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Vol.23 音声・画像データの知識処理を行うコミュニケーションAI 人とAIのコラボレーションがもたらすビジネス革新

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#02 RECAIUSの対話と知識のプラットフォーム 現場の知見を集めて知識として活用 東芝デジタルソリューションズ株式会社 RECAIUS事業推進室 参事 永井 剛 東芝デジタルソリューションズ株式会社 RECAIUS事業推進室 事業開発担当 グループ長 森兼 秀記

「人に関わるデジタル化」の領域を担う東芝コミュニケーションAI*「RECAIUS(リカイアス)」は、人とモノ、人と人とのコミュニケーションと知識活用を支援するサービスです。この領域における幅広いお客さまのリアルでシリアスな課題を解決するためには、RECAIUSの音声認識・合成、対話、知識探索といったAIエンジンを個別で提供するだけではなく、用途や分野を定めた上でコミュニケーションと知識の活用や更新をトータルに支援する仕組みの提供が必要となります。

RECAIUSでは、主に顧客対応サービスにおける顧客の満足度向上と現場の作業者の生産性向上を目的とする、音声・映像や知識活用のプラットフォーム開発を進めています。これにより、システムインテグレーターやサービスプロバイダーとの戦略的な協業が可能になり、さまざまな産業領域でより多くのお客さまにそれぞれの目的に合ったソリューションを提供することができるようになると考えています。そのためのエージェントとナレッジという2つの機能が相互に連携するRECAIUSサービスプラットフォームの概要と、それらを活用したソリューションについてご紹介します。

* AI:Artificial Intelligence (人工知能)

人に関わるデジタル化
暗黙知を形式知にして伝える

現代、特に日本の産業界全体では、熟練者の減少と少子高齢化に伴う人手不足のため、これまで受け継がれてきた暗黙知が消滅する危機に直面しています。それは、顧客満足度や生産性、さらには安心、安全にも関わる、リアルでシリアスな世界で不可欠のものです。あえて言葉で表現すれば「こういうときには、こうするべき」というような知識ですが、これを本来の意味で正しく他人が役立たせることは容易ではありません。熟練者があらゆることを経験する中で獲得した「こういうとき」という条件のひとつをとっても、具体的な経験を共有することなしに、他人が全く同じ感覚を理解することは難しいからです。「3回繰り返したら」とか「赤くなったら」など、一見、明確に思える表現だとしても、「これは1回と数えてよいのか」「これは赤いと言えるのか」といった、判断する感覚を合わせることさえ難しいものなのです。

言葉の表現を中心とする知識を獲得することの難しさは、30年以上前のAIブームのときに既に指摘されていました。ところが、その後に開発され、現在も日進月歩で進化しているディープラーニング(深層学習)に代表される強力なデータドリブンの機械学習手法の登場は、この知識継承の限界を超えることを感じさせました。認識や識別の判定結果という大量なデータを元に、判定に効果的な特徴量を抽出して学習すること(表現学習)で、非常に正確な判定を行うメカニズム(推論モデル)を作ることができるようになったのです。

この新たなAIの手法を使えば、熟練者の暗黙知も、彼らが何を見てどのように判定したのかを表す入力と出力の教師データが大量にあれば、言葉で表現することなしに、システムがその能力を継承することができるようになります。実際に、目で見て不良かどうかの判定をしているようなケースでは、入力に画像を用いることで、良か不良かの判定を学習することが比較的容易にできるようになりました。

それでも、熟練者の暗黙知をデジタル化(形式知化)することの難しさは残っています。例えば、(1)判断材料となるデータが特定あるいは測定しにくい場合、(2)めったに起きない事象に対する知識(具体的なデータ自体が存在しない)、(3)タイミングや細かな判断の積み重ねが必要な場合、(4)うまくいったという判定自体が測定しにくいものなどがあります。人から人への暗黙知の継承は、そうした難しさを具体的な経験と想像力、そしてコミュニケーション力を駆使して乗り越え、実現されていると考えています。

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知識が生きるための
コミュニケーションと現場体験

永井 剛

人からシステムへの知識の継承、つまりデジタル化の難しさを克服するためには、やはり人から人への暗黙知の継承と同じようなプロセスが必要なのかもしれません。最初はごく単純な基準に基づいて判定しますが、わからなかったときや失敗したときは熟練者から必要な判断材料を気づかせてもらったり、近い体験を初めてのケースに応用してみたり、うまくいったかどうかを体感したタイミングで記録に残したりする、そうした積み重ねが可能な環境の中で先進のAIを適用したいと考えています。

これまでの「こういうときには、こうするべき」という知識は、言葉として、マニュアルなどの文書の形で記録され、必要な人が意識的に参照したり活用したりしてきました。情報システムとしては、知識データベースに格納して、ユーザーのための検索機能を提供する、そういうモデルです。しかし、このモデルの問題点は、人が知識を求めて実際に探さないと役に立たないというところにあります。逆に、求められている知識が誰にも気づかれずに登録されていないという状況になりがちなところも問題点です。

こうならないようにするためには、(1)知識があることをユーザーに積極的に知らせる、(2)有効な知識がないときには、その知識を補える人に気づかせる、(3)知識を対話で簡単に補えるようにする、などが考えられます。デジタル化された知識を真に活用するためには、現場の人々に対して、積極的にコミュニケーション(対話)をする仕掛け(エージェント)が必要です。そして、現場で人が知識を活用した結果を知ったり、人から人に聞いて知識を補ったりしたことの体験共有(コラボレーション)の場は、人とAIの双方の学習に欠かせません。

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エージェントとナレッジ
RECAIUSの対話と知識のプラットフォーム

RECAIUSは、リアルでシリアスな世界での知識継承という社会課題に対して、これまでの音声認識・合成、対話、知識探索といったAIエンジンを単体で提供することだけではなく、コミュニケーション支援と知識マネジメントを融合させた、現場の人たちに価値のある真の知識活用サービスを目指しています。

その実現のため、現場の業務システムとAIエンジンとの間を支えるプラットフォームの開発を進めています。それは「エージェントプラットフォーム」と「ナレッジプラットフォーム」の2つで構成されます(図1)。

図1 コミュニケーションAI事業の概要

まず、ナレッジプラットフォームは、「こういうときは、こうするべき」という知識を蓄えるものです。単独の機能としては、(1)ある知識に必要な種類のデータに対して「こういうときには」という特定の状況かどうかを判定する機能、(2)そこに「こうするべき」という情報をひも付ける機能、(3)そしてひも付け自体の更新を支援する機能などです。この判定やひも付けに利用する機能は、複数を組み合わせて使うこともできます。こうした仕組みにより、ひも付けられた信号データや言葉などの多様な情報の関係を使った探索、例えば「センサーデータから、過去にそれと類似した事象に関する報告書を探す」というようなことを実現しようとしています。

一方、エージェントプラットフォームは、情報を蓄えたデータベースから、人が対話を通して簡単に情報を引き出したり、逆に不足している情報を人に積極的に聞いたりすることができる対話サービスを、短期間で構築できるようにすることが目的です。従来は、用途や分野に応じて、対話シナリオの作り込みが必要だったうえ、蓄積された複数の対話シナリオをそのまま連結して使うことができず、対話シナリオ全体をイチから構築し直す必要がありました。そこでこのプラットフォームでは、データベースなどから知識を出し入れするのに必要な典型的な対話シナリオをあらかじめモジュール化しておき、それらを組み合わせて活用できるようにしています。

これら2つのプラットフォーム、エージェントとナレッジを組み合わせることで、人を介した知識の活性化(活用や更新)が促進され、真の知識活用が実現できるようになると考えています(図2)。

図2 RECAIUSの2つのサービスプラットフォーム

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すでに始まっている
現場での知識活用

森兼 秀記

工場などの生産現場では、現場に設置されたセンサーから取得したデータで現場の状況の変化を検知すると同時に、その現場で働く人に対してその状況にあった適切な知識を提示する仕組みができます。

神奈川県の老舗温泉旅館「元湯 陣屋」様では、RECAIUSを活用したスタッフ間の情報共有システムをご利用されています。そこでは、従来はトランシーバーを使っていたところを、モバイルネットワークにつながったタブレット端末と小型イヤフォンマイクに変えて、音声だけでなく音声認識してテキスト化した情報をスタッフ全員に同時配信することができるようになりました。これによって聞き逃しがなくなり、どういうお客さまにどのようなおもてなしや配慮が有効であったかを知識化して活用することもできるようになりました。今後さらに、現場やお客さまの状況の変化をとらえて、スタッフへの行動の指示を音声合成で自動的に出すなど、より現場に近いところで知識を生かす取り組みを始めています。

私たちはこうした多くの実証事例で培ったノウハウを余すことなくRECAIUSの商品開発に投入し、リアルでシリアスな世界の産業を元気にするために有効なAIを実現していく予定です。「勤勉さ」「丁寧さ」「思いやり」「おもてなし」など、日本ならではの特性が見事に盛り込まれたAIサービスの世界が、私たちの挑戦から広がっていくことをご期待ください。

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年10月現在のものです。

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