ニュースリリース

放射線医学総合研究所・新治療研究棟の重粒子線がん治療用照射システムを受注

- 重粒子線がん治療装置で初の超伝導回転ガントリー採用 -
2013年08月02日

 当社は、独立行政法人放射線医学総合研究所(以下、放医研)から、重粒子線がん治療装置における超伝導磁石を搭載した回転ガントリーおよび治療室の室内機器の製作を受注しました。重粒子線治療装置に超伝導磁石を採用したのは世界初で、重粒子線治療室に回転ガントリーを導入する国内初の事例となります。

 今回受注したのは、既設のビームラインを延長するビーム輸送系機器、「回転ガントリー」と呼ばれる装置本体と搭載機器、スカラーアーム型治療台をはじめとする室内機器で、放医研の新治療研究棟に新たに設置します。納入は2015年3月の予定です。

 回転ガントリーは、粒子線を輸送するための電磁石を搭載した回転構造体です。患者を中心に360度回転し、重粒子線を任意の方向から照射できるので、従来の水平・垂直の2方向からの照射に比べて治療範囲が格段に広がるほか、患者自身のからだへの負担軽減も期待できます。ビーム粒子として炭素イオンを用いる重粒子線治療装置では、粒子線を輸送、制御するための装置が非常に大型となるのが課題でしたが、高磁場を発生させる超伝導磁石を採用することで、常伝導磁石を用いた従来の回転ガントリーと比べ、大幅な小型化・軽量化が可能となりました。また、この超伝導技術の採用は、省エネ化につながる点でも注目されています。

 重粒子線治療は、炭素イオンを光の速さの約70%まで加速してがん細胞に照射する放射線治療です。体の深いところにあるがんにピンポイントで照射できるため、周りの正常な細胞を傷つけにくく、陽子線治療など他の放射線治療と比べてがん細胞を殺傷する能力が強いという特長があります。

 当社はこれまでにも、重粒子線治療方式の開発を主導的に推進している放医研へ重粒子線照射システムを納品しているほか、昨年1月には神奈川県立がんセンターから重粒子線治療装置を一括受注しています。重粒子線治療装置はヘルスケア関連分野で期待される技術の一つであり、今後も当社は、エネルギーやストレージに続く新たな事業領域の一つとして、ヘルスケア関連事業に取り組んでいきます。

 

「回転ガントリー」(左)と「治療室」(右)のイメージ 

回転ガントリーのイメージ図
治療室のイメージ