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ナノ材料

透過型亜酸化銅(Cu2O)を用いたタンデム型太陽電池の発電効率の向上について
−低コストで高効率なタンデム型太陽電池の実現に向けてSi単体を超える23.8%の発電効率を達成−

2019年06月18日
株式会社東芝

当社は、当社が開発した透過型亜酸化銅(Cu2O)を用いた低コストなタンデム型太陽電池において、現在広く普及している結晶シリコン(Si)太陽電池単体での発電効率を上回る効率の実証に成功しました。今後、蓄電池と組み合わせた自家発電システム、地域毎の分散電源、これらを統合し電力需給バランスを調整するエネルギーアグリゲーションなどの新たなグリーンエネルギー事業への活用が期待できます。
タンデム型太陽電池は、異なる性質の太陽電池(セル)をボトムセルとトップセルとして重ね合わせ、両方のセルで発電することにより、全体としての発電効率を上げます。当社は本年1月に、世界で初めて地球上に豊富に存在する銅の酸化物で低コスト化が期待できる亜酸化銅(Cu2O)を用いたセルの透明化に成功しました。この透過型Cu2O太陽電池をトップセルに用いたタンデム型太陽電池を合わせて開発し、Si単体での発電効率と同等の22%を達成しましたが、今般、効率を1.8%向上させ、Si単体での発電効率を上回る23.8%を達成することに成功しました。
当社は本技術の詳細を、6月16日から21日に米国シカゴで開催される国際会議IEEE PVSC 46にて発表します。

政府が昨年7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画では、太陽光発電が2030年の主力電源の一つに定められましたが、今後、限られた設置面積を有効利用し必要とされる電力を確保するためには、タンデム型太陽電池の必要性が増すと予想されています。
現在タンデム型としてはガリウムヒ素半導体などを用いた太陽電池が製品化されており、市販の結晶Si太陽電池と比べて1.5倍から2倍高い30%台の発電効率が報告されています。一方で、結晶Si単体の太陽電池と比べて製造コストが数百倍〜数千倍と高く、低コスト化が望まれています。

当社が開発した透過型Cu2O太陽電池は短波長光を吸収して発電し、長波長光を約80%透過できます。当社は、Cu2Oの透明化技術を開発することで、現在広く普及している結晶Si太陽電池と組合せて、短波長から長波長まで幅広い波長の光をエネルギーに変換することができる、低コストで高効率なタンデム型太陽電池への道を開きました。

当社は、Cu2Oの透明化に続き、タンデム型太陽電池の発電効率がボトムセル単体の効率よりも高くなるというタンデム型の最大の特徴を実現するために、透過型Cu2O太陽電池の高効率化に取り組みました。本年1月の開発時においては、トップセルが4.4%、ボトムセルが17.6%、全体で22%と、結晶Si単体と同等の効率でした。
透過型Cu2O太陽電池は、下から裏面電極、p層、n層、表面透明電極で構成されており(図1)、p層に採用したCu2O薄膜で短波長光を吸収して、発生したプラスの電流を裏面電極から取出し、マイナスの電流はn層を介して表面透明電極から取り出すことで、光を電気のエネルギーに変換しています。p層とn層の組み合わせによっては、2つの層の界面に生じる電位差(2つの層のエネルギーのズレ)が大きくなるため、ズレの分両方の電極から電気として取り出せる電圧が低下し、効率が低下してしまいます。(図2)
そこで当社は、n層の材料に着目し、従来に代わる新しいn型酸化物半導体材料を適用することで、電位差を小さくすることに成功しました(図3)。当社は、本技術を採用したタンデム型太陽電池において、23.8%の発電効率を達成しました。ボトムセルの結晶Si太陽電池単体の効率22%よりも効率が1.8%高く、タンデム化による効率向上を確認しました。
今後、n層をさらに適正化し、エネルギーの損失を減らすことで、より高い効率が実現できると期待されます。透過型Cu2O太陽電池を用いたタンデム型太陽電池で効率30%台を実現することで、蓄電池と組合せた自家発電システム、地域毎の分散電源、これらを統合し電力需給バランスを調整するエネルギーアグリゲーションなどの新たなグリーンエネルギー事業に大きく役立つと考えられます。さらに将来は、太陽光エネルギーで動く自動車、バス、電車、ドローンなどといった最先端の製品への期待が高まります。

当社は、3年後に透過型Cu2O太陽電池とそれを適用したタンデム型太陽電池の技術完成を目指し、現在の結晶Si太陽電池を大きく越える、効率30%台の実現に向けた研究開発を進めていきます。

図1:開発したタンデム太陽電池の構成概略図

図2:前回の透過型Cu₂O太陽電池における電圧低下の原因

図3:今回のn層開発の説明

図4:透過型Cu₂O太陽電池(小型セル:サイズ25mm角)


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