東芝が量子暗号鍵配信の安全性の欠陥を克服 2007年2月20日 暗号鍵配信中の盗聴を完全に防ぐ新技術を開発 (2月20日、英国ケンブリッジ)東芝(東芝欧州研究所)は、量子暗号鍵配信(QKD)の「無条件安全性」を実現する二つのキー技術を開発しました。今回の成果により、従来技術の抱える安全面の脆弱性が解決されます。 量子暗号鍵配信は、量子力学の原理にもとづき二者間で完全に安全な暗号鍵の配信を実現できる手段です。しかし、これまでに開発された量子暗号鍵配信では、盗聴につながる脆弱性が指摘されています。 このような従来の量子暗号鍵配信のもつ脆弱性を踏まえ、今回東芝は次の2つの解決策を確立しました。 1.「デコイ手法」を実装した単一方向型の量子暗号鍵配信 量子暗号鍵配信において「デコイ(おとり)」の光パルスを単一光子信号パルスに混ぜる「デコイ手法」を実装しました。デコイ手法では、パルス当たりの光子数が2個以上になることがほとんどない微弱なパルスを用いており、盗聴者が光子を抜き取ると、デコイパルスの受信確率は信号パルスよりも小さくなります。このため、両者の受信状態を比較することで、盗聴者の介入を検知することができます。これはまた、デコイ手法を用いれば、より強い光パルスを用いても、安全に量子暗号鍵配信を行うことが出来ることを意味します。 今回東芝は、これまで開発してきた「単一方向型」の量子暗号鍵配信方式にデコイ手法を導入し、より強い光パルスで無条件に安全かつ高い配信速度の量子暗号鍵配信を実現しました。 東芝欧州研究所 量子情報グループ長 アンドリュー・シールズ博士のコメント: 2.光通信波長帯に対応した単一光子LED 今回開発した単一光子LEDは、基本的には一般のLEDと同様の構造ですが、活性層の領域に直径 45 nm、高さ 10 nm という微小な量子ドットが形成されている点が特徴です。この量子ドットには、たった一対の電子・正孔が捕捉され、光子を一度に一つだけ、所定の波長で発生することができます。本デバイスでは、単一光子の発生が電気的な信号で制御できます。これは量子暗号鍵配信などの応用に不可欠な要素と言えます。 今回の新デバイスでは、同じ発光能力を持つLEDと比べ複数光子の発生する割合が5分の1におさえられています(詳細は、論文誌「Applied Physics Letters」に掲載済み)。 東芝欧州研究所ケンブリッジ研究所 所長 ミハエル・ペッパー卿(教授)のコメント: 開発の背景 情報セキュリティの科学としての暗号は、ビジネス上での電子的なやり取りや電子商取引において、機密保護、個人認証、取引の正当性などを保証するものです。このような応用ではデジタル鍵が用いられ、正当なユーザー間で秘匿性が守られている必要があります。 |
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