斜め配線が可能な設計手法「X Architecture」による初のLSI設計について

2002年2月6日

従来手法の設計に比べ処理速度20%向上とチップ面積10%削減を実現

 当社は、LSIの設計において垂直・水平方向だけではなく斜め方向にも配線が可能な新しい設計手法「X Architecture(エックス・アーキテクチャー)」を世界で初めて用い、実際にLSIの回路設計を完了しました。新手法で設計したLSIは、従来手法で設計した場合に比べ、処理速度20%の向上やレイアウト面積10%の削減を実現しています。なお、本事例は、本日(米国時間2月5日)、米国・サンフランシスコで開催される「ISSCC2002(国際固体素子回路会議)」で発表しました。

 X Architectureは、当社と、米国シンプレックス・ソリューションズ(以下シンプレックス)が共同で開発したものです。従来の設計手法の多くは15年以上も前に開発されたため、当時のコンピュータの性能では垂直・水平方向の4方向の配線が限界でした。これに対し、X Architectureでは、コンピュータ技術の進化を生かし斜め45度方向を加えた8方向への配線を可能としました。そのため、チップ上の素子間の配線長の大幅な低減を実現できます。また同時に、同一の配線層内でビアを使わずに配線できる確率が高まりました。この結果、あらゆるLSIの設計において、半導体の微細化に伴う伝送遅延問題を解決し、チップ性能の向上、消費電力の低減、歩留まりの増加を達成することができます。

 実際の設計は、当社の米国にある関連会社アータイル・マイクロシステムズ(以下アータイル)で行い、新しい設計手法の効果を実証しました。設計したのは動作周波数200MHz、ゲート数75万個、チップ面積は4.8mm、0.18μmプロセスを採用したRISCプロセッサコアで、従来手法で設計した場合に比べ、処理速度20%向上やチップ面積10%削減を実現できました。当社は、今後、5~6層以上の金属配線層が必要となるハイエンドのシステムLSI製品に、この手法を導入し、システムLSIの競争力を強化します。

 また、今回の設計では、アータイル独自のレイアウト設計手法「Tiling手法」にX Architectureを導入した初めての事例でもあります。この手法は、システムLSIに関する大規模なデータを一定の大きさに分割し、システムLSIの動作検証時における並行処理を可能にするもので、従来に比べ設計期間を30~40%に短縮できるため、製品を早期に市場に投入することが可能となります。

シンプレックスについて

会 社 名 Simplex Solution,inc.
代 表 者 CEO ペニー・ハーシャー
本 社 米国・カリフォルニア州サニーベール
事業内容 LSIの設計支援ソフトウェア及び設計サービスの提供

アータイルについて

会 社 名 ArTile Microsystems,Inc.
代 表 者 CEO 重松 朋久
COO Shardul Kazi
本 社 米国・San Jose(東芝アメリカ電子部品社内)
出  資 東芝アメリカ電子部品社 100%
事業内容 システムLSIのマーケティングおよび開発


(別紙1)斜め配線の効果と配線長の比較
(別紙2)層別配線方向の比較
(別紙3)素子間の配線の比較


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