Japan

研究開発センター

学生の皆様へ

研究者紹介 バックナンバー2016

第一線で活躍している研究者と研究をご紹介

“磁気効果メモリで低消費電力化を目指す” キャッシュメモリ向けSTT-MRAM 池上 一隆 LSI基盤技術部門 2006年入社 物質系専攻 *STT-MRAM:Spin Transfer Torque - Magnetoresistive Random Access Memory

研究の内容:新しいデバイスをロジックLSIに混載

プロセッサの消費電力を大幅に低減することを目的として、MRAMを利用したキャッシュメモリの開発に取り組んでいます。既存のプロセッサには、トランジスタだけで構成されたSRAMと呼ばれるメモリが使われています。SRAMはデータを保持するためにずっと電気を流していなければなりません。それに対し、MRAMは磁化を利用するので、データの保持にエネルギーを必要としません。従来のMRAMは書き込みエネルギーが大きくSRAMを置き換えることは難しかったのですが、近年、垂直磁化方式のスピン注入効果(Spin Transfer Torque)を利用したSTT-MRAMの開発が進んで書き込みエネルギーが大幅に削減され、キャッシュメモリへの応用が視野に入ってきました。
STT-MRAMは、トランジスタとmagnetic tunneling junction (MTJ)と呼ばれる素子で構成されています。キャッシュメモリとしてSTT-MRAMを利用するためには、最先端のロジックトランジスタと低エネルギーのMTJ素子を混載し、一体で動かす必要があります。ただし、最先端のトランジスタとMTJの製造プロセスの親和性が高いとは限りません。両方の優れた特性を引き出してインテグレーションするためのプロセス開発を進めています。

池上 一隆の写真

キャッシュメモリ向けSTT-MRAMの図

会社について:面接してくれた社員の本質を見抜く力に感服

大学時代は、物性の測定が研究テーマでした。ある物質に超短パルスのレーザー光を当てると、その物質の相が変化して物質の格子構造が変化します。このような物質のフェムト秒オーダーの超高速の時間発展を測定する基礎研究です。就職活動の際は、物理の素養を生かすことを重視しました。その意味で、半導体は面白いテーマで、半導体を扱う企業の中でも東芝は技術開発が活発だったので、そこで働けたら楽しいだろうと思っていました。実際に面接してくれた研究開発センターの社員の印象も、他の企業の面接官とはずいぶん違っていました。ごく短い時間で説明した私の研究を即座に理解して、鋭く的を射た質問を投げかけてくれたのです。「こんなに優秀な人が東芝にはいるのか」と思い、一緒に仕事ができればいいなと志望度が一気に高まりました。研究開発センターには、様々なエクセレンスを持った研究者がいますね。

池上 一隆の写真

毎日の生活:勤務時間の6〜7割はクリーンルーム

プロセス開発は、時間がかかります。ですから、開発のフェイズにもよりますが、勤務時間の6〜7割はクリーンルームに入っています。インテグレーションのプロセスは、現場でチェックして即フィードバックをかけて修正、の繰り返しです。クリーンルームにこもってプロセスを回し、最後に完成したウエハを測定する段階で測定室に行き、解析は居室のデスクで行うという流れです。プロセスを研究している仲間はだいたい同じ感じで、朝ちょっと居室で挨拶したら、後はクリーンルームの中ですね。プロセスはノウハウの塊みたいな所があって、そのノウハウを皆でシェアして研究するので、お互いにそのやり取りはかなりしています。
 研究や実験のアイデアは、会社の中だけでなく休日に映画館の中にいるときに浮かんできたりします。なぜか予告編のタイミングでよく出てきます。あとでもっと考えよう、詰めたほうがいいと思ったら、メモすることも多いですね。メモは紙派です。絵や図が描けるので、スマホよりも紙の方が便利です。メモしたアイデアは休日明けにさっそく試したり、筋が良さそうであれば特許化を検討したりします、特許化を狙う場合は、部署内の様々な専門家に相談して、ブラッシュアップします。また、知財部と連携し、より有効な権利とするための検討を行います。

池上 一隆の写真池上 一隆の写真

学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『企業の研究者は“オープンマインド”であるべきだと思います。』

深く探ることは一番大事だし、それで技術は進んでいくのですが、技術の横展開によって世の中に新しい価値を届けられるチャンスもあります。技術の深さ追求一辺倒だと、視野が狭くなりがちです。思わぬところにチャンスがあるという考え方で、意識的に視野を広く持つ機会を作ったらいいと思います。様々な可能性に、オープンマインドであることが重要です。