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佐藤文夫 会長、西室泰三 社長
佐藤文夫 取締役会長(左)、西室泰三 取締役社長



98年3月期の東芝の業績は、北米におけるパソコンの売価ダウン、半導体メモリーの市況悪化、国内消費低迷による家電販売の不振などの影響を受け、売上高は前期に比べ1%減少し、5兆4,585億円となりました。利益面においては、これにアジア通貨下落の影響、法人税率引き下げに伴う繰延税金資産の評価替による一時的な税負担の増加などが加わり、前期に比べ89%減の73億円と大幅減益を余儀なくされました。世界的なメガコンペティションが繰り広げられる中、当社は有望分野への集中投資による競争力強化と、経営システムの改革を強力に推進し、業績回復に全力を挙げて取り組んでいます。

部門別業績概要
■情報通信システム部門は、売上高は2%増の2兆1,841億円となりましたが、営業利益は米国でのパソコン売価ダウンの影響が大きく、69%減の431億円となりました。
■電子デバイス・材料部門は、売上高は5%増加の1兆3,418億円となり、営業利益は116%増の405億円となりました。これはメモリーの売価ダウンの影響があったものの、ディスクリートやロジックが好調に推移したことによります。
■電力・産業システム部門は、原子力機器の需要低迷や電力会社の設備投資抑制の影響を受け、売上高は4%減の1兆1,196億円、営業利益は48%減の187億円となりました。
■家庭電器部門は、天候不順によるエアコン売上高の減少や、引き続く日本の消費低迷により、売上高は10%減の1兆404億円となりました。営業利益は、白物家電の販売不振および売価ダウン、エアコンの在庫増により圧迫され、453億円の営業損失を計上し、赤字幅が拡大しました。
■97年度から新しく加わったサービス・その他部門は、東芝クレジット、東芝建物総合リース、東芝物流などの各種サービス子会社を含みます。97年度は東芝建物総合リースが新規に連結対象となったため、売上高は13%増の4,200億円、営業利益は34%増の248億円となりました。

有望分野の競争力奪回
 当社は、これまで事業の集中と選択を実行し、複数の強い事業分野を持つ専業メーカーの集合体としての総合電機メーカーを志向してきました。事実、成長が著しい情報通信分野に経営資源を傾注し、ノートブックパソコンでは世界シェアナンバーワンを維持し、最先端メモリーの分野でもトップクラスの地位を確保、非メモリーなどの半導体事業の総合力強化、液晶分野では次世代品の開発で先行するなど、有望分野で数ある競合企業をリードしてきました。しかしながら、これら成長分野においても想像以上のスピードで競争が激化しており、優れた技術や品質とともに強靭なコスト競争力を確保することが、勝ち残るための必須条件となっています。そのため、これまで収益を牽引してきた成長分野においても常に安定的な収益が確保できるような高い競争力を獲得することを目指しています。

■ノートブックパソコン−安定的な収益確保に向けて
 当社は、欧州ではポータブルパソコンのシェアを30%前後まで拡大させましたが、米国ではパソコンメーカーが一斉に商品投入を進めたことから流通在庫が増加し、大幅な価格低下が引き起こり、収益に大きなインパクトを与える結果となりました。しかしながら、パソコン市場は今後とも2桁成長を続ける成長分野であると考えており、中でも当社が得意とするポータブルパソコンは市場全体の伸びを上回る成長が続くと見ています。今年度はノート型でも低価格モデルの発売や、今後主流になると見込まれるスリムノートやミニノートパソコンの新製品投入で巻き返しを図るとともに、BTO方式による生産体制にシフトさせ、安定した収益力を確保していきます。

■半導体−世界トップクラスの競争力回復へ
 当社は16MDRAMでは残念ながらトップクラスの競争力を確保することができませんでした。しかし64MDRAMでは、IBM社およびシーメンス社との256MDRAM共同開発の成果をベースに、最高レベルの性能と価格競争力を奪回しており、今後の価格変動にもキャッチアップすることが可能だと考えております。これは、今後のチップシュリンクにおいて、他社より少ない追加投資で0.15ミクロンクラスのデザインルールまで対応できるスケーラビリティが確立できたことによるものです。また、当社の半導体売上高に占めるメモリー比率は、市況が好調だった95年度で約40%でしたが、今後はシステムLSIやASICを中心とするロジック製品の比率を継続的に40%以上に維持することでバランスの取れたプロダクトミックスを確保していく考えです。ロジック製品の中でも、すでにいくつかの戦略商品で引き合いが拡大するなど順調に売り上げを伸ばしています。

■液晶−新型モデルで差別化戦略
 97年度下半期より、液晶パネルの市況は大幅に悪化し、当社の液晶売上高は前年横這いの1,150億円にとどまりました。しかし98年度は、モニター用途やFA用途の市場が本格的に立ち上がることに加え、当社独自の低温ポリシリコンTFT液晶の投入などにより増収を目指しています。低温ポリシリコン液晶においては、現在サンプル品を出荷していますが、98年末から本格的な量産に入る予定です。同製品は薄形軽量、高精細、低消費電力であることから、携帯情報端末への採用が始まっており、今後もさらなる需要拡大が期待できます。

事業構造の再編とアライアンスで収益力強化
■家庭電器事業−損益管理強化を実行
 家庭電器事業は、主要マーケットである国内の消費低迷により大変厳しい状況に立たされています。97年度においては、売価ダウンがさらに進行したことや、天候不順によるエアコンの在庫増により、赤字幅が拡大する結果となりました。しかしながら、映像分野ではビデオ事業のシンガポールへの全面移管や生産委託への切り替えなどの施策を講じ、97年度下期には黒字化を果たしました。一方、白物家電においては、消費者に新しいライフスタイルを提案するような魅力的な新製品の開発を実行し、他社との差別化を図っています。また、在庫増により業績が大幅に悪化したエアコン事業については、リードタイムの短縮や部品在庫の削減など、売れるスピードに合わせた生産体制へと転換させ、収益安定化を図っています。

■電力・産業システム−国際的なアライアンス推進
 当社の発電関連事業の約9割は国内向けとなっていますが、原子力発電が端境期であることに加え、電力会社の設備投資抑制により事業環境は厳しい状況にあります。このため、海外売上高比率を20%程度まで高めることを目標としていますが、海外においても競争が激化しているため、有力企業とのアライアンスにより競争力を高めていく方針です。98年5月には、従来から協力関係にある米国ゼネラル・エレクトリック社と蒸気タービン翼の製造会社を設立し、今後両会社からタービン翼の製造を新会社に移管していくことに加え、次世代のコンバインドサイクルである1,500℃級システムでも世界規模での協業を進めていく計画です。

総合型経営からの脱皮
 我々はこの数年、国際競争力を高めるべく、自社の強みとなる事業分野を見出してきました。しかしながら、あらゆる分野でグローバルスタンダードの物差しが突きつけられており、競争の激しい市場で常に勝ち抜くためには、画一的な全社基準でコントロールすることには限界があると考えています。このため、事業の強みを発揮し、総合力のメリットが引き出せる経営システムとは何かということを様々な角度から検討しています。社内カンパニー制や分社化はその1つのアイデアであります。

■スピード経営を実現する執行役員制の導入
 経営改革の1つの具体的施策として、コーポレートガバナンスを強化することを目標に、執行役員制度の導入と取締役会メンバーの大幅削減を実行しました。具体的には、取締役と執行役員とを分離し、取締役は株主の利益を重視するコーポレートからの意思決定と執行サイドの監督に専念させ、一方、執行役員は各事業の責任者として戦略立案、推進に専念し、意思決定の迅速化を図っていきます。

■小さな本社機能
 経営改革の中では、本社機能の効率化、すなわち小さな本社の実現も目指しています。具体的には、ラインサポート機能を各事業部門に分散設置し、本社はトップ参謀機能と考査機能に限定させ、本社スタッフの人員の極少化を図っていきます。今後は、当社の最大の課題であるグループ力の強化を図るため、本社考査室の人員を大幅に増加していく計画です。

■グループ経営の最適化を目指して
 単に分権化・分社化するだけで業績が改善するとは考えておりません。グループとしてのビジョンや戦略を明確に打ち出したうえで、各部門の業績評価と将来性を徹底的に見極め、成長性のない部門、グローバルな競争力を確保できない部門については、抜本的な再編や売却も検討する必要があると捉えています。我々は、98年度を経営変革の起点とし、内外から“変化を実感できる年”にしたいと考えています。
 これまで当社は、優良な技術を開発すると同時に、豊富な人的資源、ビジネススキルなどのアセットを培ってきました。この資産が真に活かせる経営戦略を推進し、メガコンペティションの時代にあってもリーディングポジションを全力で獲得していく所存です。株主、投資家、取引先の皆様におかれましては引き続きご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

1998年7月


 取締役会長
佐藤 文夫

     取締役社長
西室 泰三


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