東芝のビジネス

エネルギー事業
福島第一原子力発電所の廃炉を担う Vol.1

人類が初めて取り組む課題のひとつ、福島第一原子力発電所廃炉計画。培ってきた知見と経験を活かし東芝の総合力で難題に挑む。
COMPANY カンパニーについて
現代生活に欠かせない電力エネルギーの安定供給。このミッションを担うエネルギー事業では、原子力、火力発電システムに加え、自然エネルギーを利用した水力・地熱・風力などの発電システムを提供。CO2の排出を抑えた安定した電力エネルギー供給は、持続可能な社会の実現には不可欠です。エネルギー事業は長い年月で培ってきた高い技術力で、より良い社会を築くための基盤づくりに貢献します。
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PROFILE
道券 禎貴 エネルギーシステムソリューション社 原子力事業部 原子力福島復旧・サイクル技術部 プロジェクト第三担当 グループ長

機器設計を中心に、入社後一貫して原子力事業に携わる。2013年より現職。
※組織名称は取材当時のものです

エネルギー事業 原子力事業部が注力している事業

電力エネルギーの安定供給と環境負荷低減の実現。このことは人類発展のために、今を生きるわたしたちが考えていかなければならないきわめて大きなテーマです。エネルギー事業では、社会を支えるさまざまな要素技術を核に、未来への大命題に取り組んでいます。原子力事業部では、国内プラントの再稼働、国内外プラントの建設、運転、保全、廃止措置(廃炉)といった事業支援を通じて原子力エネルギーの安定供給に資するとともに、原子燃料サイクル、次世代炉、加速器等の新技術開発を行っています。わたしが所属する原子力福島復旧・サイクル技術部では、現在、東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所の廃炉という重要なテーマと向き合っています。被災で損傷した原子力発電所を、どのような手段を講じて安全かつ確実に廃炉まで進めていくのか。

このことは、人類が初めて取り組む課題となります。わたしたちは、顧客である東京電力殿や、協働で技術開発を進めている技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(IRID)殿と連携を密にし、国やゼネコンなどの関連企業とも意見交換をしながら、福島第一原子力発電所の廃炉という国家的プロジェクトを担っています。この国家的プロジェクトには多くの企業が参加しています。その中で、わたしたちが注力して進めていることは、損傷した原子炉建屋内の原子燃料や燃料デブリを、安全かつ確実に取り出していくことであり、取り出しに向けての全体計画の立案、計画実行に向けての交渉とその実施を担っています。

この事業分野においてエネルギー事業が成すべき事

原子力事業部は現在に至るまで、東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所を含め、数多くの原子力発電所において設計や建設、メンテナンス、改良工事等に携わり、その知見を蓄積してきました。また、米国ウエスチングハウス社をグループに迎えることで、同社の知見をも有機的に活かせる環境が整いました。豊富な経験と積み重ねてきた知見が、福島第一原子力発電所の廃炉に向けて大きく役立つと確信しています。また、このことに加えて、電力分野以外で東芝が培ってきた英知を集め、それらを総合的に活かしていくことも、わたしたちの大切な使命だと感じています。

廃炉に向けて国から中長期ロードマップが提示されています。わたしたちは、このロードマップに示された計画を踏まえて一つひとつの課題に真摯に取り組んでいます。中長期ロードマップを正しく遂行していくために必要な様々なことがありますが、現時点で、最も難しい点は放射線量が高い原子炉建屋内の炉内状況を、正しく把握するということです。

人間が立ち入ることができない場所の状況を把握する。そのためには人間に代わって情報を集め、作業を行うロボットの開発が必要です。原子力事業部は、東芝の総合力を活かしIRIDとも連携することで、さまざまなロボット開発に取り組んできました。近年開発した原子炉格納容器内の状況把握調査を行う小型ロボットは、2台のカメラの他、LEDライトや放射線量計、温度計を搭載し、暗闇や霧の中でも広範囲の撮影を可能としました。取り組むべき課題は数多くありますが、なかでも廃炉に向けて最も重要となる原子炉内の状況把握を確実に実行していくことこそが、東芝に課せられた重大なミッションだと認識しています。

福島第一原子力発電所の廃炉。今後の道筋

国から提示されている廃炉に向けての中長期ロードマップには「汚染水対策」「原子燃料搬出」「燃料デブリ取り出し」「廃棄物対策」という4つの項目が示され、時間軸に沿った目標が掲げられています。わたしたちが担う当面の重要事項は、2020年頃までに達成するべきである「原子燃料搬出」と「燃料デブリ取り出し」です。震災発生から今までは、除染、汚染水対策など広いエリアに対しての課題解決が中心事項でした。震災から約5年を経て、その照準は、原子炉建屋内に移ってきています。なかでも原子炉内で溶け落ちた燃料デブリは、原子炉内での状況が不明確であるとともに、その形態も単一ではありません。燃料デブリがどこにあり、どのような状況になっているのか。このことを探査し、次の対策を打ち出していく。

先に紹介した小型ロボットは、燃料デブリの位置を調べるためのルート探索のために開発したものです。ここで得た情報を基に、今度はその位置を確定させるための開発を行うというステップに進むことになるのです。またロボット技術のほかにもさまざまな角度から原子炉内の状況把握を推進しています。現在ではミュオン(宇宙線)を応用したシステムにも取り組んでいるところです。このように、原子炉内の状況を把握するためには数多くのステップを経る必要があることが、わたしたちにとっての大きな障壁となっています。しかし、課題と真摯に向き合いクリアにしていくことこそが、中長期ロードマップを安全、確実に推進することと確信しています。廃炉という大きな課題と向き合い、着実に実践していくことがわたしたちの使命だと実感しています。

(Vol.2につづく)