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環境活動

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自然資本会計

■ 自然資本に関する議論の近年の動向
「自然資本に関する議論の近年の動向」のイメージ

自然資本に関する動向

近年、自然資本の価値を企業会計に盛り込む「自然資本会計」に関する議論が活発化しています。

2010年に公表された「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」では、「企業会計報告書にも、生物多様性情報の開示を推奨し、『ノーネットロス』と『ネットポジティブインパクト』の対象の設定と、オフセット制度を検討」することが提言されています。また、2012年に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定した「自然資本宣言(Natural Capital Declaration:NCD)」では、年間数兆ドルもの価値を生み出している自然資本を、社会資本や金融資本と同様に評価することが求められています。同じく2012年に世界銀行が立ち上げた「50/50プロジェクト」では、50の国の国家会計と50の企業の企業会計に自然資本を組み入れることをめざしています。

さらに、2013年にTEEBビジネス連合(後の自然資本連合)が公表したレポート「NATURAL CAPITAL ATRISK」では、自社操業とサプライチェーンにおける自然資本への影響について評価することが企業への提言としてまとめられています。

一方で、国際統合報告評議会(IIRC)による「国際統合報告フレームワーク(FW)」と、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)による「サステナビリティ・レポーティング・ガイドラインG4」が2013年に相次いで公表されました。IIRC-FWでは企業活動を支える6つの資本の一つに自然資本が明記されています。また、GRI-G4では、情報開示の重要項目として自然資本に関する経済評価が位置づけられるなど、企業への対応が求められています。

こうしたなか、日本の環境省でも2015年3月に自然資本会計に関する意見交換会が開催され、当社も出席しました。意見交換会では、学識経験者、機関投資家、コンサルタント、企業など各界の有識者がそれぞれの立場から自然資本会計の必要性や有用性、今後の方向性などについて積極的に意見を出し合い、活発な議論が行われました。

そして2016年7月に自然資本連合(NCC)が「自然資本プロトコル」を公表しました。プロトコルは、自然資本の定量評価手法を示すものではなく、自然資本の評価・管理を行うための流れと、企業の意思決定に組み込むまでのプロセスなどを示しています。

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自然資本とは

自然資本は、森林、土壌、水、大気、生物資源など、自然によって形成される資本(ストック)のことで、自然資本から生み出されるフローを生態系サービスとしてとらえることができます。京都大学大学院経済学研究科谷口正次特任教授の定義によれば、自然資本が存在するのは地球上の「生物圏」「地殻」「大気圏」「海洋」であり、生物圏の森林資源や漁業資源、地殻の鉱物・エネルギー資源、大気圏の空気や太陽光、海洋の海流・潮流など人工物を除くすべての事象とされています。

自然資本の価値を適切に評価し、賢く利用していくことが、企業経営の持続可能性を高めることにつながると考えられます。

■ 自然資本の分類
自然資本 生物圏 生態系、生物多様性(動物・植物・菌類など)、森林、
地表水、土壌、風土・景観、人間(文化・伝統・精神性)
地殻 鉱物、化石燃料、地下水
大気圏 大気、風力、太陽光
海洋 沿岸海域、海底、海流、潮流

谷口特任教授の資料をもとに作成

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企業に求められる自然資本会計

特に自然資本への関心が高いステークホルダーとして、欧米を中心とする機関投資家が挙げられます。投資判断を行う際に事業の持続可能性に着目する投資家が増えており、企業への情報開示に対して強い関心を抱いているといわれています。

そこで当社では、自然資本会計として企業に求められることを以下の4点に整理して検討を進めています。

■ 自然資本会計で企業に求められること
環境影響を物量で評価する
物量とともに金額換算する
サプライチェーンで評価し、環境影響が大きな地域をホットスポットとして示す
企業間の比較が可能になる

現在、企業ではさまざまな環境負荷データを開示していますが、特に自然資本に与える影響が大きい項目として温室効果ガス排出量と水使用量が挙げられます。ただし物量表示だけでは投資家による投資判断が難しいために、これらの環境影響を金額換算してわかりづらさを解消することが求められます。さらに、投資先選定のために企業間の比較が可能になることや、事業の持続可能性を判断するためにサプライチェーンでの環境影響を評価して自然資本に与える影響が大きな地域をホットスポットとして示すとともに改善策を検討することなども求められます。

一方で、自然資本を劣化させない事業経営としては、使用済み製品の回収・リサイクルや工場における水の再生利用などが考えられます。また、太陽光や水力、風力、潮力などを利用した再生可能エネルギーや、海水の淡水化などの水ビジネスは、自然資本に手をつけずに経済活動を進めることができます。

さらに、生物多様性保全活動は直接的な生態系の回復につながります。

これら様々な事業活動による自然資本への影響について、今後も定量化を進めていきます。

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環境会計と自然資本会計の位置づけ

環境会計は、環境保全活動に投じた費用を集計しそこから得られた効果を把握します。東芝グループでは、4つの環境保全効果(経済的実質効果、経済的みなし効果、顧客効果、リスク回避効果)を算出しています。

しかしながら、事業活動にともなう環境負荷をゼロにすることはできません。この最終的に地球環境に与えた環境影響を外部不経済とみなすと、環境会計は「外部不経済の最小化」に向けて各種の環境活動に投じた費用と効果を計測する取り組みであり、一方で、自然資本会計は環境影響を金額換算することで「外部不経済を見える化」する取り組みと位置づけることができます。

東芝グループの自然資本会計の考え方を整理すると以下の図のようになります。この図では、環境活動による環境負荷の削減が自然資本に与える影響の最小化につながることを示しています。今後も環境会計と自然資本会計の2つのツールを活用して、環境経営の高度化を進めます。

■ 環境会計と自然資本会計の位置づけ
「環境会計と自然資本会計の位置づけ」のイメージ

※1
BAU(Business as Usual):環境負荷の成り行き値
※2
この図は便宜的に示したものであり、現実には外部不経済の見える化について一部を環境会計のスキームの中でも実施しています。たとえば、環境会計で算出している効果B(みなし効果)では、化学物質の年間排出量に対して、環境基準などをもとにカドミウム換算した物質ごとの重みづけを行い、カドミウム公害の賠償費用を乗じて金額換算を行っています。窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、浮遊物質量、全窒素、化学的酸素要求量(COD)など、大気・水域・土壌への異なる環境影響を同一基準で比較することを可能にしており、これらを外部不経済として認識しています。このように従来から実施してきた当社独自の環境会計手法を応用するとともに、自然資本会計特有の手法も検討することでさらなる精緻化を進めていきます。

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サプライチェーンを含む統合評価

東芝グループでは2009年度より、サプライチェーンを含むライフサイクル全体の環境影響について日本版被害算定型影響評価手法(LIME:詳細は製品の環境効率とは(ファクター)を参照)を用いた金額換算結果を毎年公表してきました。近年議論されている自然資本会計では自社の事業活動とともにサプライチェーンの上流側も評価することが求められていますが、当社では原材料調達、研究開発・設計、製造、物流・販売、使用、回収・リサイクルといった製品ライフサイクル全体で詳細なデータを蓄積しています。これらを自然資本に与えた負の影響としてとらえています。

一方で、自然資本に正の影響を与える活動や、自然資本を消費せずに行った事業活動の把握も進めています。

2013年度から2015年度の結果を以下に示します。

■ 環境影響の統合評価結果
「環境影響の統合評価結果」のイメージ

(b)対象とした費用
・生物多様性保全活動費用
・自然保護、緑化費用
・環境保全にかかわる寄付金、支援費用
(c)対象とした活動
・各年度に運転開始した再生可能エネルギーの発電量(地熱、水力、風力、太陽光)
※1kWh当たりの電気料金から算出
・水の再使用および再生利用、雨水の活用
※1m3当たりの工業用水単価から算出

2015年度の自然資本への影響金額は前年度より17%減の2,612億円となりました。ライフサイクル別では販売した製品の使用段階の環境影響が最も大きく、続いて資源・原材料となっています。使用段階については、省エネをはじめとする環境性能No.1製品の創出によって使用段階の環境影響を低減することが重要な対策となります。

一方で、自然資本を消費しない事業活動として、納入した再生可能エネルギーの運転開始による発電量、事業所における水の再使用および再生利用や雨水の活用などを金額換算した結果、2015年度は2,414億円であることがわかりました。

さらに、生物多様性保全活動や工場緑化など自然資本に正の影響をもたらす取り組みに投じた費用は7.7億円となりました。これは、例えば埋立地で何も生態系がなかった場所に立地する東芝の工場において、周囲の生態系に配慮した緑地管理をすることによって新たな生態系を生み出した場合などを想定しています。

これらは環境負荷の金額換算や実際に支払った金額などが含まれているために単純比較することはできないのですが、便宜的に比較することで自然資本への影響を相殺・緩和する仕組みを検討しています。

2013年〜2015年の3年間の推移では緩和率が57%、90%、93%となっていることがわかりました。特に水力発電の運転開始による発電量が伸びており、2014年度以降の緩和率が拡大しています。これらの分析はTEEBが求めている自然資本のオフセットにもつながるものと考えています。

今後も事業活動における環境負荷の削減によって自然資本への環境影響を減らすとともに、自然資本に手をつけない(劣化させない)事業活動や、自然資本に正の影響を与える活動を拡大することで緩和率の向上をめざします。

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今後について

「企業に求められる自然資本会計」の条件として整理した4つの項目に対して、現状では自社およびサプライチェーンにおける自然資本への影響について、物量とともにLIMEを使った金額換算による定量評価を試みています。また、主に機関投資家からの要求に応じて、公開情報をもとにした企業間比較の手法なども検討しています(詳細は以下のTOPICSを参照)。

一方で、環境影響の地域性についての分析と情報開示は大きな課題だと認識しています。これらの分析の精緻化を進めるとともに、今後も改善を重ねていきます。

■ 現状の対応状況
自然資本会計で求められること現状
環境影響を物量で評価する
物量とともに金額換算する
ホットスポットを示す ×
企業間の比較が可能になる

まだ自然資本会計の議論は緒に就いたばかりであり、今後さまざまな企業事例が出てくるなかで国際的な議論が深まることが期待されます。

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【TOPICS】自然資本会計の企業間比較に向けて

これまでご紹介してきた自然資本会計の分析は、さまざまな環境影響をLIMEという専門的な手法を使って当社が試算した結果を開示したものでした。しかしながら、この手法では投資家をはじめとするステークホルダーの皆様が企業間比較を行うのは難しいことが予想されます。

そこで、公のデータから企業間比較を行う例を示します。使用する環境影響の物量データは、CDPおよびCDPウォーターで開示されている各社のデータです。そして、換算係数としてEU域内排出量取引制度(EU-ETS)の取引単価と各国の工業用水単価の平均値を使用することで、簡易的に自然資本への影響を試算することができます。

EU-ETSの2012年〜2014年の排出権価格の平均は約6ユーロ/t-CO2でした。また、ユーロと円の為替相場の3年間の平均は約130円のため、130円×6ユーロ=800円/t-CO2をCO2の換算係数とします。

水については、世界各国の工業用水の料金から平均を算出し約30円/m3とします。CDPウォーターはリットル表記のため、0.03円/Lを水の換算係数とします

CDPは過去3年分、CDPウォーターは過去2年分のトレンドを分析することにします。以下の表に東芝グループが登録しているCDP、CDPウォーターのデータを示すとともに、比較対象の企業を仮のデータで示します。

CDPおよびCDPウォーターのデータは各企業が自主的に算出・登録したデータのため、すべて同じ項目のデータが揃っているわけではありません。よって、合計値についても単純に数字の大小を比較することはできませんが、現時点では最も豊富なデータベースであることから、これらのデータを使用します。

今回の目的は自然資本会計上で企業間比較を行うために共通した係数を算出することであり、CO2と水の経済価値に関する蓋然性を求めるものではありません。
■ CDPのデータ(単位:千t-CO2)
  東芝 A社 B社
71,81261,45376,747184,285140,4532006,940117,392614
年度 2012 2013 2014 2012 2013 2014 2012 2013 2014
評価:開示/パフォーマンス98/A100/A100/A99/B98/A85/C92/B97/B85/C
購入6,5807,0007,50015,12115,900    
資本財5707808381,2101,070    
エネルギー関連活動
(スコープ1,2以外)
20016159329410 985203 
輸送(上流)5,0005004681,370892 229540334
事業所から出る廃棄物352729181183 79137 
出張596668332240    
通勤887469431200   
リース資産(上流)         
輸送(下流)9801411628786 294302280
販売した製品の加工   710 697948 
販売した製品の使用58,30052,95067,580163,857119,762  109,430 
販売した製品の廃棄後の処理819287462370 3,7804,540 
リース資産(下流)   319399    
フランチャイズ      178306 
投資      698986 
その他(上流)         
その他(下流)         
■ CDPウォーターのデータ(単位:千ℓ)
  東芝 A社 B社
年度 2013 2014 2013 2014 2013 2014
総取水量40,563,00039,539,00020,081,00028,845,000回答なし7,903,000
総排水量 32,149,000948,1001,103,000  
総水使用量 7,390,000    
リサイクル水総使用量15,369,00014,088,000    

続いて、これらの物量にCO2および水の換算係数を掛けて金額を算出したグラフを以下に示します。

産業の違いや企業の規模によっても自然資本への影響は異なります。単年での数字の大小を比較するよりも、3年間、5年間など中長期の推移を比較することが自然資本会計では重要になると考えています。そのうえで、長期的なトレンドを見て自然資本への影響を低減している企業が評価されるような仕組みになることが望まれます。

■ CO2排出量を金額換算した企業間比較の例
「CO₂排出量を金額換算した企業間比較の例」のイメージ

■ 水使用量を金額換算した企業間比較の例
「水使用量を金額換算した企業間比較の例」のイメージ

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