リウマチ治療に関するDNAチップの開発について

2004年9月21日

 当社は、東京女子医科大学の鎌谷直之教授(膠原病リウマチ痛風センター)のグループと共同で、リウマチ治療に関し、患者毎の薬の効き目や副作用、および合併症を発症する確率を、個々の患者のもつ遺伝子情報の違いから判定するDNAチップを開発しました。10月から東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターにて、実用化に向けた有効性の検証を行います。

 リウマチの治療に関しては、いくつかの効き目の高い治療薬が知られています。しかしながら、これらの治療薬は、ある遺伝子配列を持つ患者に対して強い副作用を引き起こす可能性の高いことが、鎌谷教授のグループの研究により分かっています。 
 また、リウマチの重い合併症を発症する確率についても、患者の遺伝子配列が関係していることが、鎌谷教授のグループの研究により分かっています。有効な治療方法も開発されてきていますが、治療に当たっては強い副作用を伴うことがあり、患者にとっては重い負担となっています。

 患者毎の遺伝子情報を調べ、その違いによる副作用の発生や合併症の発症の確率を予測することができれば、リウマチ治療に有効な医薬品を個人の特性に合せて事前に選択して処方したり、合併症の発症確率によってその発症を抑えるために積極的な投薬処方をすべきか否かを判定することが可能になり、より効果的な治療を行うことができます。

 DNAチップは、このような患者の遺伝子情報を判定するための有効なツールとなるものです。鎌谷教授のグループは、遺伝統計学*1の手法を利用して、メトトレキサート*2、スルファサラジン*2という2つの代表的リウマチ治療薬の副作用と、重い合併症であるアミロイドーシス*3発症の予測・診断に有用なSNPs*4を見出しました。今回、これらの副作用、合併症の発症に関係するSNPsを解析するDNAチップを共同で開発しました。

 鎌谷教授のグループの研究成果と、当社のDNA技術を融合することにより開発された、信頼性が高く、かつ安価なDNAチップは、リウマチ治療におけるオーダーメイド医療*5の実現を推進します。これにより、効果的な薬剤処方による副作用発現の低下や、治癒率の向上を図るとともに、効果の低い薬剤投与を低減し医療費全体の削減への寄与を目指します。

研究・開発の背景

 当社は、簡便で低コストのDNA検出方式として独自の電流検出方式によるDNA検査装置GenelyzerTMを2003年6月に発表し、すでに国内外複数の大学でβサイトテストを実施しています。

 また、東京女子医科大学の鎌谷教授は、リウマチ医療の権威として、リウマチ治療薬とその副作用、および合併症の原因となる標的遺伝子の多型*4の発見に関し、多くの成果をあげています。

 今回、この両者が協力し、リウマチ治療に関する安価で簡便なDNAチップを開発しました。このDNAチップの臨床での実用化を果たし、日本発の遺伝子診断プラットフォーム技術の確立と、オーダーメイド医療の早期実現を目指します。

研究・開発の方法

 10月から東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターに設置される、DNA検査装置GenelyzerTMを使ってDNAチップのβサイトテストを開始し、実用化に向けた有効性の検証を行う予定です*6。研究・開発の期間は、1年間を予定しています。

 遺伝子情報の保護および倫理面での配慮としては、研究への参加ボランティアに対するインフォームド・コンセントを行います。また、研究は、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省共同告示による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に従い、東芝研究開発センター倫理審査委員会および東京女子医科大学遺伝子解析に関する倫理審査委員会の承認の下に実施します。

*1: 病気や薬の副作用が、どの遺伝子に関係しているかという問題を、統計学的に解析する手法。
*2: リウマチ治療における代表的治療薬。
*3: 慢性関節リウマチの合併症で、発症確率は低いが予後が悪い。
*4: 個人により、僅かに見られる遺伝子の塩基配列の違い。遺伝子上の塩基配列の1箇所だけが置き換わっている場合をSNP(1塩基多型)という。SNPsは、その複数形。
*5: 個人のもつ遺伝子の配列の微妙な違いから、薬剤の効果や副作用を事前に判定し、患者毎に最適な薬剤投与等の治療を行う医療。「テーラーメード医療」という表現があるが、「どのように治療するかを患者と話し合いながら決めていく」という意味がオーダーメイドに含まれる。
*6: 当該実用化研究は、バイオベンチャー企業である、ジェネシス・テクノロジーズ(本社:東京都中央区、社長:鈴木俊明)の協力を得て実施する予定です。


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