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日本初 「フェーズドアレイ気象レーダ」を開発

ゲリラ豪雨や竜巻の詳細な3次元構造をわずか10秒で観測可能に
2012年08月31日

独立行政法人情報通信研究機構
国立大学法人大阪大学
株式会社 東芝

 独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原秀夫)、国立大学法人 大阪大学(以下「大阪大学」、総長:平野俊夫)、株式会社 東芝(以下「東芝」、代表執行役社長:佐々木則夫)は、ゲリラ豪雨や竜巻などを観測するための「フェーズドアレイ気象レーダ」*1の開発に成功し、大阪大学・吹田キャンパスにて試験観測を開始しました。本レーダは、10秒間隔で隙間のない3次元降水分布*2を100mの分解能で観測することが可能で、将来的には突発的気象災害の監視や短時間予測に役立つことが期待されています。なお、本研究成果の一部は、NICTの委託研究「次世代ドップラーレーダ技術の研究開発」により得られたものです。

背景と課題

 近年、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)や竜巻による甚大な被害が社会問題となっています。このような局所的で突発的な大気現象の詳細な構造や、前兆現象を直接観測するのに最も有効な手段は、「気象レーダ」であるとされています。従来から、台風や低気圧、梅雨前線などによる降雨を観測するために、大型の「気象レーダ」が日本全土を覆うように配備され、最近では、都市域の降雨をより細かく観測できる小型の「XバンドMPレーダ」*3が整備されてきています。これらのレーダは、パラボラアンテナを機械的に回転させて降雨観測を行うため、地上付近の降雨分布観測には1~5分、降水の3次元立体観測には5分以上の時間を要します。局地的大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達し、竜巻もわずか数分で発生し移動するため、それらの兆候をより迅速に察知するためには、より短時間で詳細な3次元構造を観測できるフェーズドアレイ気象レーダ技術の実現が期待されています。

今回の成果

 今回、東芝、大阪大学、NICTが共同で、Xバンドの「フェーズドアレイ気象レーダ」の開発に、日本で初めて成功しました。2012年5月に大阪大学・吹田キャンパスの電気系建屋屋上に設置し、調整作業を続けてきましたが、このたび試験観測を開始しました。
 このフェーズドアレイ気象レーダでは、128本のスロットアレイアンテナ*4による“デジタルビームフォーミング(DBF)”*5を採用することで、観測時間をわずか10~30秒に短縮することができました。従来型のレーダでは、3次元観測を行うためには、パラボラアンテナを、その仰角を変えながら10数回転させる必要がありましたが、本レーダでは、仰角方向にDBFを用いた電子走査(最大112仰角)を行うことで、アンテナを1回転させるだけで半径15~60km、高度14kmまでの範囲における隙間のない詳細な3次元降水分布を観測することが可能となりました。 

屋内設置時の様子(アンテナにレドームを被せる直前)
屋内設置時の様子(アンテナにレドームをかぶせる直前)

今後の展望

 今後、局地的大雨や集中豪雨などの現象を対象として、性能評価試験を兼ねた観測を行います。本レーダにより得られる詳細な3次元観測データは、短時間に大雨をもたらす積乱雲のメカニズムを明らかにします。このことは、気象予測の高精度化、また局所的・突発的な気象災害の前兆現象の検出や短時間予報(ナウキャスト)情報としても期待されます。

<用語解説>

*1 フェーズドアレイ気象レーダ

 多数のアンテナ素子を配列し、それぞれの素子における送信及び受信電波の位相を制御することで、電子的にビーム方向を変えることができるレーダ。パラボラアンテナを機械的に回転させるレーダと異なり、瞬間的にビーム方向を自由に変化させることができるため、航空機やミサイル等の飛翔体検出に用いられることが多い。

*2 3次元降水分布

 一般に配信されるレーダ観測情報は、地図上にマッピングされた地上付近の(2次元)降雨分布のみであるが、雨は上空の雲中で生成され成長しながら地上に落下してくるため、上空の降水(雪・霰・雨など)の3次元構造を観測することで、大雨のメカニズム解明や10~30分程度の短時間予測が可能となる。既存の気象レーダでも、通常3次元観測を行っており、「ゲリラ豪雨の卵」や「竜巻の親雲」などが観測されているが、それらのより詳細な鉛直構造や時間変動が求められている。

*3 XバンドMPレーダ

 日本の気象レーダで主に使われているCバンド(5GHz帯、波長約6cm)及びXバンド(9GHz帯、波長約3cm)の周波数帯のうち、アンテナの小型化ができるXバンドを用いたドップラー及び二重偏波観測が可能なマルチパラメータ(MP)レーダのこと。ここ数年、大学・研究所・国土交通省などにより、各地に導入が進められている。

*4 スロットアレイアンテナ

 多くのスロット(溝穴)を開けた、大電力のマイクロ波を通す導波管(スロットアンテナ)をアレイ状に並べたアンテナ。本レーダでは、横倒しにした長さ2mのスロットアンテナを縦方向に128本並べることで(サイズは約2m×2m、ビーム幅は約1度)、縦方向(仰角方向)に電子走査を行う1次元フェーズドアレイアンテナとしている。

*5 デジタルビームフォーミング(DBF)

 多数のアンテナ素子で構成されるアレイアンテナにおいてそれぞれのアンテナ素子の信号をデジタル処理することにより、複数のアンテナビームを形成する技術。本レーダでは仰角方向に5~10度程度の広いビーム幅の電波を送信して、雨粒の散乱で戻ってくる電波を128本のスロットアンテナで独立に受信し、その受信信号をソフトウェア上で合成処理することで、約1度の分解能で全角の観測値を同時に得ることができる。

<各組織の主な役割分担>

組織ごとの主な役割分担は、以下のとおりです。

○NICT:システム構想、要求機能性能の検討・立案。
     サイエンスクラウドを用いた大規模データのリアルタイム処理・アーカイブシステムの開発。

○大阪大学:試験観測の実施と観測データ評価及び最新のレーダ信号処理技術の開発。

○東芝:フェーズドアレイ気象レーダのシステム設計及びレーダ機器開発。   

 

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