世界最高出力を達成した完全固体レーザー装置の開発成功について

2001年6月13日

 当社は、半導体レーザーを光源とする完全固体レーザー装置として、当社独自の高効率レーザーモジュールを直列に6段配列する構成によって、世界最高出力11.3キロワットを世界最高の電気/光変換効率22%で達成しました。

 当社が開発したレーザー装置は、ネオジム(Nd)を添加したイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)のロッド(円柱)型結晶を発振媒体として、励起用半導体レーザー3個をロッドの周囲に最適配置した完全固体レーザーモジュールを6段直列に並べた当社独自の方式で、従来のランプ式固体レーザー装置に比べて装置サイズを3分の1、消費電力を5分の1に小形化・省エネルギー化することができます。 また、完全固体レーザー装置では、利用する半導体レーザーの方式により、連続波形やパルス波形、連続/パルス重畳波形など、溶接加工に適した出力を選択できます。

 当社の今回の開発成功によって、これまで加工が難しかった板厚10ミリメートルを超える鉄鋼やアルミニウムの厚板についても完全固体レーザー装置を利用することで、高速・高品質な溶接が可能となります。 また、薄板溶接が中心の自動車産業や建築、造船、発電プラントなどの重工業をはじめとする幅広い分野でのレーザー加工装置の普及が見込まれます。

 今回、試作した装置は、レーザーの高効率化を図るため、半導体レーザーの出力ビームの偏光方向を最適化し、YAGロッド表面の反射損失を低減するとともに、高性能半導体レーザーや低損失レンズを採用することなどによって、半導体レーザーからYAGロッドへの伝送効率を95%以上に高めたレーザーモジュールを6段直列配列した構成です。 また、モジュールを直列に配列するために、各励起モジュールの特性をコントロールする電源制御システムを開発しており、高出力化を実現しています。
 今回の成果をもとに、高い電気/光変換効率を維持しながら、配列するレーザーモジュール数を増やすことで、さらなる高出力化が可能になります。

 この開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、1997年度から5年計画で実施している「フォトン計測・加工技術」プロジェクトにおいて、当社が受託・実施しているものです。 本プロジェクトでは、出力10キロワット以上、電気/光変換効率20%以上、レーザーヘッド部分の体積0.05立方メートル以下とすることを最終目標にしています。 当社は、今回の開発成果により、実現に向けての目途をつけたことになり、今後はレーザーヘッド部分の小容量化を進めるとともに、レーザーモジュールの小形化を図っていきます。

 なお、本プロジェクトで開発した成果をベースとして、当社のグループ会社である芝浦メカトロニクス株式会社が最大出力3キロワットの半導体レーザー励起YAGレーザー装置を製品化しています。


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