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Vol.20 IoTデータの価値を見いだす人工知能  アナリティクスからディープラーニングへ

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#01 インダストリアル領域に、AIの力と可能性を 「IoT x ディープラーニング」で切り拓く、お客さまと社会の未来 株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社 ソフトウェア技師長 天野 隆

今、第三次AI*(人工知能)ブームといわれています。その目覚ましい進化は、AIシステムが囲碁のプロ棋士から勝利を収めたことなどから、一般の人にも急速に知られるようになりました。最新のAIを取り入れたサービスも続々と生まれ、社会や日常の一部になりはじめています。

このブームの背景にあるのが、AI技術の一つである「ディープラーニング(深層学習)」技術です。東芝のインダストリアルICTソリューション社では、東芝グループがさまざまな産業分野においてお客さまの現場を経験してきたことで得た豊富な知識と、長年にわたり蓄積してきた音声・画像認識技術、これにディープラーニングをはじめとする最新のAI技術を融合し、社会インフラや製造ライン、ビルファシリティーなどの最適な制御に役立てる取り組みを推進しています。ここではさまざまなシーンに広がる私たちのディープラーニング活用の取り組みや成果、それらを実現する技術についてご紹介します。

* AI:Artificial Intelligence(人工知能)

センシングからアクションまでを
一貫して結ぶ「IoT x ディープラーニング」を

「ディープラーニング」はAI技術の中の機械学習の一種であり、音声や画像などからなる膨大なデータから、システムが「自動的に」特定の色や形といった特徴量を抽出する点で、その威力を発揮します。これまで特徴量は、それぞれの分野における専門家の知見により、人手で試行錯誤して抽出していました。これがディープラーニングの活用により、特徴量自体の学習から抽出、分類、推論までの全てを自動的に、しかも人間を超えた高い精度(認識率)で行えるようになるため、音声認識や画像認識の領域を中心に、AI技術が飛躍的に発展してきました。

インダストリアルICTソリューション社も長年にわたりAIの技術開発を進め、サービス化にいち早く取り組んできました。その代表例である東芝コミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」は、音声や画像などの複合的な情報から、その意図や状況を理解して人の活動を支援。人々の暮らしや社会のさまざまなシーンで広く活用されています。

そして現在、私たちが新たに目指しているのは、これまで培ってきたAIに関する豊富な知見を最大限に生かしながら、インダストリアル領域でディープラーニングの活用を広げ、データ分析・活用における「スピード」と「精度」を向上させることです。音声や画像のデータに加えて、産業機器や製品に取り付けられたセンサーから取得したIoT*データも分析の対象にし、センシングから、学習、推論、それに基づくアクションまでが一貫してつながる「IoT x ディープラーニング」のシステムやソリューションを具現化することで、お客さまの製品やサービスの品質向上や業務改善、さらには社会的な課題の解決につなげていきたいと考えています。

* IoT:Internet of Things(モノのインターネット)

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クリティカルな課題解決には、
データの「量」も「質」も問われる

インダストリアル領域でディープラーニングを活用するときに必要となるデータや技術は、WebやSNS*などのデータを活用したAIサービスとは大きく異なります。一般にこれらのサービスでディープラーニングに用いるデータは、インターネット上の膨大なビッグデータです。そこにあるのは、とにかくできるだけ多くのデータを集めて、推論の精度を上げていこうという考え方です。

* SNS:Social Networking Service

これに対して、インダストリアル領域における分析の対象は、リアルな現場からセンサーやカメラを通じて刻々と集められる時系列の多種多様なデータです。インダストリアル領域でディープラーニングを活用する場合、その目的は、工場の製造ラインの最適化、エネルギーや交通システムの安定稼働および万一の場合の緊急停止などであり、信頼性と緊急性がクリティカルな課題となります。従って、インダストリアル領域におけるディープラーニングでは、データの「量」と同時に「質」が強く求められます。そこでは、真に必要なデータを見極めることはもちろん、信頼性ある質の高いデータをいかに集めて準備するかが、非常に重要な要素となります。また、緊急時に即応するリアルタイム性をどう担保するか、エネルギーや交通、製造など、お客さまそれぞれの事業領域の要件に合わせたデータベースをどのように構築するかなど、課題がいくつもあります。

そこで私たちは、インダストリアル領域におけるディープラーニングの活用に向けて、スピードと精度を高めるための技術開発を進めています(図1)。多種多様な事業を展開されているお客さまに対して、ディープラーニングを活用することで提供できる価値を「識別」「予測/推定」「制御」の3つに分類。これらの価値を提供するために、最適なニューラルネットワークの構築技術や、推論結果からの迅速なアクションを支えるデータモデルの圧縮技術、さらには学習のためのサンプルデータが少ない場合や大規模な演算が必要な場合の技術なども開発しました。これらの技術を活用して高い精度でかつスピーディーなデータ分析を行うための仕組みを提供し、東芝グループやお客さまにおいて実績を重ねています。

図1 ディープラーニング技術マップ ~スピードと精度を高める~

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インダストリアル領域で進む、
ディープラーニング活用事例

NAND型フラッシュメモリを製造している東芝の四日市工場で、ディープラーニングの活用を始めています。工場内の製造装置や検査装置から集まった1日16億件ものビッグデータの中から、1日30万枚のSEM*画像や、1ヶ月で20万枚を超えるウェーハマップ画像の不良データを高い精度で自動的に分類。ウェーハマップ画像のデータから不良品となる原因を推定するまでにかかる時間を3分の1に短縮できるなど、歩留まりや生産性の向上につながる大きな成果が見込まれています。

* SEM:Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡)

天野 隆

共創による新規事業の開発にも、ディープラーニングが大きく寄与しています。その代表的な例がアルパイン株式会社様と共同で開発している、産業用ドローンを活用した電力インフラ向け巡視・点検システムです。アルパイン様がドローンの航行制御を、東芝が画像認識を担当しています。従来、ヘリコプターからの目視で行ってきた送電線の損傷検査に、ディープラーニングを活用した画像認識を導入。ドローンで撮影した画像から異常な箇所を短時間かつ高い精度で検出することを可能にしました。このシステムには当初、異常を正確に発見するための学習用の画像が不足しているという課題がありました。これを解決するために、ディープラーニングを活用。異常時の画像と正常時の画像を元に、ディープラーニングを使って類似した異常時の画像を生成することで、不足していた学習用の画像を、自動的に効率よく補いました。

さらにその他の活用例として、太陽光パネルの発電量予測や、ウェアラブル端末を用いた倉庫作業員の行動推定など、インダストリアル領域のさまざまなシーンで、ディープラーニングを活用する取り組みを進めています。またインダストリアル領域への展開を視野に、新たな試みとして進めているのが、データ解析の重要性が高まるスポーツでの見える化です。例えばGPS*センサーなどを使わずに、ラグビー映像のみから画像認識とディープラーニングで選手やボールを識別。相手の選手も含めてその動きを捉えます。さらにタックルやスクラムなど複雑な一連のプレーをシーンごとに識別して映像データにタグ付けを行います。これによって、試合中に映像を活用しながら、ゲーム戦略を立てたり、適切なプレーやコーチングを行ったりすることができ、一層有効なものになります。将来的には製造現場に応用し、多くの人やモノの動きを高い精度で見える化し、工場における動線の最適化や効率的な配置計画の実現に生かしていきたいと考えています。ディープラーニングの可能性は広がるばかりです。

* GPS:Global Positioning System(全地球測位システム)

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最新技術と東芝の強みを結集し、
「IoT x ディープラーニング」の時代をリードする

今後、インダストリアル領域におけるディープラーニングの活用には、大量の音声や画像、センサーデータを高い精度でスピーディーに処理し、迅速なアクションにつなげていけるかが問われてくると考えられます。東芝ではこうした課題に、先進のエッジコンピューティング技術を活用。ハイパフォーマンスが要求される「学習」のプロセスはクラウド上で行い、即時性が求められる「推論」のプロセスはエッジ側で行う「協調分散ディープラーニングモデル」を開発しています(図2)。これによりエッジ側ではクラウドで生成したアルゴリズムを活用して、その状況を即座に判断し、リアルタイムに現場の機器などを制御できるようになります。

図2 エッジとクラウドの協調分散ディープラーニング

また、ディープラーニングを多くのお客さまに、より高い精度で、かつ簡単に活用いただくために、3つの技術を確立しました。

① 自動学習実行環境
学習に必要な量と質のデータを準備するだけで、コーディングから学習して最終の結果を出すまでの一貫したプロセスが自動的に実行できる環境を提供します。度重なるコーディングや学習、結果の評価、ネットワーク構成の最適化といった各種課題が解消されるため、お客さまはスムーズにディープラーニングの活用をスタートさせることができます。
※自動学習実行環境と少数の学習データからの学習については、#02で詳しく紹介しています。
② 並列分散学習技術
単一のコンピュータだけでは膨大な時間がかかる大量なデータの学習を、複数のコンピュータで並列に実行。CPUやGPUにかかる負荷を分散することで全体の学習時間を短縮させ、またそれぞれの学習の状況を共有、制御することで、学習の精度を向上させています。
※並列分散学習技術については、#03で詳しく紹介しています。
③ ネットワーク最適化技術
ディープラーニングを支えるニューラルネットワークの構築は、専門家がその知見を駆使して手作業で行うのが一般的です。東芝ではこれを自動化。ノード数やレイヤー数といった各種パラメーターを自動で探索し、アルゴリズムを自律的に効率よく最適化していきます。
※ネットワーク最適化技術については、#04で詳しく紹介しています。

東芝ではこれら最新技術を結集し、デル テクノロジーズ グループのDell EMC様と共同で、インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)に、IoT領域でのディープラーニング活用の有用性を検証するプラットフォームを提案した結果、初のディープラーニングテストベッドとして承認されました。現在、東芝のスマートコミュニティセンター(ラゾーナ川崎東芝ビル)において、ビル施設内に点在する各種センサーから収集したデータをディープラーニングを活用して分析し、設備・機器を最適に制御、管理する検証を進めています。(プレスリリースはこちら
そのほか、安全なディープラーニングの活用を支えるため、エッジからクラウドまで、信頼性の高いセキュリティの確立にも取り組んでいます。

世間では第三次AIブームが叫ばれていますが、インダストリアル領域においてはまだまだ黎明期(れいめいき)といえるかもしれません。インダストリアルICTソリューション社は、お客さまのデジタルトランスフォーメーション*における課題を解決するために、今後も新たな技術開発や実証実験を進めていきます。

* デジタルトランスフォーメーション:企業と顧客が関わるビジネスモデルやビジネスプロセス、サービスや製品など全てを取り巻く環境がデジタル技術により変革する概念

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年1月現在のものです。

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