東京電力株式会社 福島第一原子力発電所6号機向け原子炉給水流量計の実流量試験のデータ処理について

2006年1月31日

 当社が、東京電力株式会社(以下、東京電力)から1993年(平成5年)に請け負った福島第一原子力発電所6号機(以下、1F-6)の原子炉給水流量計取替工事の工場での実流量試験において、測定データが東京電力購入仕様書を逸脱していたため、見かけ上精度を満たすように当社従業員が不適切にデータ処理したことが判明しました。

 今回のような行為は決してあってはならないことであり、当社として、深く反省するとともに、電力事業者と立地地域の住民をはじめ、皆様に多大なるご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 なお、社内調査と第三者機関(社外弁護士)による調査の結果、実流量試験において得られていた測定データは、原子炉設置許可申請の基準は満たしており、当社としては、納入した流量計については、法令上・安全上の問題はないものと評価しております。

1F-6原子炉給水流量計の実流量試験について

1. 不適切なデータ処理判明の経緯
 2005年9月に東京電力から、『東芝にて実施した原子炉給水流量計の実流量試験に関する、過去の履歴を調査してほしい。』との連絡を受け、これに関する社内調査を開始しました。
 その結果、1993年に当社が請け負った1F-6原子炉給水流量計取替工事における工場での実流量試験において、東京電力への提出データと異なる社内データがあることが判明しました。
 これを受け、2005年11月以降、関係部門とリスク・コンプライアンス部門とが連携して、当該試験を実施した試験責任者と試験担当者の2名に対して聞き取り調査を行ないました。その結果、東京電力購入仕様書に基づく当社作成の試験方案記載の精度を逸脱したデータが得られたため、不適切なデータの処理を実際に行なったとの証言があり、当該事実が判明しました。
 なお、第三者機関(社外弁護士)による調査もあわせて実施した結果、同様の結論を得ました。
   
2. 社内データの信憑性の評価など
 社内に残された測定データについて、その信憑性を評価の上、原子炉給水流量計の精度について以下のように確認しました。
 (1) 試験設備は当時から社内規程に則り適正に管理されていたこと。
 (2) 試験手順も正しく行われていたこと。
 (3) 当時の実流量試験の再現模擬試験を行い、精度に影響を与えるような要因がなかったこと

以上のことから、正しく計測された実流量データが社内に残されていたことを確認しました。

 この結果、社内に残された測定データから、原子炉給水流量計の精度は、東京電力の購入仕様書に定められた測定精度を満たしていないことがわかりました。なお、原子炉設置許可申請書に記載の給水流量計に求められる基準は満足しており、当社としては、納入した流量計ついては、法令上・安全上の問題はないものと評価しております。

 -東京電力購入仕様書記載精度 ±0.25%
 -設置許可申請書から要求される流量計精度 ±2.00%
 -実際に計測された精度(平均値の乖離) -0.43%~-0.59%
   
3. 不適切な行為が行われた動機・背景 など
 社内調査と第三者機関(社外弁護士)による調査の結果、1F-6の定期点検工事の給水流量計の現地取替工事工程に余裕がない中で、実流量試験のデータが東京電力の要求精度に収束しない状況となり、実流量試験のやり直しや、流量計の再製作による工事遅延を避けたいとの意識から、試験責任者が、実際に計測されたデータを、要求精度を満たすように修正して提出していたことがわかりました。なお、試験責任者及び試験担当者の2名以外の当社従業員の関与は認められず、組織的な行為ではないことを確認しました。
 こうした行為が事前にチェックできなかったのは、設計担当部門が直接試験を実施する体制であったことが原因と考えております。
 当社として初めて実流量試験を開始する際に、試験データを採取しながら、評価を加えるといった技術的な判断要素が多かったことから、この試験体制とし、以降この運用を続けてきました。この結果、ダブルチェック機能が働きにくく、今回のような事態が起こりうる原因があったと考えられます。

1F-6以外の原子炉給水流量計の実流量試験について

 社内調査と第三者機関(社外弁護士)による調査の結果、以下のことについて確認しました。
 当社で製作している原子力発電所向けの設備、製品のうち、設計担当部門が直接試験検査を行っていたのは、当該の実流量試験設備を使用した流量試験だけでした。
 当社が実流量試験を行なったプラントは、1F-6以外に6プラントありましたが、これらのプラントの試験を実施した担当者および責任者に対し、1F-6と同様に調査を実施し、不適切なデータの処理を行った事実はなかったことを確認しています。

再発防止への取り組み状況について

 今回の件を深く反省し、以下の再発防止策に取り組んでおります。
(1) 試験体制の変更
 実流量試験は、試験データの妥当性の確認等技術的な判断要素が多い為、設計者が試験を担当し、データ採取/提出データを作成していました。2005年12月以降は、実流量試験を流量計専門メーカーに委託し、当社の品質担当が共同で試験を実施し、提出データの評価確認を行なう体制としました。
(2) コンプライアンスの再徹底
 上記対策に加え、関係部門においてケーススタディーを行い、コンプライアンス教育を再徹底します。
(3) 当該試験を行なった試験責任者と試験担当者については、就業規則に基づいて、処分を実施します。
(4)

東芝グループ行動基準の再徹底
 法令遵守はもとより、社会規範、企業倫理に則って行動する企業として既に定めている東芝グループ行動基準について、改めて関係者に徹底し、行動基準に則った誠実な事業活動を実施します。


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