薬剤感受性・副作用判定DNAチップ・システムの研究・開発について

2004年7月27日

患者毎に医薬品の効き目や副作用を処方前に判定

 当社は、大阪大学の東純一教授(大阪大学大学院薬学研究科)のグループと共同で、患者毎に異なる医薬品の効き目や副作用を、個々の患者のもつ遺伝子情報の違いから判定するDNAチップ(薬物動態予測DNAチップ)の開発を開始します。
 今回、研究・開発をすすめるDNAチップの対象疾患としては、結核、消化器疾患、うつ病、高脂血症、心不全、がんの6種類を予定しています。

 医薬品は、疾患毎に細かく区分され処方されていますが、個々の患者の体質などの違いから、同じ条件で処方される医薬品が、すべての患者に同じ効果をもたらすとは限りません。これらの効果の違いは、患者の遺伝子情報の違いによってもたらされています。患者毎の遺伝子情報を事前に調べ、その違いにより、有効な医薬品を事前に選択して処方することができれば、より効果的な治療を行うことが可能になります。
 DNAチップは、そのための有効なツールとなるものです。信頼性が高く、かつ安価な薬物動態予測DNAチップの開発により、テーラーメード医療*1を実現し、効果的な薬剤処方による治癒率の向上や副作用発現の低下を図るとともに、効果の低い薬剤投与を低減し医療費全体の削減への寄与を目指します。

 なお、本研究・開発は、平成16年度厚生労働科学研究費補助金による研究事業として実施されます。

研究・開発の背景

 テーラーメード医療の実現に有用な遺伝子データが蓄積されつつありますが、まだ、その実用化にはいたっていません。これは、遺伝子データの臨床応用には膨大な時間と経費が必要であること、遺伝子解析機器が高価で、かつ操作に専門性を要すること、遺伝子情報に対する保護対策が不十分であることなどが考えられます。

 当社は、簡便で低コストのDNA検出方式として独自の電流検出方式によるDNA検査装置GenelyzerTMを2003年6月に発表し、すでに国内外複数の大学でβサイトテストを実施しています。また、大阪大学の東教授は、ファーマコゲノミクス*2の権威として、薬物代謝酵素や薬物標的遺伝子の多型*3全般に関して臨床的な有効性の検証を重ねています。

 今回、この両者が協力することにより、安価で簡便な薬物動態予測DNAチップの開発と臨床応用を実現し、日本発の遺伝子診断プラットフォーム技術の確立と、テーラーメード医療の早期実現を目指します。

研究・開発の方法

 当社は、大阪大学の東教授が持つSNPs*3情報に基づいて、疾患別DNAチップを開発します。8月から大阪大学インキュベーションセンターに設置されるDNA検査装置GenelyzerTMを使ってDNAチップのβサイトテストを開始し、有効性の検証を行う予定です*4。研究・開発の期間は、3ヵ年を予定しています。

 研究対象とする疾患は以下のものを予定しています。
・ 結核
・ 消化器疾患
・ うつ病
・ 高脂血症
・ 心不全
・ がん

 遺伝子情報の保護および倫理面での配慮としては、研究への参加ボランティアに対するインフォームド・コンセントを行います。また、研究は、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省共同告示による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に従い、東芝研究開発センター倫理審査委員会および大阪大学ヒトゲノム倫理委員会の承認の下に実施します。

*1: 個人のもつ遺伝子の配列の微妙な違いから、薬剤の効果や副作用を事前に判定し、患者毎に最適な薬剤投与などの治療を行う医療。
*2: 特定の疾患をもつ患者群の遺伝子情報に共通な特徴に基づいて、治癒効率が高く、副作用の少ない薬剤の開発を目指す手法。
*3: 個人により、僅かに見られる遺伝子の塩基配列の違い。遺伝子上の塩基配列の1箇所だけが置き換わっている場合をSNP(1塩基多型)という。SNPsは、その複数形。
*4: 臨床研究および遺伝子解析は、大阪大学発のベンチャー企業である、薬効ゲノム情報株式会社(社長:岩田宙造大阪大学名誉教授)の支援のもとに実施する予定です。


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