世界で初めて0.5ボルト動作が可能な回路技術の開発について

1996年2月8日

・・・従来のLSIより約100分の1の低消費電力化が可能・・・

 当社は、情報通信機器の高機能化・ポータブル化の進展にともないLSIの 低消費電力化が求められる中で、トランジスタ毎に基板を分離して導通させるのに 必要な電圧(しきい値電圧)を制御できるようにすることによって、0.5ボルト での動作が可能な回路技術を世界で初めて開発しました。


技術内容

 当社は、基板電位が高くなるとトランジスタのしきい値電圧が低下し、基板電位が 低くなるとしきい値電圧が高くなることに着目し、SOI技術(シリコン基板を 絶縁体上に形成する技術)によってトランジスタ毎に基板を分離し、基板電位と ともにトランジスタのしきい値電圧を連動して制御する技術を開発しました。
 これによって、従来一定であった個々のトランジスタのしきい値電圧を、 トランジスタが導通すべき時に0.2ボルト以下と低くして高速に動作させ、 トランジスタが遮断すべき時にはしきい値電圧を0.5ボルトと高くして漏れ電流を 防ぐように制御可能にしました。
 また、スイッチング動作中のトランジスタだけでなく、次に動作する トランジスタのしきい値電圧も連動して制御できるようにすることによって、 動作電圧をさらに30%低下させています。

 今回開発した技術によって、世界で初めてLSIの0.5ボルト動作を可能に しました。この技術によって、5ボルト動作のLSIに比べ約100分の1、 3.3ボルト動作のLSIに比べても約40分の1の低消費電力化が可能になります。

開発背景

 情報通信機器の高機能化とともに携帯して屋外でも利用できる機器の市場が 拡大しています。これにともない、携帯情報機器の電池使用時間の長寿命化が 求められており、数多く使用されるLSIの低消費電力化を進める必要があります。

 LSIの消費電力は電源電圧の2乗に比例するため、LSIの低消費電力化を 図るためには動作電圧を低減する必要があります。低電圧動作を可能にするためには、 しきい値電圧を低くする必要がありますが、しきい値電圧が低くなりすぎると 漏れ電流が大きくなるという問題がありました。

 これに対し、当社はトランジスタ毎に基板を分離してしきい値電圧を 制御できるようにすることによって、0.5ボルトでの動作が可能な回路技術を 世界で初めて開発しました。

 なお、本技術は、2月8日から米国サンフランシスコで開催されるISSCC (国際固体素子回路会議)において発表の予定です。


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