ニュースリリース

モバイル型全自動生物剤検知システムの販売開始について

-独自開発の「電流検出方式」DNAチップ注1を搭載し、簡単・迅速・正確な検知が可能に-
2009年06月29日

 モバイル型全自動生物剤検知システムの写真

 当社は、バイオテロなどに使用されるウィルスや細菌を短時間で検出・判定できる、モバイル型全自動生物剤検知システムを製品化し、7月1日から販売を開始します。

 今回販売を開始するシステムは、当社独自開発の「電流検出方式」のDNAチップを搭載した検知用カセットと検出装置で構成され、サンプルを採取し粗抽出などの簡単な前処理を行った検体を検知用カセットに注入し検出装置にセットするだけで、増幅・洗浄から検出・判定まで全自動で迅速に処理します。炭疽菌などCDC分類カテゴリー注2における細菌やウィルスのうち、約20種の生物剤を、高速モードでは約30分、高感度モードでは約70分で判別します。また、小型・可搬型で高い機動性を備えており、発生現場で迅速かつ簡便に検知作業が行えます。

 本システムは、2005年から2008年の3年間、(独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業として、警察庁 科学警察研究所、国立大学法人 帯広畜産大学と共同で行った「全自動モバイル型生物剤センシングシステムの開発」の成果をベースに、当社独自のマイクロ液送技術を加え、検出装置の小型化およびチップの高感度化を行い、製品化したものです。また、当社は、本システムの製品化を進めるにあたり、栄研化学株式会社と、当該分野におけるLAMP法注3の通常実施許諾契約を締結しました。

 近年、NBCテロ注4などが大きな脅威になっており、特に生物剤を用いたバイオテロの場合、使用された生物剤の種類で対応が大きく異なります。そのため、複数の生物剤を迅速に同時検知することが求められていますが、従来の検査方法は、操作が煩雑で多項目の同時検出が難しいなどの課題がありました。また、現在日本国内で使用されている生物剤検知システムは、海外からの輸入品で、国産のものはありませんでした。

 当社は、現場レベルで簡単・迅速かつ正確に複数の生物剤を検知する純国産のシステムを製品化し、警察・消防・衛生研究所・保健所などに提供していくことで、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。また、本システムは検出用カセットを置き換えることで、新型インフルエンザなどの流行性ウィルスにも対応可能です。今後、検出用カセットの開発を進め、検疫等での活用も目指します。なお、本システムは、7月1日から3日まで東京ビッグサイトで開催される第8回 国際バイオEXPOで展示します。

 

注1
DNAチップとは、ガラスやシリコン基板上に、複数種のDNA分子を固定したもので、試料中のDNAと結合するか否かを調べることで、試料中に目的のDNAが存在するかを調べることができる。電流検出方式とは、電気化学的に活性な核酸挿入剤を用いる方式で、東芝オリジナルのDNA検出技術。
注2
米国疾病予防センター(CDC)による分類。
注3
Loop-mediated isothermal amplification の略で、栄研化学株式会社が開発した等温で増幅可能な遺伝子増幅方法。
注4
Nuclear/Biological/Chemical terrorism の略で、核物質、生物剤又は化学剤若しくはこれらを使用する兵器を用いた大量殺傷型のテロ。