ニュースリリース

日英・日中通訳機能を備えた外国語会議支援システムを開発

実用化に向け社内での運用を開始
2015年10月29日

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 当社は、外国人とのビジネス会議などにおいて、翻訳結果をリアルタイムでパソコンやタブレットなどに字幕表示し外国語コミュニケーションを支援する日英・日中の通訳機能を備えた会議支援システムを開発しました。従来翻訳が難しかった日本語の話し言葉を翻訳しやすい単位・表現に変換する整文技術と、専門用語や社内用語などの訳語を事前に登録できるように会議で使用する資料等から自動的に未知語(システムにおいて登録されていない言葉)を抽出する技術を開発し、通訳の精度を高めました。これにより、会議参加者の外国語会議の内容理解度を大幅に向上することを確認しています。当社グループ内で本システムの運用を行い、2016年の実用化を目指します。
 なお、本システムは、11月5日から開催の「東芝ICTソリューションフェア2015」に出展予定です。

 本システムで用いられる整文技術は、様々な話者に共通する話し言葉特有の表現を正確に把握する規則ベースの手法と、多様な表現を事例から漸増的に学習する統計ベースの手法を組み合わせたことで、広範な表現を翻訳に適した表現や長さの文章に変換します。統計ベースの手法は学習事例の量と質が精度に影響を与えますが、当社は、整文事例の作成ツールをWebアプリケーションとして開発したことにより、整文事例の収集と整文結果の評価を効率化でき、事例増強による整文精度の向上を可能としました。また、未知語に起因する音声認識精度や翻訳精度の低下を防ぐため、専門用語など会議通訳に必要な語彙を会議資料などから自動で抽出する語彙獲得技術を開発しました。整文した文章を、語彙獲得技術と当社独自のハイブリッド機械翻訳方式(統計ベースの手法と規則ベースの機械翻訳手法を組み合わせた方式)で処理することにより、高品質で、話者ごとの話し方の違いにも対応できる翻訳を実現しています。整文技術により、会議音声の書き起こしに対する翻訳の正確さは、5段階評価で日本語から英語への翻訳では3.2から3.7に、日本語から中国語では3.6から3.9に改善し、原文の内容がほぼ伝達されたことを示す4.0に大きく近づきました注1

 さらに当社は、これらの技術を取り入れた遠隔会議、対面会議、プレゼンテーションを支援する通訳システムを開発しました。本システムを用いた日本語会議の中国語通訳の結果について、日本語検定2級以上の中国人被験者では会議全体の内容理解度を約60%から約80%に、日本語検定2級未満の被験者では内容理解度を約30%から約60%に改善する効果注2を確認しています。

 製造のグローバル化、中国・インドなどの新興国市場の伸長とともに、海外企業との会議など、外国語を用いる機会が益々増加し、言語が異なることによる意思疎通の齟齬、通訳コストの増大などが大きな経営課題となっています。

 昨今、音声会話を翻訳するための音声認識・機械翻訳技術が広く研究され、旅行や買物などの日常的な会話では、実用的な性能を備えた音声通訳システムが提供されようとしています。しかし、会議で使われる専門用語や、話し言葉独特の言い回し、冗長さ、文法上の正確性を伴わない発話を翻訳することの難しさから、ビジネス現場に応用可能な通訳システムの実用化には到っていません。当社は、こうした課題を解決するため、本システムを開発いたしました。

 当社は、今年7月から音声や映像に含まれる言葉や人物を捉えてその意図や状況を理解し、人にわかりやすく伝えるクラウドサービス「RECAIUSTM(リカイアス)」を提供しています。「RECAIUSTM」を構成するサービスとして、本システムを2016年までに市場投入するため、当社グループ内での運用を通して、社内会議における翻訳に必要な言語データを集積し、翻訳性能を高めるとともに、会議音声の活用ソリューションとしての機能改善を進めます。

本技術のポイント

注1
原文の内容が翻訳後の訳文に正しく反映されているかをバイリンガル話者が5段階で評価。
注2
会議内容に関する問いに対する正解率を測定。