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AI Technology

単眼式拡張現実感表示技術の開発

2011年2月

概要

当社は、現実世界に仮想の情報を重ねて表示する拡張現実感(AR)表示技術として、現実世界と仮想の情報を両方とも両眼で見る従来の両眼方式に代わり、仮想の情報を片眼だけに表示し、現実世界に仮想の情報を自然に重ね、現実世界と仮想の情報どちらも同時に視認可能となる新しい単眼式AR表示技術の開発に成功しました。この技術を車載用ヘッドアップディスプレイ(HUD)に利用した場合、ドライバが車両情報をより安全に視認できる可能性が期待されます。

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開発の背景

近年、ARカメラやヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使い、現実世界の上に仮想の情報を重ねて表示させるARアプリケーションが登場してきています。現実世界の光景を透過させる光学シースルータイプのディスプレイでこのようなアプリケーションを実現しようとすると、現実世界も仮想の情報も両眼で見る方式では、現実世界と仮想の情報を同時に視認することができないという問題がありました。それぞれの奥行き位置が異なるためです。

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単眼奥行き知覚現象

ところが、現実世界は両眼のまま、仮想の情報は単眼のみに表示すると、両眼で知覚される現実世界の奥行き位置に仮想の情報が自動的に重ねられて視認されます。
通常、人間は両眼視差、輻輳、調節などの手掛かりに基づき奥行情報を知覚していますが、単眼式では両眼視差と輻輳からの手掛かりが抑制されるうえ、視距離が十分に遠い場合にはどの対象に対しても同じ調節で見ることになり、このような現象が起こると考えられます。このような単眼奥行き知覚現象を発見し、現実世界と仮想情報の同時視認を実現するAR表示に成功しました。

効果

この技術は、たとえば自動車向けに普及の進んでいるHUDに応用できます。両眼式のHUDではドライバが速度表示などの仮想情報に注目した際に背景をよく視認できず、不安全な状態となることが指摘されていますが、単眼式のHUDであれば両者を同時に視認できるので安全性の向上が期待できます。また、高層ビルの展望台の窓から見える景色の説明を窓ガラスに浮かび上がらせるARアプリケーションも考えられます。両眼式でこのアプリケーションを実現しようとすると、遠方にある山に対して説明表示だけが近くに見えてしまいなど不自然なことも起こりますが、本技術を利用すれば景色と説明が同じ奥行き位置に視認され、自然な表示が可能となります。本技術は、AR機器全般の性能を向上させる応用範囲の広い技術である上、片目にディスプレイからの光を効率良く集光させるため、通常の両眼方式に比べて消費電力を半分以下にすることが可能な環境にやさしい表示技術でもあります。

今後の予定

本技術の有効性、さらには長時間使用しても疲労上問題ないことを検証した結果を2011年1月10日にラスベガスで開催された民生機器関連の国際学会「ICCE2010」で発表しました。今後は、奥行き感や同時視認性が重要になるHUD、AR機器や高臨場感ディスプレイなどへの採用を目指します。


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