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インタビュー

超伝導フィルタ 研究開発センター 機能材料ラボラトリー 加屋野 博幸(かやの ひろゆき):超伝導フィルタは、優れたカットオフ特性を持つフィルタです。送信機の送信フィルタなど、比較的大きな電流が流れる装置でも利用できる超伝導フィルタを開発し、第45回市村産業賞貢献賞を受賞した加屋野さんに、お話を伺いました。

Q1. 超伝導フィルタとは

−超伝導フィルタとは何ですか。

超伝導材料でできた(バンドパス)フィルタです。目的の周波数範囲外の電波の漏れが少なく切れの良い、急峻なカットオフ特性を持っています。電波の漏れが少ないので、隣り合う通信チャンネルの間隔を詰めて、限られた周波数帯域を有効に活用することができます。ただし、超伝導フィルタは大きな電流を流す装置には向きません。超伝導材料に限界を超えて大きな電流を流すと、超伝導状態が維持できなくなってしまうからです。

−超伝導フィルタを利用するには不向きな、大きな電流を流す装置には、どのようなものがありますか。

たとえば、送信機の送信フィルタには受信機の受信フィルタより3桁大きい電流が流れます。従来の超伝導フィルタは、受信フィルタには利用されていましたが、送信フィルタには利用されていませんでした。

−加屋野さんは、送信フィルタにも利用できる超伝導フィルタを開発したそうですね。

超伝導フィルタと、従来から送信フィルタに使われている空洞共振器フィルタを合わせた、ハイブリッド・フィルタを開発しました。特性の異なる二つのフィルタの組み合わせです。電流値の大きい中心周波数近辺では空洞共振器フィルタを利用し、電流値がそれほど大きくない中心周波数から離れた部分では超伝導フィルタを利用し、電波の不要な周波数成分をカットします。

Q2. 研究開発の経緯

−いつごろから超伝導フィルタの研究を始めたのですか。

超伝導材料をフィルタに利用する研究を、業務とは別に自分の好きな研究ができるアンダー・ザ・テーブル制度を利用して始めたのが、1998年でした。ハイブリッド・フィルタのアイデア自体は2006年頃、事業部門の方と話していてひらめいたものです。数学的には、周波数帯域を分けた二つのフィルタを組み合わせて一つのフィルタを作れることはわかっていました。しかし、その設計方法が世の中にはまだありませんでした。2006年から2009年までの3年間で設計方法を開発し、試作評価用送信フィルタを作りました。

Q3. 超伝導フィルタの今後

−今後どのように研究を進めていく予定ですか。

超伝導フィルタの高機能化を進める予定です。高機能の方向性としては、ハイパワー(大電力)、高感度、チューナブル(周波数可変)です。超伝導フィルタはその超伝導状態を維持するために電流値をあまり大きくできないという宿命がありますが、その制約条件下でもできるだけハイパワーを実現したいと思います。レーダほど大きな電力は使わない無線機器の送信部に、超伝導フィルタだけで構成する小型送信フィルタを入れることを目指しています。それから、現在の超伝導フィルタは、いちど設計した周波数特性を変更することはできません。周波数特性の異なるフィルタが必要なときに別の超伝導フィルタを用意しなくてもすむように、周波数特性を変更できる超伝導フィルタも実現したいと考えています。

−最後に、加屋野さんの研究にかける想いをお聞かせください。

送信機用の超伝導フィルタがものになる時代がいつか来る、とは思っていましたが、世の中にあったロードマップよりもはるかに早く実現しました。熱意を持って人を説得し、そして活かす、タイミングも重要ですね。事業部門とタイミングよく連携しなければ製品化はおぼつきません。私は、様々な要素技術を集めてシステムを作り上げるシステム屋です。超伝導フィルタも、デバイス屋さん、材料屋さんの協力を得て、私はシステム屋として作りました。すべての要素技術がそろっているわけではありませんので、誰もやる人がいない部分はシステム屋みずから何とかすればよいのです。研究開発センターには、上手に仕上げればものになる技術がまだまだたくさんあります。今後も研究開発センターの優れた要素技術をシステムに仕上げ、事業部門と連携して製品化を目指したいと思います


●送信機


●超伝導受信フィルタユニットと高温超伝導薄膜


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