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Vol.22 IoTに求められる即時性と拡張性 センシングデータを現場でフルに活用する

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#04 GridDB 導入事例「GridDB」 電力小売自由化に対応した大規模なスマートメーターデータの高速処理 東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルソリューション事業部 電力・エネルギーソリューション技術部 グループ長 佐々木 規裕

時系列データに最適化したデータモデルと処理性能、爆発的に増大するデータ量に対応できる拡張性の高さ、そして安定稼働を支える高可用性。
東芝の「GridDB」は、IoT*システムに必要な要件のすべてを満たした、高性能かつ拡張性の高い革新的なデータベースです。電力の小売全面自由化に対応した託送業務システムを運用するある電力会社様は、数百万台規模のスマートメーターから30分ごとに送られてくるデータの処理基盤にGridDBを採用。高頻度かつ大量な時系列データを即時に処理するIoT時代の先駆けともいえる仕組みを導入されました。ここでは、GridDBの圧倒的なパフォーマンスを実業務の場で発揮するために東芝が行った検証、そこで学んだ既存の技術も含めたシステムインテグレーションの重要性などに触れながら、この事例についてご紹介します。

* IoT:Internet of Things (モノのインターネット)

電力の小売全面自由化を支える
スマートメーター

2000年3月にスタートした電力の小売自由化。まずは「特別高圧(20kV以上)」を利用する大規模な工場やデパート、オフィスビルなどにおいて電力会社を自由に選択することができるようになりました。このとき、新規参入した小売電気事業者からも電気を購入することが可能となりました。その後、2004年から小売自由化の対象が「高圧(6kV以上)」を利用する中小規模の工場やビルへと拡大。2016年4月には、最後の仕上げとして「低圧(100/200V)」を利用する一般家庭や商店など、電気を利用するすべての需要家が電力会社を選択できるようになりました。いわゆる電力の小売全面自由化です。

この小売全面自由化の実現は、これまで独占的であった電力市場に競争の原理が持ち込まれたことを意味します。電力会社は、より需要家の利便性を考えた経営へと転換。新たに参入してきた通信やガス、商社など、これまで電力とは異なる分野で事業を展開していた企業と、料金やサービスを競う時代がやってきたのです。

需要家のニーズを捉えた電力事業の実現に不可欠なものが、新しい電力量計である「スマートメーター」です。従来の電力量計に代わって各家庭や商店などに設置され、電気の使用量を30分ごとに検針してそのデータ(メーターデータ)をコンセントレーター(集約装置)に送信。検針作業の自動化や遠隔操作によるアンペア変更の簡素化、停電からの復旧の迅速化を図るばかりか、電気の使用量の見える化による節電や最適な割引プランのアドバイスなど、さまざまなサービスの創出を可能にします。電力の小売自由化により、電力会社には新たな託送業務システムが不可欠となりました。メーターデータを受信して迅速に処理し、集計結果や電力系統の利用料(託送料金)などの情報を小売電気事業者へ開示するなど、公正な競争のための基盤システムとして運用することが求められました(図1)。

図1 メーターデータの流れ

こうした劇的な変化への対応をいち早く進めていたのが、地域の電力供給を支え続けている、ある電力会社様でした。

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各種実証事業で明らかになった
ビッグデータ処理の課題

佐々木 規裕

この電力会社様は、小売自由化の初期である2004年、東芝と共にスマートメーターから送られてくるメーターデータを処理するシステムの開発に着手されました。データ処理基盤にはリレーショナルデータベース(RDB)を採用し、30分ごとに送られてくるメーターデータの1ヶ月分のデータを使って託送料金の計算を行う仕組みを構築。さらに小売全面自由化を視野に入れ、2015年4月から一般家庭など低圧で契約されている需要家へのスマートメーターの設置を本格的にスタート。その数は数千台から数百万台に一気に増え、2023年度には域内のすべての需要家にスマートメーターを設置することを計画しています。

数百倍に増加する処理対象を従来と同じ既定の時間内で高速に処理するために、RDBに代わるデータ処理基盤として導入を検討されたのが、東芝のデータ蓄積基盤「GridDB」でした。数百万台ものスマートメーターから集まる30分ごとのメーターデータを継続的に処理するためには、従来の数十倍のハイパフォーマンスと高い信頼性が求められます。電力会社様と東芝は、RDBをチューニングして性能を最大限に引き出しても、必要な性能に到達することが難しいと判断。データベースにGridDBを活用すれば、高頻度で大量なデータの処理をまかなう託送業務システムが構築できるのではないかと考えました。

しかし、性能面で全幅の信頼を置くGridDBを中核に据えたシステムの構築は、最初から順調に進んだわけではありませんでした。

当時はスマートコミュニティの実証事業やサービス構築プロジェクトの全盛期。各種センサーからのビッグデータ処理基盤に採用されることも多かったGridDBですが、「期待したパフォーマンスが得られない」「運用性が考慮されていない」など、社内での評判は芳しいものばかりではありませんでした。突出した処理性能を持っているのになぜ?この疑問を棚上げしたまま、小売全面自由化に向かう電力会社様を支える重要なシステムにGridDBを採用するわけにはいきません。原因を突き詰めていくと、「GridDBの突出した技術に最適な条件の元で、最高の性能を引き出すことができていないのではないか」という仮説が浮かび上がってきました。

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テンプレートシステムで
最適なインテグレーションを提供

振り返れば過去のさまざまな実証事業において、私たちは従来のシステムや従来の技術の延長線上で、GridDBを適用してきました。ユースケースの想定や得意分野を十分に見極めることなく、GridDBが持つ性能に頼ってシステムを構築していた例もあるかもしれません。その結果、せっかくの革新的なパフォーマンスを最大限に引き出せない状況に陥っていた、という結論に至ったのです。

私たちはこの仮説に基づき、検証と改善を繰り返しながら、GridDBの革新的な性能をビッグデータ処理において存分に発揮するためのテンプレートシステムの開発に着手。確実に結果が出せることを実証した上で、電力会社様の託送業務システムに適用する戦略を立てました。活動の実行方針には「なんにでも使えるものではなく、特定のユースケースで突出した成果をあげるものを目指す」「RDBとGridDBそれぞれが得意とする分野を見極め、分担させることでトータルに結果を出す」「電力の小売自由化関連システムに求められる運用要件を明確化し、必要に応じてGridDBの機能改善を図る」さらには、「この活動で蓄積したノウハウを、多種多様なシステムに横展開できるよう、ガイドラインを整備する」の4つを掲げました。

こうして開発と実証を進めたGridDBを活用したビッグデータ処理の託送業務システム用テンプレートシステムでは、データの収集部分に東芝のデータ収集基盤「SmartEDA」を採用。さらに、アプリケーション基盤にはGridDBと相性の良い大量データを並列分散処理できる東芝の分析基盤「GridData」を採用しました。このテンプレートシステムでは、750万台のスマートメーターから送られてくる大量なメーターデータの高速処理を実現。また、画面系の処理やデータの永続化にはRDBを活用するなど、既存の技術も含めて適材適所に組み合わせた最適なインテグレーションを行いました。さらにIPA(情報処理推進機構)による非機能要求グレード*に基づき、目的と達成レベルを明確に定義した運用要件を満たすインテグレーションも実施。ハードウェアの更新や増強によるスケールアップやスケールアウトにより、システムの優れた拡張性も実証することができました(図2)。

* 非機能要求グレードとは、情報システムの開発における業務機能に関する要求以外のいわゆる「非機能要求」において、発注者と受注者の認識の行き違いや、互いの意図とは異なる理解をしたことに気付かないまま開発が進んでしまうことを防止することを目的として、IPA(情報処理推進機構)が公開している非機能要求の見える化と確認の手段を実現するツール群です。

図2 低圧託送業務システムのアーキテクチャー

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実システムにおいて
遂に圧倒的な性能を実現

検証と改善の活動開始から1年後、性能評価テストを行いました。750万件のメーターデータを10分で取り込み、5分で処理することを目標に掲げたテンプレートシステムは、3分44秒でデータを取り込み、1分32秒で処理が終わるという、目標をはるかに超えた処理性能を記録。GridDBの圧倒的なハイパフォーマンスが、託送業務システムにおいて目を見張る結果を出したのです。この成果を受け、テンプレートシステムを実システムに適用。周辺システムが前提としたユースケースとは異なる振る舞いとなったことで、パフォーマンスが出ないという問題に対して、GridDBの特性を熟知したメンバーがユースケースに合わせてコンテナを再設計したことで、問題は速やかに解決。2016年4月から実運用を開始しました。SmartEDAを介して数百万台のスマートメーターから30分ごとに送られてくるメーターデータの3ヶ月分にあたる2.6テラバイト、130億レコードをGridDBに蓄積。GridDataが提供する並列分散処理で電気の使用量と料金を計算し、小売電気事業者に速やかに通知するこの託送業務システムは、運用開始から1年以上を経過した今も安定稼働を続け、日夜、ハードな業務処理を行ってくれています。

GridDBは大量なデータを超高速に処理できるデータベースです。しかし、どんなに優れたテクノロジーも、適正を見極め、適正に応じた活用をしないとその真価は発揮できません。十分な事前検証、適材適所のインテグレーション、そして目指す結果が出るまで妥協することなく試行と改善を繰り返すこと。今回の事例では、GridDBをその性能が十分に発揮できる領域に絞り込んで適用し、並列分散処理を行うGridDataと連携させ、RDBなど既存の技術と相互補完したことにより、個別最適ではなく、全体最適による革新的な結果を出すことができました。またサービスオリエンテッドなアプローチでアプリケーション設計とデータベース設計を一体で行ったことが、GridDBを活用する上で適したアプローチであったと考えています。こうした取り組みと優れたテクノロジーがひとつになって初めて、実業務において圧倒的なパフォーマンスが得られる成果が出せたと思っています。

現在、IoTの時代が本格的に到来しようとしています。今回、高い頻度で発生する大量なデータを処理するという重責を十分に担えることを電力関連システムで証明したGridDBですが、求められるパフォーマンスは今後さらに高くなり、より厳しい運用要件への対応も必要とされるはずです。今回得た知見を汎用的なガイドラインとして残すなど、さまざまな取り組みを進めながら、お客さまが求められるIoTによるデジタルトランスフォーメーションをGridDBで加速できるよう、今後も惜しみない努力を続けていきます。

※GridDBは、#03で詳しくご紹介しています

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年8月現在のものです。

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