東芝のビジネス

エネルギー事業
福島第一原子力発電所の廃炉を担う Vol.2

福島第一原子力発電所の廃炉を担う
PROFILE
小園 航太 エネルギーシステムソリューション社
原子力事業部 原子力福島復旧・サイクル技術部 プロジェクト第三担当

2009年入社 土木工学科卒
学生時代は土木専攻だったが、就職活動では未来のエネルギーとしての原子力の可能性を信じ入社を決意。入社後は、東通原子力発電所のプロジェクトに携わる。東日本大震災を受け、2012年より現職。廃炉に向けてのプロジェクト推進を担う。※組織名称は取材当時のものです

福島第一原子力発電所の廃炉という国家プロジェクトを担う

わたしが担う業務は、一言でいうならプロジェクトマネジメントになります。日々、東京電力殿、関連企業、社内と打ち合わせを重ね、廃炉に向けた中長期の計画に関する課題抽出、計画の立案という上流工程の議論から、明日の現場工事の調整といった下流工程に至るまでの工事全体を管理し、推進していくことがわたしの役割です。福島第一原子力発電所の廃炉という国家的プロジェクトに関わるのは、お客さまである東京電力殿だけではなく、ゼネコンなどの関連企業、さらには原子力事業部内の各部門など、非常に多岐にわたります。関係する方々からの要求や意見、アイデアを丁寧に吸い上げ、安全を第一に考え計画に落とし込み、それを形にして、現場に投入していく。プロジェクトを管理する立場として、わたしは、プロジェクトの各検討段階から関わり、実際に推進し、終了を見届けるまでを担っています。

お客さま、関連企業、そして社内の原子力のスペシャリストである技術者との間を調整し、廃炉に向けたプロジェクトを推進していく。その実現のためにわたしが心掛けていることは「対話」です。特にプロジェクトが立ち上がる初動段階では、関わる全員の意思統一を行い同じ方向性で円滑にプロジェクトを動かすことが何よりも重要となります。メールでの連絡や情報共有ばかりではなく、可能な限り一人ひとりと対話し意志統一を図り、すべての人を同じ方向に導いていく。このことがプロジェクトを円滑に進めていく上で重要になると考えています。わたしは学生時代からバスケットボールに打ち込んできました。現在でも時間が許す範囲内でプレーヤーとして活動しています。バスケットボールは高度なチームプレーが重要であり、わたしは現在の仕事も同様にチームプレーが大切だと捉えています。数多くの知見を集約し、大勢で同じ方向を向き課題を克服していく。このためには、高度なチームプレーが不可欠だと確信しています。

強い意志を持ち、難題と向き合う

現部署に配属以来、さまざまなプロジェクトに関わってきましたが、中長期ロードマップを推進する上での重要なマイルストーンとなったものは、2015年夏に行った3号機プール内の大型がれき撤去作業です。これは実施する2年前から計画が始まりました。3号機は水蒸気爆発により原子燃料を保管するプール内に、重さが数十トンもある巨大ながれきが落下しました。プール内には原子燃料が残されたままになっており、原子燃料搬出、その後の燃料デブリ取り出しと工程を進めていくためには、まずプール内に落下している巨大がれきを撤去することが必要です。作業現場は、放射線量がきわめて高く、人による直接作業は不可能。したがって遠隔操作による大型クレーンによる吊り上げ作業を計画しました。原子燃料が残っているプール内からの、大型クレーンを用いた遠隔による、巨大がれきの撤去作業。これは先行例のない工事です。工事仕様を確定することにも相応の時間が必要となりました。また実際に作業に着手しても、想定外の事象が起こり、業務が停滞することも幾度となくありました。

こうした問題に真摯に向き合い、お客さまの他、多くの人と協議し、打開策を見出していく。時として工程を優先した計画を考えてしまいがちになりますが、わたしたちが最も担保しなければいけないことは「安全」です。たとえ「3歩進んで、2歩下がる」ような状況にあっても優先するべきことはただ一つ、「安全」です。このことを自身にも言い聞かせながら、関係するあらゆる人にも再認識させ調整していくこと。それはわたし自身にとっても強い意志が求められる仕事でした。わたしにとっての「強い意志」、それは福島の廃炉に向けた工事を安全に着実に進めることで、わたし自身の活動が福島の復興に必ずつながるという思いです。

日々の活動を世界が注視する

2015年夏に実施した3号機プール内の大型がれき撤去作業は、無事成功裡に終わりました。しかし、この成功は廃炉に向けた中長期ロードマップにおいては、「一工程」に過ぎません。3号機に関しては、プール内の原子燃料搬出という重要事項について検討を進めています。また2号機については、プール内から、放射性物質の拡散を防ぎつつ、安全に原子燃料を取り出すための環境整備に取り組んでおり、原子炉建屋周辺のエリア整備を、ゼネコンと協働により行っています。わたしの学生時代の専攻は土木。したがって原子力についての知見は日々の仕事を通じて養ってきました。しかし、私が担っているプロジェクトの推進という業務はむしろ違った専攻だからこそ柔軟に、かつ広い視野で考えることができると捉えています。またプロジェクトを推進していくことは、会社経営の視点も必要になります。もちろんこうしたことは、原子力事業部内のスペシャリスト層が厚いからこそ実現できることでもあります。

中長期ロードマップを推進し、廃炉に導いていくためには相応の時間を要します。顕在化している課題ばかりではなく、まだ顕在化していない課題も数多くあると認識しています。その一つひとつに粘り強く取り組み、安全に着実に個別プロジェクトを推進していく。このことがわたしに課せられた大切な使命だと思っています。わたしたちの活動が、福島の未来につながる。そしてそのことがエネルギー事業にとっても東芝にとっても未来の原子力開発の知見となる。また、世界中がわたしたちの仕事を見ています。未来のためにも悔いを残すことなく、難易度の高い業務に取り組んでいきたいと思っています。