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 けんさの豆知識[11]


急増するSTD−梅毒−
[2001年6月発行]

STD(性行為感染症:sexually transmitted diseases)は性行為によって感染する全ての病気を意味し、性病(梅毒、淋病、軟性下疳、そけいリンパ肉芽腫)の他にクラミジア、性器ヘルペス、AIDS、ウィルス性肝炎、カンジダ症なども含まれ、最近増加傾向にあるため問題になっています。STDが増加している原因は、第1に性行動の多様化(対象の複数化、同性愛などの増加など)、第2に避妊手段の変化(子宮避妊装置やピルの使用が増えたこと)が挙げられます。今回はこの中から梅毒についてお話します。
■梅毒とは
梅毒は Treponema pallidum (トレポネーマ・パリダム:TP)に感染して起こる病気です。コロンブスが新大陸の発見と共にヨーロッパに持ち帰り、その後爆発的に全世界に広がったといわれています。「梅毒」という名前の由来は第2期(詳しくは症状の欄を参照して下さい)に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれたことからきています。いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡→黴毒→梅毒と変化しました。ペニシリンという特効薬が発見されてからは激減しましたが、最近また若者の間で増加が見られます。
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■感染経路

性交による感染(皮膚、粘膜からの感染)、血液からの感染。母子感染もあります。



■症状
第1期: 3〜4週間の潜伏期を経て感染部に小豆大の痛みのない腫れ物(硬性下疳)ができますが、自然に消えてしまいます。

第2期: 3ヶ月後には、全身に赤い斑点(バラ疹)ができたり、感染部にしこり(丘疹)ができたりします。症状が出たり、一時的に消えたりを繰り返します。感染して5〜6ヶ月後には頭髪が薄くなってくるため、これを隠す目的でヨーロッパでは16世紀頃からカツラが大流行したといわれます。

第3期: 2〜3年を経過すると筋肉、骨、内臓にゴムのような腫瘍(ゴム腫)が見られます。鼻骨が侵され鼻が陥没する事もあります。

第4期: 感染後10年以上経つと、心臓や血管、脳や脊髄が侵されるため痴呆、進行性マヒなどがみられます。大動脈瘤破裂などて死亡する事もあります。

先天性梅毒: 梅毒に感染した母親から胎盤を通じて感染した子供は「先天性梅毒」になります。成長期に現れる特徴は角膜炎、難聴、特有な歯並び(ハッチンソン歯)です。有名な作曲家ベートーベン、シューベルトもそうでした。

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■検査法
梅毒に感染すると由来のまったく異なる2種類の抗体が産生されます。一般的に梅毒の検査は、この2種類の抗体を測定して総合的に判断しています。
1. 脂質抗原に対する抗体→測定する方法にはRPR法、ガラス板法などがありますが、当院ではRPR法を行っております。

2. TPの成分に対する抗体→測定する方法にはTPHA法、FTA−ABS法などがあります。当院ではTPHA法を行い、FTA−ABS法は外注(SRL)で検査しています。

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■結果判定

RPR TPHA 対応
非梅毒
感染直後
陰性 陰性 感染の疑いがあるときは数週間後に再検査
生物学的偽陽性(*)
陽性 陰性 自己抗体(SLE、リウマチなどの有無も確認)
まれに感染初期 陽性 陰性 再検査とFTA−ABS法で確認する
梅毒 陽性 陽性 診断した医師の判断により、症状や所見から梅毒が疑われた場合にのみ判定される
 
梅毒治療後 陽性 陽性
梅毒治療後
感染後長期経過
陰性 陽性

(*)生物学的偽陽性とは

 RPRテストでは試薬抗原として「カルジオリピン」というリン脂質の一種を使用しています。リン脂質は細胞膜、原形質膜、ミトコンドリア膜など広く生物界に分布しており、梅毒以外の疾患でもさまざまな機序で抗リン脂質抗体が産生され、陽性となることがあります。これを「生物学的偽陽性」と呼びます。このような偽陽性を呈する疾患としてSLE、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患や結核、伝染性単核症、ウィルス性肝炎などの感染症があげられ、妊婦にもしばしば見られます
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■治療方法
抗生物質のペニシリンの内服や注射で治療します。ペニシリンのアレルギーのある人には他の種類の抗生物質での治療を行います。

■最後に
感染初期は症状が乏しく、また時によって症状が消えるので受診せずに安易に考えられがちですが、この時期にキチンと治療すれば治る病気です。また医療機関は個人情報を尊重しています。医療機関を信用して早く受診することが大切です。



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