japan

東芝トップページ > 企業情報 > 研究開発・技術 > 研究開発センター > 研究開発ライブラリ > 次世代パワーエレクトロニクスシステム向け電磁界結合型・高速絶縁ICを開発−複数の信号と電力の絶縁多重伝送をワンパッケージ・低コストで実現、電力機器の小型・軽量化、省エネ化により、情報化社会の進展に貢献−

情報通信プラットフォーム

次世代パワーエレクトロニクスシステム向け電磁界結合型・高速絶縁ICを開発
−複数の信号と電力の絶縁多重伝送をワンパッケージ・低コストで実現、
電力機器の小型・軽量化、省エネ化により、情報化社会の進展に貢献−

2020年02月21日
株式会社東芝

当社は、小型・省エネ・高信頼性の次世代パワーエレクトロニクスシステムを実現する2つの絶縁IC(集積回路)を開発しました。1つ目は、電動モビリティや各種モーターシステムの小型・高信頼化に向けた絶縁IC で、3つの信号の双方向通信と100mW以上の電力伝送を、特別な製造プロセス(注1)を必要としない方法として世界で初めて実現したワンパッケージIC「双方向多重伝送IC」です。2つ目は、高速動作が要求されるデータセンターのサーバ用電源システムなどに搭載可能な「高速絶縁計測IC」です。この2つのICは、低炭素社会の実現に不可欠な高速パワー半導体の普及拡大に貢献します。本技術を搭載した2つの絶縁ICは22年度以降にサンプル提供を目指します。当社は、本技術の詳細を、米国サンフランシスコで開催されるIEEE国際学会「ISSCC 2020」で2月18日(現地時間)に発表しました。

電力の変換や制御に欠かせないパワーエレクトロニクスシステムは、あらゆる電化製品や電動モビリティ、産業機器等に搭載されています。持続可能な社会の実現を目指す上でも、パワーエレクトロニクスシステムの小型・軽量化、省エネ化、信頼性向上は重要な課題となっています。
小型・軽量化は、モビリティの電動化やロボット市場の拡大によって増加するパワーエレクトロニクスシステムなどでニーズが高くなっています。駆動用インバータの小型・軽量化、モータと駆動用インバータの一体化による軽量化が進められています。
省エネ化は、Society5.0やIndustry4.0に代表される情報化社会の進展に伴うデータ処理量の増大により消費電力量の大幅な増加が見込まれるデータセンターなどでニーズが高くなっています。膨大な電力を必要とするデータセンターの消費電力量の約15%を占めるサーバ用電源装置の高効率化のため、パワーエレクトロニクスにGaN(注2)等の高速な新材料半導体を利用する研究が進められています。
信頼性向上は、あらゆる機器や設備において重要度が増すパワーエレクトロニクスシステムやその中で用いられるパワー半導体の突然の故障や停止を避けるために不可欠であり、IoTを活用したセンシングによる解決が望まれています。
IoT機器との連携には、低電圧で動作する制御システムやIoT機器の保護、利用者の安全のため、パワーエレクトロニクスシステムで部分的に生じる高電圧部分の絶縁が不可欠です。従来は低・高電圧間の通信や電力伝送にはフォトカプラ(注3)や外付けトランスが広く用いられてきましたが、小型・軽量化や省エネ化、高信頼化と両立するには、パワーエレクトロニクスシステム用の多数の信号や電力の双方向伝送、広帯域な信号計測が可能で、外付け部品が不要なワンパッケージの電磁界結合型絶縁IC(注4)によるソリューションが必須であり、その市場規模は約1,000億円(注5)にのぼります。

こうしたニーズを満たすため、当社は2つの電磁界結合型絶縁ICを開発しました。

1つ目は、パワー半導体の駆動回路であるゲートドライバ回路を絶縁する「双方向多重伝送IC」です。
従来のゲートドライバ用絶縁回路は多数の信号を送受信するため、信号ごとに1つずつICを並べる必要があり、小型・軽量化が困難でした。そこで無線通信に利用されているFSK(注6)通信方式を絶縁ICとして世界で初めて適用することで信号と電力のトランス(変成器)を共用化し、ICの数を減らすことに成功しました。また隣接するトランスが発する磁界を打ち消す構造にすることでトランス間の距離を最小化し小型化に成功しました。さらに、絶縁間クロック同期回路技術(注7)により、FSK通信には不可欠の高精度な外付け発振素子(注8)なしで動作が可能となりました。
これらにより、3つの信号の双方向通信と100mW以上の電力伝送を、特別な製造プロセスを必要としない方法として世界で初めてワンパッケージICで実現しました。インバータ制御基板に本ICを適用すると、絶縁部分の占有面積を約35%削減することが可能です。

2つ目は、高速動作が要求されるデータセンターのサーバ用電源システムなどに搭載可能な「高速絶縁計測IC」です。
本絶縁計測ICは最大35MHzまでの高圧・高周波電流の計測が可能なため、一例としてGaN等の高速パワー半導体を用いた高効率電源装置の制御用計測に適しています。無線通信に用いられる電源不要なパッシブミキサ(注9)回路を適用することで、従来必要だった体積の大きな外付け絶縁電力伝送回路を省くことができました。また専用のキャリブレーション(校正)回路を開発し伝送精度を高めました。これにより従来の300倍以上高速な計測をワンパッケージICで実現します。また同レベルの高速な計測が可能な従来の方式に比べ、専有面積を約70%削減することが可能です。

当社は、パワーエレクトロニクスを新規成長事業と位置付けており、今後も本技術を適用したICおよびシステムの開発を進め、さまざまな電力システムの高度化に貢献していきます。

図1:次世代パワーエレクトロニクスと開発した絶縁ICの貢献

図2:開発した双方向多重ICの主要技術とチップ写真

図3:開発した絶縁計測ICの主要技術とチップ写真

(注1)特別な製造プロセス
放電により破壊しないための厚膜の絶縁膜を、ICの上層に追加で製造するなど、絶縁ICに特化した製造プロセス。

(注2)GaN
GaN(窒化ガリウム)半導体は、シリコン半導体と比べ電力をオンにした時の抵抗が低く、これまで電力変換器に使われてきたダイオードやトランジスタをGaNに置き換えることで電力の損失低減、トランスの小型化が可能となる。

(注3)フォトカプラ
内部で電気信号を光に変換し再び電気信号へ戻すことによって、絶縁しながら信号を伝達する素子。世界市場1,000億円(当社推計)。

(注4)電磁界結合型絶縁IC
従来の光に代わり、磁界や電界の結合で伝送する方式の絶縁IC。

(注5)電磁界結合型絶縁ICの世界市場規模、当社推計。

(注6)FSK
Frequency shift keyingの略。周波数シフト変調方式。

(注7)絶縁間クロック同期回路技術
信号送信側から送られた信号を元に受信側回路がクロック信号を再生する技術。これにより温度変動などICの動作環境が変化しても常に送受信間が同期でき、誤りのない通信を実現する。

(注8)発振素子
一定の周波数の信号を出力するための素子。一般的にはセラミック振動子と水晶振動子が使われる。

(注9)パッシブミキサ
被計測信号を、クロック信号のみで高周波に変換して絶縁伝送を可能にする回路。


  • 「研究開発センター」のトップへ
  • このページのトップへ