Japan

東芝の技術がヒッグス粒子の発見に貢献

東芝の加速器技術の歴史と展望

最終回となる今回は、京浜事業所 佐藤潔和氏に、東芝の加速器技術の歴史と展望について話を聞きました。

東芝の加速器技術の歴史


佐藤氏に話を聞きました


1966年より運転開始された理化学研究所向けサイクロトロンの電磁石。運転を停止したのちに理化学研究所本部前に展示されている(提供:理化学研究所)

東芝は真空管を用いた送信機やブラウン管を用いたテレビの製造を行ってきました。真空管やブラウン管は電子を放出して加速する技術を用いており身近な加速器のひとつと言えます。また、大型モーターや発電機のコイルを製作する技術も加速器用電磁石の製作に欠かせないものです。東芝はこれらの技術を応用し、早い時期から研究所や実験施設に加速器や関連システムの納入を行ってきました。

1957年には東大原子核研究所に、1966年には理化学研究所にイオンを加速するサイクロトロン加速器を納入しています。また1959年には日本で最初の電子線形加速器とその高周波電源を自主開発し、1960年に国産商用第1号として名古屋工業技術試験場*1に納入。1987年には放射光用のシンクロトロン加速器*2を開発、システム製品として納入しました。

近年では、1996年に世界最大級のビームエネルギーを誇る放射光施設SPring-8*3や、2012年3月にあいちシンクロトロン光センター*4に加速器システムを納入しているほか、大強度陽子加速器施設J-PARC*5や海外も含め多くの研究・実験施設に機器やサブシステムの納入実績があります。

早くから加速器の製造を行い、ノウハウを保持していることが、最先端技術が用いられる研究所や実験施設への納入実績に繋がっているのです。今後もILC*6など最先端科学への貢献を続けていきます。

*1 現名称は独立行政法人産業技術総合研究所中部センター。
*2 円形加速器内を電子が移動する時に、電子の周りにあった電磁場が円軌道の外に放射され強い光(放射光)が発生する。この光が実験に利用される。
*3 兵庫県にある独立行政法人理化学研究所の放射光実験施設。シンクトロンシステム一式、及び、線形加速器と蓄積リングの高周波システムを納入。
*4 愛知県にある放射光実験施設。線形加速器、加速シンクロトロン、蓄積リングからなる加速器システム一式を納入。
*5 茨城県にある高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で運営している大強度陽子加速器施設。
*6 LHCの次の国際協力大型加速器計画。ヒッグス粒子をより詳しく調べることを主な目的としている。

加速器の技術がもたらす豊かな未来

加速器は最先端の物理研究や実験だけでなく、我々の生活の身近なところでも利用されています。

空港などの手荷物検査やコンテナの透視検査、医療器具などの滅菌、レントゲン撮影、放射線治療にも実は加速器の一種が使われています。また、加速器を利用した高精度な分析技術は、新しい薬の開発、考古学の年代測定、科学捜査などの強力な武器となっています。はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った塵の分析にも加速器が使われました。さらに材料改質や新材料の開発を通じ、電子デバイス・ストレージ分野では半導体の高性能化が行われており、エネルギー分野では燃料電池やリチウム電池の高性能化が期待されています。バイオ分野では、品種改良で青いバラや寒さや干ばつに強い作物を作る試みも行われています。

ヘルスケア分野では、東芝の加速器技術ががん治療に用いられる重粒子線治療装置*7に利用されています。また、重粒子ビームの軌道に沿って湾曲したパイプに超伝導コイルを巻く東芝独自の製造技術で、小型化・軽量化と重粒子線照射方向の360度回転を実現した超伝導磁石搭載回転ガントリー*8を放射線医学総合研究所に納入予定です。この装置では、患者を移動・回転させることなく様々な方向からの治療が可能となるため、患者自身への負担軽減も期待できます。


超電導回転ガントリー(左)と治療室(中)のイメージ。東芝独自の技術によって湾曲した芯にコイルを巻くこと(右)が可能になりガントリーの小型化・軽量化を実現

さらに今後の展望として、光合成の仕組みの解明、放射性廃棄物処理への応用、核融合炉や宇宙開拓に必要な放射線に強い材料や電子部品の開発、加速器で作った中性子を照射するがんの新しい治療方法*9の確立なども期待されています。将来的には、加速器で人工的にミュオン*10を発生させ、その透過性を利用した火山観測による噴火予測も可能になるかもしれません。

*7 神奈川県立がんセンターで2015年度より治療開始予定。
*8 世界初の超伝導回転ガントリーを用いた重粒子線治療装置を2015/3に納入予定(プレスリリース)
*9 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT):薬剤によりホウ素をがん細胞に取り込ませ、中性子を照射することで、がん細胞のみを破壊しようという治療法。目に見えない小さながんも破壊することができる。
*10 地上に降り注ぐ主な宇宙線の一つ。我々の体も常に多くのミュオンが突き抜けている。

東芝としてできること、東芝だからできること

「東芝は数多くの加速器を納入してきましたが、社内で平行して進められていた、超伝導技術、電源や制御技術、ロボット技術、様々な製造技術などの開発との相乗効果があるからこそ、世界的に見てもトップクラスの技術を提供できていると思います。」と佐藤氏は語ります。

東芝の強みは、幅広い事業を持ち、それぞれの事業で培われた技術を結集し、他社の追従を許さない最先端技術を提供できることなのです。

「また、ヒッグス粒子発見への貢献にも繋がりますが、東芝の経営ビジョンにある”飽くなき探求心”を忘れずに、根本的なところを知りたいと言う欲求に応えることで、これからも人々に感動を与えていきたいと思います。」と佐藤氏。

3回に渡ってご紹介したヒッグス粒子発見への貢献から豊かな生活の実現まで。
東芝の技術は今後も発展を続け、人々に感動を与え、豊かな社会作りに貢献していけるよう取り組んで参ります。

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