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研究者紹介 バックナンバー2016

第一線で活躍している研究者と研究をご紹介

“有害物質の含有量を正確に捉える” 分析評価技術 盛本 さやか 機能材料部門 2008年入社 工業化学専攻

研究の内容:六価クロムの定量分析法の確立

環境問題の意識の高まりとともに、電気・電子製品にも環境に配慮した製品づくりが求められています。EUのRoHS指令では、カドミウム、鉛、水銀など特定6物質の製品への使用が厳しく制限されています。この規制物質の中でも分析が難しい六価クロムの定量分析方法を開発しました。水銀や鉛は元素で規制されているので、分析としてはそれほど難しくありません。しかし、六価クロムの分析には、価数を区別しなければならないという難しさがあります。六価クロムは毒性が高いのですが、たとえば三価クロムは人の必須元素のひとつです。クロムは価数によって毒性が異なるのです。
現在は、まず蛍光X線分析で試料にクロムが含まれているかどうかを調べます。蛍光X線検査では元素しかわからないので、クロムが含まれている場合は精密分析に進みます。精密分析には、規格化された一般的な分析手法があります。試料の成分を熱水で抽出して、六価クロムと反応して色がつく試薬を入れて、色がつくかどうかを見る方法です。しかし、この方法では六価クロムを100%抽出することはできないので、完全な定量分析とは言えません。そこで、各社がさまざまな分析手法を提案しているところです。六価クロムの抽出に熱水ではなく酸やアルカリを使うと、酸化還元反応がおきて価数が変化してしまいます。いかに価数変化させずに六価クロムを抽出するか、難しいところです。

盛本 さやかの写真

環境分析(六価クロムの価数別分析技術)の図

毎日の生活:普段は実験室、そして実験施設への出張

現在一般的な熱水による六価クロム抽出法では抽出率が低く、六価クロムの含有量が正確にはわかりません。それに代わる方法として、水酸化リチウム水溶液で六価クロムを抽出する方法を開発しました。この方法は抽出率が高く、高精度な分析が可能です。また、この手法の妥当性を検証するために、非破壊で分析可能なX線吸収微細構造(XAFS)分析を用いた六価クロムの定量分析手法も合わせて開発しました。このような先端的な分析手法も利用して、抽出条件の最適化を行うことができました。精度よく分析可能な抽出手法が開発できたので、生産現場でもこの新しい手法を利用できるようになりました。
XAFS測定は、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8に出張して行っています。SPring-8は、新横浜から新幹線で兵庫県の相生まで行き、さらにバスで40分ほど行った山の中にあります。移動だけで半日かかるところです。宿泊施設も敷地内にあり、月に1度のペースで通って測定しています。

盛本 さやかの写真盛本 さやかの写真

会社について:「何に役立っているか」の手応えを感じる

学生の頃は、サンプルを酸で溶かして組成を測るとか、海水中の微量成分を測るなど、どちらかといえば化学分析に取り組んでいました。大学の先生と以前の上司とがJISの委員同士で、東芝で研究者を探していると教えてもらい、入社することになりました。研究室の就職先としては分析専門の会社に進む人も多いのですが、何も分からず試料を渡されて、分析して戻す、という繰り返しでは、それが何に役立っているのかわかりません。就職するにあたっては、分析を基盤としてさまざまな開発に携われる方が楽しいと思って東芝を選びました。
分析の基準となる手法を開発するだけでなく、各工場の分析部門から分析が上手くいかないと連絡を受け、一緒に考えながら分析手法を探していくという仕事もあります。最近は、電池などの材料・デバイス分析に関連した仕事が多いですね。SCiB™の量産化に対応した材料の安定性や不純物の調査分析など、急ぎの依頼も多いですが、手応えを感じています。

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学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『何があってもへこたれないでいきましょう。』

怒られるのは誰でも嫌だと思いますが、怒られたことに対して真摯に受けとめる心は必要だと思います。もちろん自分の意思を持つことは重要ですが、それだけだと視野が狭くなります。先輩や同僚が言ってくれた言葉を真摯に受けとめて、そこから自分でいい方法や進め方を見つけていく。研究する上で、皆の意見を受けとめていくことがすごく重要だと思います。あと、社会人としてはコミュニケーションも大切ですね。飲み会とかに誘われたら積極的に参加すること。堅苦しいなと思っても、まずは行ってみるのも必要だと思います。