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研究者紹介 バックナンバー2015

第一線で活躍している研究者と研究をご紹介

“独自の方法で実現化を目指す” 量子コンピュータ 後藤 隼人 フロンティアリサーチ部門  2003年入社 物理学専攻

研究の内容:物質の量子力学的な状態を光でコントロール

入社以来ずっと量子コンピュータの研究をしています。普通のコンピュータは情報を0と1を並べたもので表しますが、量子コンピュータはそこから違っています。量子力学では0と1の『重ね合わせの状態』があると知られています。『重ね合わせの状態』とは、ちょっと日常生活では想像できないようなものですね。たとえ話で説明すると、箱に入れられた猫が生きているのか死んでいるのか、どちらの状態かが原理的に決まっておらず、生と死が重なり合ってどっち付かずになっているような状況です。箱を開けて観測すると、ある確率で生きていたり死んでいたり、状態が確定します。微視的な原子の世界ではこのような不思議な状態が、原理的にあり得るのです。この『重ね合わせの状態』、0と1の状態が重なり合った状態を利用したコンピュータが、量子コンピュータです。『重ね合わせの状態』を使えば、たとえば、宇宙にある全ての原子の数のような、もの凄く大きな数の状態を、重ね合わせの状態として同時に作り込む事が出来てしまうんです。これを利用することでもの凄い回数の計算を同時に出来るようになり、いままで不可能だった超高速の計算が可能になります。
量子コンピュータ実現へ向けた研究素材は、東芝独自のもので、EIT(Electromagnetically Induced Transparency)という光の現象をベースにしています。これは量子力学を使って初めて説明できるような光の現象ですが、私の上司が世界で初めて、固体中でこの現象を実現しました。その時使われた結晶が、量子コンピュータに適した材料であると見込んで研究を続けています。具体的には、結晶中にドープされたイオンの核スピンの状態をレーザー照射によって操作することで『重ね合わせの状態』にして、それを量子ビットというものにして計算をしようという独自のアプローチをとっています。

後藤隼人の写真

会社について:在職中の研究で博士号を取得

研究テーマと上司は入社した時から変っていませんが、入社した時は別の部門に所属していました。入社2年目にフロンティアリサーチ部門という組織が研究開発センター内に発足して、先端研究のテーマを所内で募集しました。我々の研究テーマが採用されて、上司と共に移籍してきました。研究は少人数で進めているのですが、自由度はかなり高いと思います。学会や論文での発表も活発に行っていますし、入社後の研究成果をまとめて博士号を取得することができました。研究の内容については、上下関係をあまり気にしないで、研究者同士として言いたい事を積極的に議論し合える職場です。私も、入社当初から10歳以上年上の上司と遠慮なく議論していました。
*下段コラム「フロンティアリサーチ部門とは」を参照のこと

後藤隼人の写真 後藤隼人の写真

毎日の生活:プラス思考で基礎研究の長き道を行く

私には、いまの研究が合っているので続いているのだと思います。研究より開発の方が好きな人もいるでしょうし、時間がかかってなかなか物にならない研究や、製品化までの道筋が簡単には見えない研究をするのが苦痛になる人も、多いかなと思いますが。私はもともと物理学専攻ですし、基礎研究が好きで、基礎研究段階での新しい発見があれば、充分喜びを感じられます。基礎研究は、熱意がないと続かないですね。いま頑張ってやっていることが予想通りに上手くいけば、大きな成果になるに違いない。将来の喜びや達成感が大きいと思えれば、そのために頑張れるというのはあるかなと思います。
最初の写真では、レーザーの危険がないことを十分確認の上、研究者の 顔がわかるように保護めがねを一時的に外しています。

後藤隼人の写真

学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『自分の考えで行動し、その重要性を人に伝えられるようにしましょう』

社会に出たら自分で考えて自分で行動し、それを人に説明できることが求められます。学生の時から、自分がやっている研究の必要性とか重要性を、自分の言葉で人に説明できるように考えておくと、将来の為にも役に立つと思います。

フロンティアリサーチ部門とは?

ナノスピンエレクトロニクス 永澤鶴美さん
フロンティアリサーチ部門の写真

フロンティアリサーチ部門で取り組んでいる研究テーマは、すぐに事業化できなくとも将来的に世の中を大きく変える可能性のある、革新的な基礎研究です。
私は、前に関わっていた研究が一段落した後、声をかけられて、途中からこちらの部門に移ってきたのですが、他の部門とはちょっと雰囲気が違うなと思っています。分野の違う様々な研究者が、一緒に仕事をしている点は独特です。一日中、机に向かって仕事をしている人やPCをずっと使っている人もいれば、私のようにずっとクリーンルームに入っている人もいます。仕事に集中しやすい環境だということなんでしょうけれど、後藤さんがノートにむかって黙々と数式を書いているところなんかを見ると、すごい集中力だなと思います。研究分野だけでなく研究者の年齢も様々で、新人もいればベテラン研究者もいます。普段はそれぞれスペシャリストとして自分の研究に集中しているけれど、周囲には対等な立場で議論できる仲間がいて、必要に応じて相談できる。先端研究にじっくり取り組める職場だと思います。