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「重粒子線がん治療用超伝導回転ガントリー照射装置の開発」で平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞

2017年04月19日

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
株式会社東芝

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 (理事長 平野俊夫)放射線医学総合研究所 加速器工学部 重粒子運転室 室長 岩田佳之、同加速器工学部照射システム開発チーム 技術員 武井由佳、株式会社東芝エネルギーシステムソリューション社 京浜事業所 機器装置部 参事 折笠朝文が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。
 この科学技術分野の文部科学大臣表彰は、文部科学省が日本の科学技術水準の向上への寄与を目的として定めているもので、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に贈られるものです。今回の受賞の理由は、「重粒子線がん治療用超伝導回転ガントリー照射装置の開発」という業績です。重粒子線がん治療は、炭素イオンなどの重粒子線を腫瘍に照射するもので、放射線抵抗性のがんに対しても有効な放射線治療法です。従来の重粒子線がん治療装置は、照射方向が限られ治療に制約がありました。また、世界で唯一稼働中のドイツ・ハイデルベルグ大学の重粒子線回転ガントリーは巨大で、一般医療施設への導入は困難でした。
 本研究開発では、世界で初めて回転ガントリーに搭載できる超伝導電磁石の設計・製作に成功し、小型軽量な重粒子線超伝導回転ガントリー照射装置を実現しました。これにより重粒子線の照射方向の制限がなくなるとともに、一般医療施設への導入が可能となりました。更に、3Dスキャニング照射の高速化により回転ガントリーの治療効率も向上しました。
 本成果は、一般医療施設への重粒子線がん治療装置の普及を促進し、副作用のさらなる低減、治療の短期化による患者の肉体的・社会的負担の軽減、そして従来は治療困難であったがんの克服に寄与することが期待されます。また、世界で初めて小型回転ガントリーの開発に成功したことは、国産の重粒子線がん治療装置の国際競争力向上に寄与すると考えられます。

受賞した量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所 加速器工学部 重粒子運転室 室長 岩田氏(中央)、

同加速器工学部照射システム開発チーム 技術員 武井氏(左)および当社 折笠参事(右)