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ユビキタス・コンピューティングの明日を創造する 分散ハッシュテーブル 土井裕介 ネットワークシステム部門 2000年入社 政策・メディア専攻

RECRUIT 2010 Innovators研究者紹介

研究の内容:世界中の情報を扱う“土台”に

分散ハッシュテーブルと呼ばれる技術を用いた大規模インデックス処理の研究をしています。ごく簡単に言うと巨大な電話帳を作る技術です。我々は電子タグなどにそれを使おうとしています。電子タグには1つひとつにIDが付けられています。IDを読んで、その製品の名前や色、素材、価格などの付随情報を知るためには、IDと付随情報を格納したデータベースが必要です。一つのデータベースで全てのデータを管理するのが一番単純なシステムの形ですが、データが増えると一元管理は難しくなります。巨大なデータベースを、電子タグを利用する生産者や流通業者それぞれに置くのは、コスト的にも規模拡張性からも無理がある。そこでデータベースを分散させ、分散ハッシュテーブルを応用して、電子タグのIDと、付随情報の格納されているデータベースの位置とを対応させるテーブルを作り、管理していくわけです。
複数のコンピュータをつなげて共同で仕事をさせる場合、コンピュータを増やした分だけ倍々の能力で仕事ができるかというとそうじゃない。仕事をどう割り振るか工夫する必要があります。分散ハッシュテーブルを使えば、仮に10台のコンピュータで達成していた仕事が1だとすると、100台に増やすと10にはならないけどまあ8ぐらいにはなります。さらに1000台に増やすと8の二乗で64倍、1万台だと8の三乗で512倍となっていく。規模拡張性が高いんですね。現在、社会インフラシステム全般において、処理しなくてはならない情報量が加速度的に増大しているのは周知のとおり。それに対応する上で、計算機の速度向上だけでまかなえない部分や、通信の集中を避けなくてはいけない部分について、この研究は有効に作用すると考えています。
私がこの研究をやっているのは、「ユビキタス・コンピューティングにより人間の生活をもっと便利にする」という夢を実現したいからです。コンピュータが世の中のありとあらゆるものに入ったとしても、それぞれが全く関連せずバラバラに存在するんだったら意味がない。例えば、あるビルでケーキを買い、そのケーキが気温30℃の場所に3時間以上放置したら傷んでしまう場合に、忘れそうになったらビルが何らかの形で教えてくれるといったように、それぞれのコンピュータを相互に作用させることで新しい価値が生まれるわけです。こうしたことを実現するには、世界中のあらゆる情報を扱える、いわば「土台」のようなものが必要になります。分散ハッシュテーブルが、土台の1つになり得るんじゃないかと考えているのです。

会社について:多様なフィールドに展開できるのが魅力

中学生の頃にパソコン通信が流行し、親にねだって環境を整えてもらってから、この通信・ネットワークの世界にどっぷり。92年頃、知り合いに初めてインターネットの世界を覗かせてもらった時には興奮しましたね。で、大学に入ってそのどっぷりがさらに深まり、現在に至るというわけです(笑)。とはいえ就職先を選ぶ際には、もう少し事業部的なことをやるとか、あるいは当時もてはやされていたコンサルティング会社へ行くことなども考えました。結果的に研究職を選んだのは....やはり単純に研究が面白かったんですね。その中で東芝を選んだのは、何より事業フィールドの大きさに惹かれたから。私達が作っているネットワーク技術というのは、単体では何もできないんです。その上で「踊ってくれる」人がいないと役に立たない。そうなると踊ってもらえるステージがたくさんある会社がいいんじゃないかと思ったわけです。
実際、入社してみると期待どおりでした。一つの研究の着目点があった時に、数多くのフィールドがあるので、例えば交通ならどうか、原子力ならどうか、システムインテグレーションならどうか、といろいろな活用先が考えられる。多様な事業部門を動かすことはとても大変だと実感していますが、数多くのフィールドで自分の能力を展開し伸ばしていくことが可能です。

毎日の生活:情報収集で実りある議論を

研究で難しいのは、一つは「どう使うか」ということ。この技術があるとこういうことができます、という世界像は示せるのですが、ではそこからどのように実際にビジネスに適用していくかについては、研究者だけでは考えきれない。事業部の人や、社外の有識者の方など、いろいろな人と議論していかなくてはなりません。また、この領域の研究はここ数年、猛烈なスピードで研究が進んでいます。そうした動き、特に米国での研究のスピードにキャッチアップしていくだけでも大変です。情報収集は重要ですね。普段から、社外の研究者のコミュニティに参加して活発に議論を行っているのですが、議論を実りあるものにするためにも日々勉強が欠かせません。
私の根底にはやはり「プログラミングによりいろいろなモノを動かすのは面白い」という思いが強くあります。今後、ユビキタス・コンピューティングの世界がどんどん広がっていくと思います。人間のいわば「わがまま」をプログラムとして記述し、街の中、生活の中に実現していく。そんな研究をこれからも続けていきたいですね。

土井裕介の写真 土井裕介の写真 土井裕介の写真 土井裕介の写真

学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『自分の「軸」といえるものを身につけて』

まず自分で問題を見つけて、先回りして解決策を考えられる力を求めたいですね。事業部の人たちが抱えている問題を解決することも大切ですが、それ以上に、新しい提案ができないと我々の存在価値はありません。また、問題を発見する過程で、事業など実フィールドから謙虚に学べることも大事です。研究所でやっている研究というのは、世の中の広さと比べると本当に小さなものなんですね。世の中は新しくないことで満ちているわけで、研究している新しいこととの階段をどうつなげていくかがポイントになる。そういう意味で実フィールドから学ぶことはたくさんあります。
研究の仕事を続けていく上では、何か自分にとって「軸」になるものが必要です。重いものを動かす時にはテコを使うでしょう?要するに、どこに支点を置くかなんですよ。何か問題を動かさなくてはいけない時に、しっかりとした「軸」を持っていないと決して動かせない。若いうちに、この「軸」になるものを1つでもいいから身につけてください。期待していますよ!


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