車の各分野です。

  1. インターネットサービスと システムソリューション事業の強化
     インターネットサービス分野では、4月に発足する「iバリュー クリエーション社」を中核に、 コンテンツ事業との効果的連携を進めながら、「駅前探険倶楽部」、「フレッシュアイ」などのポータルサイトを核に、 モバイル向けインターネット事業の拡大をはかります。
     コンテンツ分野では、AOL・タイムワーナー、ワーナーEMIミュージック、角川書店、 日本テレビなどとの関係強化により、一流のコンテンツを提供していきます。

     BtoB分野では、情報・社会システム社に「e-ネット事業部」を設置し、 アウトソーシングサービスやASPサービスなどの本格的な展開をはかります。 ASP事業などサービス事業推進の核となる「サーバセンター」を当初200億円かけて増強します。
     デジタルデータ放送では、「メディアサーブ」と連携し、テレビを利用した通販など放送型ECサービスを展開していきます。

    *全社のインターネット関連売上
     1999年度  1,000億円
     2003年度  5,000億円
    (うちiバリュー クリエーション社 1,500億円)

    *インターネット関連事業投資(2000年度~2003年度)
     総額  2,500億円

     情報システムソリューション分野では、電子政府ソリューションシステム、 フロントエンド処理技術を生かした流通・製造・金融向けシステムソリューション、ITSなどで、 システムソリューションビジネスやサービスビジネスの拡大をはかります。
     ITやECに関するコンサルティング、システム構築から運営、 保守サービスまでをスルーしたフルサポートサービスの提供を核に、幅広い分野での提案力の強化・充実をはかります。

  2. モバイル、ネットワーク関連分野への注力
     モバイル機器の先鞭を切り、現在、当社の利益の最大の柱となっているノートPCは、 マーケット動向に機敏に対応した魅力ある新製品の投入と、サービスビジネスの拡大により、成長と安定した収益を確保します。 生産のアウトソーシングの拡大などにより、コスト競争力を強化します。
     これまでのPCにネットワーク対応機能を強化し、 動画や音楽機能などを取り込んだ複合型情報端末の開発・商品化を進めます。

     急成長を見せている携帯電話は、 現行マーケットでの事業拡大を進めるとともに本計画期間中に立上がるW-CDMAなど次世代携帯電話についても、 推進体制の整備と開発のスピードアップをはかり、グローバルマーケットでの先行をめざします。

     今後大きな成長が期待できるネットワーク家電では、ブルートゥースなどのワイヤレス技術、 SDメモリーカードなどのメディアカード、画像圧縮技術であるMPEG4など当社の強みを生かし、 モバイルAVネットワーク機器を軸に事業展開をはかります。

    *ネットワーク家電関連売上
     2000年度  2,000億円
     2002年度  4,000億円

     メディアカード事業そのものについても、スマートメディアとSDメモリーカードを2本の柱にし、 応用機器やサービス、コンテンツなどとの効果的連携をはかりながら、事業拡大をはかっていきます。

     ネットワーク関連では、無線アクセス(FWA)、光海底ケーブル事業などの拡大をはかります。 また、デジタルBS放送局設備に続き、地上波デジタル、地方局などへの納入を拡大します。

  3. コンポーネント事業の強化
     コンポーネント事業においても、モバイル、ネットワーク分野に最大の注力をはかり、高い成長と収益を実現します。

     半導体事業では、モバイル、ネットワーク分野に加え、ゲーム、自動車向けなどを重点分野に定め、 システムLSIの強化・拡大をはかります。 安定した収益をあげているディスクリートについてもモバイル向けを核に、製品力の強化をはかります。
     メモリでは、NAND型フラッシュメモリをメモリ事業の中核に育てあげます。 DRAMについては、生産比率を下げ、アウトソーシングの活用などにより、生産体制の効率化につとめます。

    *半導体売上
     1999年度  9,200億円
     2002年度  1兆5,700億円

     ポリシリコン液晶、リチウムイオン2次電池など、モバイル機器のキーコンポーネントとなる製品についても、 事業拡大をはかります。

     半導体、液晶事業は、当社の成長と収益を支える柱であり、産業・社会での技術革新を牽引するキーコンポーネントです。 資源投入を積極的に行っていくとともに、アウトソーシングの拡大や、 アライアンスによる投資負担の軽減など外部資源の有効な活用をはかります。

  4. サービス事業の強化
     現有の顧客をベースにソリューションを提供するサービス事業の強化・拡大をはかります。
     電力システムでは、ESCO(省エネコンサルティング)事業、O&M(運転維持管理)サービス、 送変電分野でのイントラネットサービスなどの展開により、エネルギーのトータルソリューション事業を拡大します。
     産業機器分野では、ビルの省エネ管理サービスや環境分野での情報サービスを進めます。 医用システムでは、病院経営を含めたトータルソリューション、リモートメインテナンスサービスなどを拡大します。

    *全社のサービス事業売上(IT分野含む)
     1999年度  1兆  500億円
     2002年度  1兆5,500億円

  5. 上記の実現のために、事業体制の見直しを行い、新組織をスタートさせます。
    (1) システム・ソリューション、サービス関連では、4月1日付で「iバリュー クリエーション社」(新たな社内カンパニー)、 「e-ネット事業部」、「ITS・自動車事業統括部」(情報・社会システム社)を設置します。
    (2) 情報通信機器・ネットワーク家電関連では、「W-CDMA事業推進室」(1/1設置)、 「BLUETOOTH事業推進室」(2/1設置)、「メディアカード事業部」(3/1設置)に続き、 4月1日付けで「モバイルAVネットワーク事業部」を設置します。(いずれもデジタルメディアネットワーク社)

(2)強固な収益基盤の確立

  1. 事業構造の改革
     本計画では、IT事業分野を全社注力分野として明確にするとともに、 各カンパニー内あるいは事業部内のそれぞれにおいて、競争に勝つための集中と選択を明確にしました。 今後、これを実行し、市場地位と収益力の改善をはかります。

     電力システム、家電、医用システム、産業機器、昇降機システムなどの事業分野において、 それぞれの事業体が、グローバルマーケットにおいて競争に勝ち残り、収益の安定と向上を実現できるよう、 有力企業とのアライアンスによる事業のグローバル化や、事業構造の変革、事業ポートフォリオの組替えを積極的に進めます。
     事業形態についても、事業の競争条件や事業の特性に応じて、社内カンパニー、 社外分社、他社との合弁など、多様な形態を採用していきます。

  2. IT経営の加速
     ITの戦略的活用により、社内プロセスの改革への取り組みを積極的に進め、顧客サービスの向上、 業務の生産性向上と資産効率の向上、調達のコストダウンなどを実現します。

     ECによる資材調達推進(2001年までにインターネット化を完了)に加え、 インターネットを活用したオープン入札の導入などによりソーシング業務のEC化を推進し、 2002年度には年間の資材調達額で、1999年度に比べ2,000億円のコスト削減をめざします。

     生産管理では、1996年度より進めてきた全社レベルでのERPの導入が完了し、 今後は各事業分野別での展開が中心となります。なかでも、セミコンダクター社は、200億円をかけ、 SCM・CRM・ERPを統合したITシステムの構築を進めており、2002年度には顧客サービスの向上と、 在庫・リードタイムの半減を実現します。 また、デジタルメディアネットワーク社も150億円をかけ、 2002年度までにグローバルなSCM・CRM・ERPシステムの構築を進めます。

(3)新しい経営スタイルの確立

  1. 新しいグループ経営
     社内カンパニー制を進化させ、それぞれの事業が、事業の特性やおかれている環境に応じて、 社内カンパニー、社外分社、他社とのアライアンスなど多様な事業形態をとり、 その傘下に一体運営を行う子会社を持った事業体として、それぞれが連結経営を行います。
     そして、それらの集合体としての東芝グループの連結経営を進めていきます。

     コーポレート、社内カンパニー、社外カンパニーが、戦略的な連携を進めながら、 グループでの事業の集中と選択を進め、グループ力の強化と連結経営の強化をはかります。 グループファイナンス、人材の相互交流など、グループ内で各種資源の有効活用をはかります。

     月次連結制度をさらに進め、4月からは、各カンパニー単位での月次連結をスタートし、連結経営の強化をはかります。

  2. 経営風土の改革 -「MI 2001運動」の本格定着-
     企業風土の面においても、時代の変化に対応できるあり方を常に追求し、変革を継続・実践していく仕組みづくりに努めます。
     現在展開している「MI 2001運動(経営変革2001)」の加速と定着をはかり、 顧客志向に徹するとともに、IT技術と、シックスシグマ手法などにより分析した数値やデータに基き、 継続的に経営を変革していく組織風土の構築を進めます。
     この運動を通じて、東芝グループ全体で、毎年20,000を超えるプロジェクトを展開し、 これによる改善額は、2002年度までの3年間で5,600億円を計画しています。

  3. 環境保全重視の経営
     資源循環型社会の実現のため、環境保全を経営の基本にすえ、2000年度から「環境中計」をスタートします。 環境調和型製品の創出、ゼロエミッションの実現、グリーン調達の本格実施、 PRTR(化学物質移動・排出登録)などを積極的に進めます。
     1999年度より環境会計をスタートします。毎年、環境保全のために、80億円の投資を計画します。

  4. 成果重視の人事処遇制度
     人事制度についても、年功的な要素を減らし、成果主義に基く評価・処遇システムを導入し、 活力にみちた風土を定着させます。

     人事処遇面では、一般従業員を対象に能力・成果主義を重視した制度を導入するとともに、 社員の自主性を尊重し、創造的で革新的な企業風土を醸成していきます。
     また、給与体系などの基本制度は共通としながらも、カンパニーごとに、 事業特性や市場環境に応じて独自の制度を付加できる仕組みも検討していきます。
     さらに、新規事業分野では、必要に応じ独立した事業体制のもとで、ストックオプション、 年俸制など、よりフレキシブルな制度の採用も検討します。


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