ボーイング787用ポータブル超音波非破壊検査装置の開発について

2007年6月28日

ボーイング社がメンテナンス用指定検査装置に採用

株式会社東芝
全日本空輸株式会社

東芝 ポータブル型 超音波非破壊検査装置(イメージ)
 
ボーイング787型機(イメージ)

 株式会社東芝(以下、東芝)は、全日本空輸株式会社(以下、ANA)と協力して、ボーイング社が開発中の次世代民間旅客機ボーイング787型機ドリームライナー(以下、787)の整備に用いられるポータブル型超音波非破壊検査装置*1(以下、ポータブル型装置)を開発しました。

 このポータブル型装置は、先進複合材・CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)が大量採用される787の機体構造検査を高い精度で、効率よく行うことを目的に開発されました。東芝が既に製品化しているポータブル型の超音波非破壊検査装置をベースとしており、CFRP特有の内部損傷を高精度な3次元画像で検査することが可能です。
 ANAは世界で初めて787を導入し、2008年5月に初号機を、その後順次計50機を導入する予定です。このANAの持つ航空機整備に関する豊富な経験を得て、787の検査・整備用に適した小型・軽量で、操作性、視認性に優れた装置の開発を実現しました。

 両社は、787開発の初期段階よりボーイング社に対してCFRPの効率的で正確な超音波検査機器の開発を提案してまいりました。今回開発した787用ポータブル型装置は、ボーイング社が定める787の検査要件を満たし、ボーイングによるテストをクリアしたことで、国内メーカーが開発した超音波非破壊検査装置としては初めて、ボーイング社のメンテナンス用指定検査装置に採用されました。

 東芝は、このポータブル型装置を、2008年度から発売開始の予定です。

*1 超音波カメラ技術と画像化処理技術により、金属や樹脂といった材料で作られた部品の内部欠陥を3次元画像化する検査装置です。

開発の背景

 ボーイング社が開発する787は、ジェット旅客機としては世界で初めて、主翼、胴体を含む主要構造材の大部分に先進複合材であるCFRPが採用され、機体の軽量化が図られており、省エネルギー運航が可能です。
 CFRPは、従来のアルミ構造材と比較して、軽量かつ強い構造材を製造することを可能とし、腐食しないことが特長です。一方でカーボンファイバーと樹脂を多層に成形した構造のため、外部からの衝撃に対して特有の内部損傷が生じるとされています。損傷範囲を正確に特定することが難しく、従来機器にはない高効率かつ高精度な超音波検査機器の開発が求められていました。
 そこで、東芝とANAは、CFRPが大量採用される787の導入準備の一環として、2005年から、東芝が独自に開発した3D開口合成法を用いた超音波非破壊検査機器をベースに、  ANAの持つ航空機整備に関する豊富な経験を得て、新しい検査装置の開発を進めてきました。

今回開発したポータブル型超音波非破壊装置の主な特長

1.

最大64個の超音波送受信用圧電素子を内蔵した超音波カメラを搭載しています。電子走査により収集した数千の超音波エコーデータを東芝独自の3D開口合成法で処理し、CFRP特有の内部損傷を高精度に3次元画像化することで、機体の損傷範囲の特定が容易です。

   
2. 検出した3次元データから断面画像、平面画像を瞬時に表示することができます。さらに、平面画像から内部欠陥の寸法や面積などを計測し、結果を表示することが可能です。
   
3. 3次元データはデジタル情報として保存可能です。保存した3次元データから、任意の断面画像、平面画像を再表示して、解析できる機能も備えており、整備の効率化と信頼性向上に貢献します。
   
4. 787機体の各部位において必要な検査条件を項目別に予め登録することで、検査時の操作性を追求するとともに、高いレベルの品質を維持した検査を可能としています。

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