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コラム

[第26回] 開発者インタビュー
シナリオとAIの役割分担で、相続相談に適したシステムを構築

更新日:2017年12月18日

(左から)小高聡氏、浅見遼馬氏、亀屋淳氏
(左から)小高聡氏、浅見遼馬氏、亀屋淳氏
高性能な音声対話技術を用いて、インターネット上でユーザに相続の手続き案内をする「ネット相続相談サービス」。2014年のリリース以降、高齢化社会の進展や、金融業界の業務効率化に注目が集まる中で、同サービスへのニーズも高まりつつある。今回は、製品開発やお客様への導入に携わっている東芝デジタルソリューションズの社員3名にインタビューを実施。世の中の需要に応えるべく、どのようなソリューションを打ち出しているのかを聞いた。

地方銀行への来店が難しいユーザにも、均質な銀行サービスを届ける

「ネット相続相談サービス」は、相続手続きを求めるユーザに対して、必要な書類や処理の流れを音声対話も含めたナビゲーションを通じて案内するソリューション。
コミュニケーションAI「RECAIUS™」を用いた音声対話とシナリオ設計による確実な案内対応を実現し、マルチデバイス対応やクラウドサービスによる簡易運用など、きめ細かな仕様も高評価を得ている。

開発時、既に少子高齢化は叫ばれていたものの、RPAなど銀行業務の効率化・業務量削減などは、あまり話題になっていなかった。当時の状況に詳しい小高氏は、開発の経緯をこのように振り返る。
「福島県の東邦銀行様とのあいだで、“共同研究で新しいソリューションを開発しよう”という話が持ち上がったことに始まり、震災によって県外への避難を余儀なくされた方々を中心に、インターネット上で銀行サービスを提供することを考案しました。中でも相続相談は複雑で、対面でも書類の不備等で何度も銀行に足を運ぶケースが多かったので、そこをテクノロジーで改善できるのではないかと考えたのです」

2014年のリリース以降、現在に至るまで様々な金融機関で運用されている同サービス。導入したお客様からはどのような反応があったのだろうか。

亀屋淳氏

お客様の窓口に立ち、サービス導入のプロジェクトを推進してきた亀屋氏は、「まず、こちらの狙い通りの結果として、ユーザが同じ手続きのために何度も店舗に足を運ぶことがなくなったというご報告をいただけました。また、同サービス上で来店予約もできるのですが、その際ユーザに心配ごとや相談したいことを事前に入力していただくことで、来店される前に案内したいサービスの準備ができたという声もありました」と話す。

また、開発時には想定していなかった効果も得られたという。
「ユーザへの相続案内だけでなく、行員の方々が自分たちの学習用として活用しているケースもあるようです。従来、相続相談は高度な法務知識や税務知識などの専門的な知見が求められるため、ベテランの方に頼りきっていた部分もありました。それが、本サービスを活用して学習を重ねることで2〜3年目の若い方でも、ユーザと対話できるようになったと。“相続相談サービスのおかげで、若手の苦手意識がなくなり、積極的に相続や遺産整理サービスに関わってくれるようになりました”という話を聞いて、本当にうれしかったですね」(小高氏)

行員の負荷軽減と生産性向上をもたらし、金融業界の課題解決にも貢献!

近年は人口減少や長期化する低金利、異業種による金融業参入などの影響で、銀行は大幅な業務変革を迫られている。当初はユーザの利便性向上を目的に開発した同サービスも、こうした時代のニーズ変化に伴って、銀行員の負荷を減らし、業務効率化を図るソリューションとしての価値が再認識されているようだ。

亀屋氏は、「相続相談は内容が複雑なので、どうしても対応に時間がかかってしまいます。しかし、同サービスを使えば銀行での対応時間が減るので、貴重な時間を相続した資産の次の運用の案内などに充当することができます。生産性の向上が叫ばれている今、自動化ツールを用いた業務効率化へのニーズは確実に高まっていると感じますね」と話す。

小高聡氏

一方で小高氏は、「自動化でユーザ対応の時間を減らしたいという要望もあれば、ユーザとの時間を大切にするため、店舗への誘導を強化したいというご要望もいただきます。つまり、どういう方向性にするのか、お客様と対話を重ねながらサービスを作ることが大切なのです」と、目的に合わせて最適なシナリオを設計することの重要性を述べた。

小高氏が語るように、同サービスの特徴としてもうひとつ挙げたいのが、銀行ごとに様々な要望を取り入れながら、独自のサービスを構築できる点だ。

「相続のシナリオ構築は基本的に法律に則っているので変わりませんし、銀行固有の言葉や相続特有の言い回しなどは弊社にノウハウが蓄積されているので、サービスの構築自体には時間はかかりません。しかし、同じ業務でも銀行ごとに店舗で決裁できる金額の上限や、手続きに必要な書類が異なるケースもあるので、そのあたりのチューニングは丁寧に行なっています」と浅見氏。

銀行の規定に則った回答や言葉遣いを設定することはもちろん、「手続きに必要な書類をブラウザに表示したあと、一括で印刷できる機能がほしい」「会話中に、他の金融商品もお薦めしたい」といった要望にもできる限り対応するという。

シナリオとAIの役割分担で、相続相談に適したシステムを構築

ここ数年、様々な業界で導入がさかんなAI技術。特に、AIを用いた自動音声対話や自動応答サービスは、生産性向上に大きく貢献するものとして期待されている。

しかし、同サービスが採用しているのは、あくまでもシナリオ設計に基づく自動応答だ。AIではなくシナリオ設計にこだわる理由を、浅見氏はこのように語る。
「AIによる自動音声対話は、会話の自由度が高い一方で、話す内容を完全にはコントロールできないリスクがあります。銀行サービス全般に通じることでもありますが、相続案内は正確性が非常に重要ですから、銀行が意図しない結論や、規定を逸脱した言い回しを回避しなければなりません。そういう意味では、シナリオ設計で回答を組み立てたほうが、実際の運用には適しています」

とはいえ、同サービスにAI技術が全く活用されていないわけではない。

浅見遼馬氏

「弊社サービスは、パソコンやモバイル端末に対して、人に話しかける要領で利用できるのが特徴ですが、ユーザがパソコンやモバイル端末に話しかける際、文法が正しくなかったり、人によって使う単語が異なったりしますよね。このような話し言葉の意味を理解するために、先進のディープラーニング手法や、少量のデータでも高性能化する辞書チューニング技術が採用されています」と浅見氏が話すように、AIがトレンドになる前からAI技術を導入。シナリオとAIの役割分担を適切に行うことで、相続相談にマッチしたソリューションを実現しているのだ。

顧客接点型ソリューションとして、さらなる進化に期待!

同サービスは銀行の相続業務として開発されているが、業務の効率化とサービス品質の均質化という観点から、最近は他業界に展開することも視野に入れているようだ。
「保険会社、証券会社等の金融機関をはじめ、官公庁や自治体など色々な分野からお問い合わせをいただいています。サービスのしくみを応用してコールセンター業務を自動化するなど、まだまだ活用の幅は広げていけるのではないかと思います」と展望を述べる亀屋氏。

また、小高氏は「クラウド上で提供しているサービスなので、利用状況など多種多様な情報がデータとして蓄積されていきます。この情報をもとに、たとえば各銀行が潜在的なニーズを分析したり、ユーザを惹きつける会話のパターンを分析したりといった活用方法も考えられますよね」と、顧客接点型のソリューションとして展開していけることを解説。亀屋氏も、「相続の手続きを進めていくと同時に、そのユーザに適した金融商品もご案内できるような仕掛けを作りたいですね」と続けた。

浅見氏は、同サービスの“ツール化”を思い描いている。「現在、シナリオをお客様自身で設定できる機能を企画構想中です。それこそ、ツールみたいな形式で展開できれば、いまよりも短期間かつ比較的容易にシナリオの作成や変更ができるので、お客様にとって、より利便性の高いサービスを提供できるようになるでしょう」と構想を語ってくれた。

銀行以外の業種への導入が検討されており、銀行業務における活用の幅も広がりつつある「ネット相続相談サービス」。今後の展開にますます期待したい。

3人集合写真
ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


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