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2020年08月07日
株式会社 東芝
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
東北大学病院

世界で初めて量子暗号通信技術を適用したゲノム医療向けシステムを構築・実証
−ゲノム解析情報データのリアルタイム伝送とオンライン会議のデータ伝送に量子暗号通信技術を適用−

株式会社東芝(以下、東芝)、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)および東北大学病院は、ゲノム医療の一つであるクリニカルシークエンス向けに量子暗号通信技術を適用したシステムを構築しました。さらに、構築したシステムを用い、がん患者のゲノム解析情報(エクソームシークエンス)(注1)と、医師等の専門家がゲノム解析データを参照しながら議論するオンライン会議の情報の2種類のデータを量子暗号通信技術によって安全に伝送できることを実証しました(図1)。ゲノム医療分野における量子暗号通信技術を用いたシステムの構築・実証は世界で初めてとなります(注2)

クリニカルシークエンスは、遺伝子の配列を超高速に読み出す次世代シークエンサーを用いて解析した患者のゲノムデータを検証し、その結果を医師等の専門家が、疾患の診断や治療方針の選択の補助として利用するゲノム医療分野の新たな検査方法です。今回の成果は、量子暗号通信技術のゲノム医療への適用ならびに、安全・安心なゲノム医療の確立に貢献します。

本研究の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:量子科学技術研究開発機構)によって実施されました。東芝、ToMMoおよび東北大学病院は、本成果の技術と実証内容の詳細を、8月10日〜14日に開催される国際会議QCrypt 2020(10th International Conference on Quantum Cryptography)で発表します。

図1:開発したシステムと適用実証の概略図

詳細

東芝およびToMMoは、2019年7月〜8月に量子暗号通信を用いて全ゲノム配列データを伝送することに、世界で初めて成功しました(2020年1月公表)(注3)。それに続き、東芝、ToMMoおよび東北大学病院は、がん患者に対するクリニカルシークエンス(がんクリニカルシークエンス)を対象に、将来のゲノム医療において秘匿とすべきデータの種類と、データの暗号化に量子暗号通信技術を用いる方法を検討してきました。クリニカルシークエンスでは、個人の特徴と密接に結びつく情報であるゲノム解析情報データ、および、患者の遺伝情報や診断結果など秘匿性の高い情報を扱う医師等の専門家によるオンライン会議の情報の双方に高度なセキュリティが求められます。東芝、ToMMoおよび東北大学病院は検討結果を踏まえて、次の2つを量子暗号通信技術によって暗号化する実証に取り組みました。
(1)ゲノム解析情報データ(エクソームシークエンスデータ)のリアルタイム伝送
(2)専門家のオンライン会議の会議データ(参照する解析結果データおよび会議データ音声映像データ)の伝送

(1)の実現方法は次の通りです。
東芝とToMMoが、2020年1月に公表した、ゲノム解析情報データのリアルタイム伝送システムを利用しました。具体的には、量子暗号装置が出力する暗号鍵を用い、暗号技術ワンタイムパッド方式(注4)によってゲノム解析情報データを逐次暗号化して伝送しました。本システムは、操作画面上のメニューから解析が必要な検体の番号や伝送方法等を選択するだけで簡単にゲノム解析情報データを伝送することが可能です(図2)。

図2:開発したGUI画面例

(2)の実現方法は次の通りです。
専門家のオンライン会議向けに、ゲノム解析結果の情報を参照しながら映像と音声の双方向のやりとりができるオンライン会議システムを構築して、量子暗号によって生成される暗号鍵を蓄積・管理する鍵管理サーバと連携させることで実現しました。同一拠点のオンライン会議システムからデータを鍵管理サーバが受信すると、ワンタイムパッド方式でデータを暗号化して他拠点の鍵管理サーバへ送信する機能を開発しました。さらに、鍵管理サーバには、他拠点の鍵管理サーバから暗号化されたデータを受信すると、蓄積した暗号鍵を用いてワンタイムパッド方式で復号化し、同一拠点のオンライン会議システムに送信する機能もあります。

これらのシステムを用い、(1)東北大学病院が保有する96検体分のゲノム解析情報データ(エクソームシークエンスデータ)のリアルタイム伝送、ならびに、(2)医師および医療専門家が参加する延べ65分間の模擬オンライン会議、の評価・検証を行いました(図3)。その結果、ゲノム解析データのような大規模データの伝送にも、会議データのような応答性の要求されるデータの伝送にも、量子暗号通信技術が適用できることを確認しました。映像のリアルタイムな伝送は、今後の遠隔医療等に適用することも期待できます。

図3:会議システムの概略と模擬オンライン会議の様子

実証の概要

実証拠点: 東芝ライフサイエンス解析センター(仙台市青葉区南吉成)
東北大学星陵キャンパス東北メディカル・メガバンク棟(仙台市青葉区星陵町)
東北大学病院 (仙台市青葉区星陵町)
実験期間: 2020年1月〜2020年7月
伝送情報: 96検体分のエクソームシークエンスデータ(約3.1テラバイト)、模擬オンライン会議データ(約1.4ギガバイト)
模擬オンライン会議参加者: 延べ10名

東芝は今後も、医療・金融・通信インフラ等の多様なアプリケーションでの量子暗号技術の実用化を目指した取り組みを進めていきます。ToMMoと東北大学病院は協力して引き続き、ゲノム情報に基づいた未来型医療の実現に向け、安全・安心なICT技術の活用を推進していきます。

(注1)エクソームシークエンス
ヒトの全ゲノム配列を網羅的に解析する全ゲノムシークエンス。全ゲノム上の既存のSNPを網羅的に解析するSNPアレイに対し、エクソームシークエンスはエクソン領域(ゲノムの中でタンパク質をコードする領域)のみを限定して解析することにより、効率的にエクソン上の変異 (SNV (SNP)/挿入欠失) を検出する手法。

(注2)2020年7月東芝調べ

(注3)2020年1月14日に公表した「量子暗号通信技術を用いた全ゲノム配列データの伝送を世界で初めて実証」について https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/2001_01.htm

(注4)ワンタイムパッド方式
平文と同じ長さの暗号鍵を使い捨てて利用する共通鍵暗号方式。


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