C型肝炎テーラーメイド治療用DNAチップの開発について

2001年10月18日

当社独自の電流検出方式の採用により簡便な遺伝子診断を実現

 当社は、独自の電流検出方式に基づくC型肝炎テーラーメイド治療(患者の個体差を重視した治療)用のDNAチップを開発しました。 新開発のDNAチップを用いることで、C型肝炎に対するインターフェロン療法の効果が予測できる遺伝子を簡便に診断でき、患者に適した治療の選択を実現できます。 DNAチップの電流検出方式は、数少ない日本発の基本技術であり、当社が基本特許としての権利を取得しています。

 DNAチップとは、ガラスやシリコンの基板上に、高密度にDNA分子を固定したもので、試料中のDNAと結合するか否かを調べることで、試料中に目的のDNAが存在するかを調べることができます。 現在開発されているDNAチップの方式は、レーザを照射し蛍光を測定する蛍光検出方式で、一部実用化されていますが、装置が大型であり、チップも検査システムも高価格なため、普及には至っていません。 当社が開発した電流検出方式では、システムを小型化でき、チップや検査システムも低価格化が容易であるなどの利点があります。

 C型肝炎に対するインターフェロン療法の効果を予測できる可能性のある遺伝子(複数)は、当社東芝病院研究部や大阪大学等から報告されていますが、当社は、この遺伝子情報を使ったDNAチップの開発を、株式会社ジーンケア研究所(神奈川県鎌倉市、社長:古市泰宏博士)と連携して進めています。 ジーンケア研究所の遺伝子解析技術と、当社の半導体・IT技術との融合により2002年度中の事業化を目指します。

 C型肝炎ウイルス感染者は、日本に2百万人、世界には1億7千万人存在すると言われ、治療薬としては、インターフェロンが主に使われています。 インターフェロンの治療効果は、感染しているウイルスのタイプやコピー数によって大きく影響されることが知られていましたが、近年、患者側の個体差(「宿主因子」)もまたインターフェロン感受性に大きく関わっている可能性が示唆されました。

 当社東芝病院(院長 太田裕彦)の医師・研究者らは、インターフェロンを投与されたC型慢性肝炎患者158人について、その治療効果と宿主側遺伝子の一塩基多型(SNPs)との関連性を調べた結果、C型肝炎患者のインターフェロン感受性に関与する遺伝子として、細胞内でウイルスを失活させるMxAタンパク遺伝子、および細胞外でウイルスと結合しそれを失活させるMBLタンパク遺伝子の2つが関与していることを明らかにしました(論文発表 Matsushita et al, 1998; Hijikata et al,2000)。 これら遺伝子のSNPsのタイプは、今回当社が開発したDNAチップで判定できることが検証されました。

 このようなSNPs解析により、インターフェロン投与に関して、1)効果の期待できない患者に対する無用な投与を回避し、代替の肝庇護薬に治療を切りかえる、2)効果の期待できる患者へは積極的投与を行う、といった診断が可能となります。

 当社は、今後、DNAチップの量産化技術を確立させることにより、実用化を目指していきます。 更に、DNA診断システムのプラットフォームとしての地位を築くことにより、将来のテーラーメイド医療に貢献していきます。


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