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コラム

[第25回] テクノロジーの使いこなしが、銀行の未来を左右する!
最新事例にみる、効果的なAI活用法

更新日:2017年11月30日

金利低下や少子高齢化などの世情に加え、最新テクノロジーを生かしたFinTechの隆盛によって、変革の岐路に立たされている金融業界。最近も大手銀行が続々とIT活用による大規模な業務効率化を発表するなど、銀行業務やサービスに対していかに効果的にITを導入できるかが重要視されている。

今回はテクノロジーの中でも特に注目度の高い「AI」に着目。AIの強みを生かした最新事例を紹介し、導入のヒントを提供したい。

メガバンク3行が相次いで、テクノロジー活用による業務量削減を発表

みずほフィナンシャルグループは2017年11月13日、中間期の連結決算を発表。その中で、抜本的な構造改革に着手することを表明した。方針のひとつに掲げた「組織・人員の最適化」では、テクノロジー活用による業務プロセス改革・業務量削減などを通して、2026年度末までに約19,000人分の業務量を削減することを明示している。

さらに、「チャネルの再構築」においては、「次世代の金融を展望した、テクノロジー活用による対面・非対面チャネルの構築とお客さまの利便性向上」を掲げ、2024年度末までに約100拠点を削減することを表明。
進展めざましいテクノロジーを積極的に導入することで、グループの持続的成長と競争優位性の確保を目指す構えだ。

翌14日には、三井住友フィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャル・グループも決算を発表。
三井住友フィナンシャルグループは17日に公表した中期経営計画の進捗報告の中で、約200業務・40万時間(200人)分の業務についてRPA(robotic process automation)による自動化を既に完了したと説明している。同グループは今年度内にRPA活用で100万時間(500人)分、3年以内で300万時間(1,500人)分以上の業務を削減することを目標に設定。そのほかの施策も合わせて4,000人分の業務量削減を目指し、生産性の向上や付加価値業務の拡大を目論んでいる。

RPAを中心としたIT活用で業務削減を推進してきた三菱UFJフィナンシャル・グループも、既に9,500人相当の業務量削減を目指すことを公表済み。代表執行役社長グループCEOの平野信行氏は、「機械で代替される業務に従事してきた従業員に研修を行うことで、より創造的な仕事に転換する」と、人員を減らす計画ではないことを名言しているものの、今後も業務プロセス改革に注力していく方針であることは間違いない。

金融業界に限らず、テクノロジー活用による業務効率化や生産性向上は社会の様々なシーンで求められており、話題に事欠くことはない。ただ、今回はメガバンク3行がそろって「業務量削減」という同じ方針を打ち出したことのインパクトの大きさもあってか、多くのメディアに取り上げられるなど、世間から強い関心が寄せられている。

しかし、人を減らすことがこの改革の主たる目的と考えるのは早計だろう。各行は人員配置の最適化や付加価値の向上を明言している。様々な業務の中でテクノロジーが得意とする部分と人間が得意とする部分を見極め、双方の融合によるベストパフォーマンスを生み出すことが構造改革の目指すところではないかと思われる。

未来の生産性向上と収益増加の鍵を握るAI

様々なテクノロジーの中でも、銀行業務の最適化や生産性向上に大きく貢献するものとして期待されているのが、人工知能(AI)分野だ。

2016年11月27日にアクセンチュアが発表したレポートによると、世界経済の総生産の50%以上を占める先進12ヶ国について、AIの影響力が市場に浸透した場合、2035年に労働生産性は最大40%も高まると予測。

さらに、2017年7月5日に同社が発表した最新レポートによれば、同12ヶ国における16の業界(情報通信、製造、金融サービス、卸売・小売、運輸・倉庫、専門サービス、ヘルスケア、建設、農林水産、宿泊・飲食、水道・電気・ガス、アート・エンターテインメント、福祉サービス、公共サービス、教育、その他サービス)で、2035年までに収益を平均で38%向上できる可能性があると予測。

同社CTO兼CIOのポール・ドーアティ氏が、「AIは、企業の競争環境や成長手段を根本的に変えるものであり、収益性を高める可能性を秘めた、まったく新しい生産要素」と評価するほど、これまでにない大きな変革をもたらすものとして期待されている。

そして、上記16の業界のうち、特に収益の増加が見込める業界のひとつに挙げられているのが、ほかでもない金融サービスなのだ。同社が作成したシナリオによれば、AI活用によって情報通信と製造、金融サービスの3業界だけで2035年に6兆ドルもの粗付加価値(GVA)が創出されるというのだ。
予測とはいえ、近年のAIのめざましい進展ぶりや、世界各地で研究が盛んに行われている状況をみると、あながち間違いとは言えないかもしれない。

AIが得意なこと、AIにしかできないこととは?

今のところ、AIは人間の職業を丸ごと代替するものではなく、あくまでも様々な業務のある部分を助ける道具として活用されており、使いこなすのは人間である。それゆえに、AIの強みを最大限に発揮させることが、効率化や生産性向上を実現する上で重要である。たとえば、AIの強みのひとつに、大規模なデータを解析し、学習してどんどん賢くなる点が挙げられる。

スウェーデンの大手銀行スウェドバンクは、声紋認証サービスなどを提供するニュアンス・コミュニケーションズが開発したバーチャルアシスタント「NINA」をコールセンターに導入。3ヶ月間で月平均30,000回もの顧客対応を実施し、その問い合わせのうち78%をすぐに解決したという。
このNINAには最先端の自然言語技術が採用されており、人間の会話にありがちなスラングや単語の省略、つづり間違いや文法の破綻などにも問題なく対応。途切れることのない自然な対話を実現する。さらに顧客との会話をすべて記憶・分析し、自動学習することで、サービスの質はどんどん改善されていくのだ。

また、AI活用というと「業務効率化」や「人手不足の解消」に焦点があてられがちだが、AI技術は日進月歩でアップデートされており、単なる人間の代替作業にとどまらない、「AIにしかできないこと」も生まれつつある。

米国のアフェクティバが開発した感情認識AIは、その好例として挙げられるだろう。同サービスはターゲットの顔のキーポイントや動きを追跡しながら僅かな動きを分析し、複雑な感情データと関連付けて感情を測定。感情データのストックには、75ヶ国以上から収集・分析された約400万種類の表情が存在し、それらは40億もの感情に関するデータを構成しているという。

日本でも2016年7月7日に、企業向けITサービスを展開するCACがアフェクティバと日本国内発となる販売代理店契約を帰結し、感情認識AIの販売をスタート。今後、CICは自社のITシステムと感情認識AIを組み合わせて、金融機関向けのソリューションを開発することも構想している様子だ。

米国ベンチャー企業のオービタル・インサイトの取り組みも注目に値する。同社は衛星データをAIで解析し、人間の作業では実施困難な地上物体の識別・解析作業を短時間で行う画像解析アルゴリズムを構築。農業、海運、建築など様々な領域での活用が見込まれる中、世界の石油貯蓄量を分析するサービスが話題となっている。

これは、世界各地の石油タンクを識別し、タンクの浮き屋根の影の大きさの変化などからタンクにどれだけの石油が蓄えられているかが判断できるというもの。世界規模での石油の需要予測や、金融機関のマーケット予測に大きく寄与する可能性を秘めている。

AI技術の進化に伴って導入できる業務の幅は広がり続けており、応用のバリエーションも増えつつある現在。その最先端技術を最大限に生かして新しいアイデアを創るのは人間にほかならない。AI技術自体のさらなる革新はもちろん、人が生み出すイノベーションにも期待したい。

ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


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