ニュースリリース

東京大学とゲノムデータを用いた予防医療の実現を目指す共同研究契約を締結

人が生まれながらに持つ遺伝情報を活用した次世代型個別化ヘルスケアを実現、QOLや労働生産性の向上に貢献
2021年02月16日

 当社は、国立大学法人東京大学(本部:東京都文京区、総長:五神 真、以下「東京大学」)医学部附属病院 予防医学センターと、ゲノムデータを用いた予防医療の実現を目指す共同研究契約を2月10日に締結しました。通常の健康診断情報に基づく従業員の健康管理に加え、人が生まれながらに持つ遺伝的背景を考慮した個別化ヘルスケアを確立し、次世代型健康管理法の構築と労働生産性の向上に貢献します。

 当社は、「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療の実現を目指し、国内グループ会社において同意を得た従業員を対象に、ゲノムデータおよび複数年の健康診断結果等を含むデータベースの作成、ならびに分析基盤の構築(*1)を進めています。企業コホート(*2)は、同意した従業員とコンタクトが取りやすいという特徴があるだけでなく、追加のデータ収集を行う際に高い再同意率が期待できるため、従業員の健康ビッグデータを長年蓄積することが可能です。2019年より開始した同意取得は、既に1万人を超えており、当社は現在、日本人に特徴的な遺伝子を効率的に解析することができる「ジャポニカアレイ®(*3)」を用いた解析に取組んでいます。

 東京大学医学部附属病院 予防医学センターでは、臨床データをもとにしたデータベースの構築と予防疫学を推進しており、科学的データに裏付けられた今後の生活習慣指導と診療への応用が期待されています。

 当社と東京大学医学部附属病院は、今般締結した共同研究契約に基づき、企業コホートデータを活用した新たな取組みとして、労働者の健康診断データ、問診データ、レセプトデータ(*4)にゲノムデータを加え、クオリティ・オブ・ライフ(以下「QOL」)や労働生産性に与える影響が大きい生活習慣病等を対象とした研究の検討を開始します(*5)。当社と東京大学は、個々人に最適化された生活様式や治療法を提供すると共に、労働者の健康的生活を支えるシステムを構築し、データ提供者へ還元していくことを目指します。

 

図 企業コホートの活用

 

■本研究に関わる関係者コメント
・東京大学医学部附属病院 予防医学センター センター長 山道 信毅
 昨今の医学研究界、特にゲノム研究領域においては、学術的知見の創出のみならず、出口志向に基づき真に社会に還元しようという取組が活発化しています。こうした背景の下、これまで日本のものづくりの最先端をリードし、製品開発・生産活動に直結した取組をしてきた東芝の研究チームと共同研究をしていけることは大きな前進と考えます。アカデミアからは東京大学の予防医学をはじめとした各専門家によるチームを形成することで、我が国の国民に還元する医学研究を目指し、全力を尽くして参る所存です。

・株式会社東芝 CPS x デザイン部 新規事業推進室 室長 米澤 実
 当社が取り組む「精密医療」の一環として、企業に勤める従業員の方の健康に関するデータが将来の医療の発展に寄与する可能性について検討してきました。アカデミアの先生方に当社が構築中のデータベースの価値を多角的な視点から検証いただく今回の取組みで、新たな可能性が広がることを大変期待しております。

 

 当社は,「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療の実現を目指し、一人ひとりに寄り添った最適な医療の提供による新しい価値創造に挑みます。
その中でも、予防領域においてはデジタル技術を活用した3つの取り組みを進めます。
1. 命に関わる病気の予防に取り組み、QOLの向上に貢献します
2. ゲノムデータを活用することで、個々人に最適な予防法の実現を目指します
3. 様々なパートナーシップにより、研究開発から実用化に向けた新規事業の創出に取組んでいきます

 

*1 ゲノムデータの収集開始ならびに医療分野に実績のあるベンチャーキャピタルとの業務提携について
https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2019/05/pr1001.html  

*2 企業コホート  
コホートとは、共通した因子を持ち、観察対象となる集団のこと。この場合、同じ企業に属することを共通因子とした観察対象集団を指す。

*3 ジャポニカアレイ®
ジャポニカアレイ®は、国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)が構築した全ゲノムリファレンスパネルを基に、COI東北拠点が社会実装した日本人ゲノム解析ツールです。日本人に特徴的な塩基配列を持つ約66万箇所の一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)を1枚のチップに搭載しており、高スループットな解析が可能。ジャポニカアレイ® は国立大学法人東北大学の登録商標。


*4 レセプトデータ
診療報酬明細書に記載の情報で受診医療機関、傷病名、投薬、治療の情報等が含まれる。


*5 具体的な研究計画書が纏まった段階で、東京大学ならびに当社の倫理審査委員会での承認を得たうえで研究開始する

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