摩擦・摩耗の制御/利用を目ざして

大島 壽之


 トライボロジーという言葉は30年以上も前に生まれていますが, 最近よく耳にするようになってきました。 その理由は,この技術を積極的に利用しようとする考えかたが出てきたことにもよると思われます。 広辞苑にも載っていて,「二つの物体の面が接触して滑り合うときの, 摩擦・摩耗・潤滑などの現象や過程などに関する科学・技術。 微視的な研究が行われるようになって定着。」とあります。 トライボロジーに関する代表的な機械要素がベアリングです。 従来の水車,電動機といった大型機械から, 最近のハードディスク装置(HDD), DVDといった情報機器などの極限まで摩擦・摩耗の制御されたベアリングが必要となっています。

水車

ハードディスク装置(HDD)

ベアリングに限らず,摩擦・摩耗といった現象は非常に複雑であり, 予測が困難なこともありますが,現在では工学的に過去の知見と最新の研究成果により, 経験的に,またあるレベルまで理論的に解明されてきており, トライボロジー技術が製品の信頼性向上に一役買っています。 さらに,最近では摩擦・摩耗を制御/利用することで製品の性能を向上させる方向にトライボロジー技術が活用されています。

 例えば,情報機器の一つであるHDDの場合,記録密度の向上が性能そのものです。 機械システムの観点から見ると記録密度を左右しているのは磁気ヘッドと媒体の浮上量です。

記録密度

この浮上量を低減させるために流体潤滑というトライボロジー技術が使われています。 現状ではHDDのヘッドは浮上していますが,将来のさらなる高密度に向けて, 接触型のHDDの研究も各方面で行われています。この場合には, 接触による摩耗をいかに制御するかが最大のポイントであり, これはまさにトライボロジー技術そのものといえます。

 1989年にも特集をやっていますが,今回の"トライボロジー技術"特集では, 摩擦・摩耗を単に低減させるといったトライボロジーの従来の受動的な側面だけでなく, 摩擦・摩耗を制御/利用することによって製品の性能を飛躍的に向上させる能動的側面について, 当社の製品開発をとおして具体的に紹介いたします。 今後ますます進む,製品の高性能化,低コスト化,小型化に向けての, 当社の取組みの一端をご理解いただければ幸いです。


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