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研究者紹介 バックナンバー2015

第一線で活躍している研究者と研究をご紹介

“クラウドサービスを安全、便利で快適に” 情報セキュリティ技術 林 良太郎 / コンピュータアーキテクチャ・セキュリティ部門 2007年入社 数理・計算科学専攻

研究の内容:手間をかけずに安全を確保する技術

私は再暗号化技術を研究しています。この技術は、最近急速に普及しているクラウドサービスを使って、大勢の人と安全にデータを共有するときに役に立ちます。クラウドサービスの一つであるデータセンターは、大量のデータを保存したり共有する時に使われています。個人や各企業でデータを管理するよりは、データセンターに置いて管理をまかせる方が、管理コストが安くハードウェアトラブルに対しても堅牢です。このデータセンターに、他人に読まれたくないデータを保存するときは、暗号化して保存する方法が考えられます。私の鍵で暗号化したデータは、私の鍵がなければ復号できないので、安全性が高まります。では、私の鍵で暗号化したデータの一部を、特定の人にだけ読ませたいときにどうするか。まずデータを取り出し、私の鍵で復号して、次に渡したい人の持っている鍵で暗号をかけてから渡します。データを読みたい人がたくさんいたら、毎回復号して暗号をかける手間が発生します。これは、安全性を高めるために利便性を損ねる、よくない例です。そういうときに再暗号化技術が役立ちます。ある人向けに暗号化されたデータを、別の人向けの暗号に直接変換(再暗号化)する、これが再暗号化技術です。再暗号化する際に、いったん復号する手間が不要になります。再暗号化するときにデータの中身が漏れないので、データセンターに置いたままで変換できます。中身が漏れないことは数学的に保証されています。
再暗号化の作業をデータセンターで行うので、誰々に配りたいという許可を与えるだけで、簡単かつ安全に暗号化されたデータを他人に配布することができます。許可された人は自分でダウンロードして自分自身の鍵でデータの中身を見ることができます。データセンターなど、ファイル共有サービスの利便性は、いろいろな人がインターネットを介して自由にファイルを読めることにあります。この利便性を損なわずに、なおかつ安全性を担保したまま、特定の人が読めるように変換できるのです。この再暗号化技術は、当社が運営する個人向けのオンラインストレージサービス「デジタル貸金庫(別ウィンドウで開きます)で利用されています。

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再暗号化技術のフロー図

会社について:さまざまに展開できる技術の応用先

東芝なら社会インフラやストレージそして医療など、いろいろな所にセキュリティの応用先があります。入社して良かったと思うのはそこですね。理論の研究だけなら大学で良かったのですが、実際に使われるところで研究をつづけられるのは嬉しいことです。セキュリティには理論から実装、基礎から応用とさまざまなレイヤーがあります。私の所属している部門はそれらを幅広くカバーして研究している点が魅力だと思います。一段上から今までの研究を見られますし、もうすこし広いところから見渡すことができます。
大学と違って、会社は人間相手に研究するところです。理論の世界では、自分の作った方式の安全性を自分が作ったモデルの上で証明して、同じ分野の研究者に対して凄いと認めてもらいます。相手がお客様や企業人となると、理論の研究者とは感じかたが違いますし、何が一番重要という優先度も違います。相手によって、凄さを評価するパラメータが違うと思います。セキュリティは、人間的な要素を入れると途端に難しくなりますが、やりがいを感じます。

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毎日の生活:アイデアの浮かび上がる瞬間を捉える

職場は比較的静かだと言われますが、がやがやしていないというだけで、雑談も多く一体感はあると思います。まわりの皆はキーボードをたたいていますが、私は机にむかって腕を組んで考えていることが多いと思います。理論研究の時は、裏紙に思いついたことを書いて思考を進めます。書いて迷路をたどってみて、だめだったら引き返してくる、ということを繰り返します。アイデアが出るかと思ったら引っ込んだりします。紙に書いていて「ああ、こういうことか」と自分で納得できたときは、ペンをポーンと置いて立ち上がって歩き始めたりすることもあります。隣の席の後輩に、林さんが何か思いついた瞬間は判ると言われたことがあります。プログラミングをしている人はそういう動きはしないようですね。
仕事と私生活の切り替えははっきりしている方だと思います。できるだけ毎日、決まった時間に家族と夕食を食べるようにしています。職場の人もわかってくれていて、たまに遅くまで仕事をしていると、今日はどうしたのと聞かれます。休日は掃除とか。夏はプランターで野菜づくりにはまっていました。バジルやトマトを作って料理にも使いましたよ。

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学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『企業の面接って“お見合い”だと思います。』

就職活動は、企業と自分の、入社して欲しい、入社したいという思いが一致するから成立するのであって、「採ってくれるなら入ります」という受け身の姿勢だと後で後悔するように思います。面接の時は相手からの質問に答えるだけでなく、自分だって選んでいるという認識が大事です。そうすれば緊張もしないと思いますよ。