低コストで実現可能な量産向けMEMS*1パッケージング技術の開発について 2008年5月30日 -MEMSとドライバICとの世界最薄マルチチップの試作にも成功- 当社は、携帯電話などの無線システムをはじめ、様々な用途向けに開発が進められているMEMS(微細駆動装置)について、二種類のパッケージング技術を開発しました。パッケージングを実気圧に近い状態で行う「実圧気密方式」において、水の侵入を許さない小型の気密中空構造の作製技術と、パッケージングを真空状態で行う「真空気密方式」において、真空の中空構造をより強固にする技術です。さらに、両方式ともウエーハプロセスでの一括処理を実現することで、低コストでのMEMSパッケージングを可能にしました。 今回開発したのは、MEMS可動部分を保護するための中空構造を作製する2つの方式である「実圧気密方式」と「真空気密方式」における実装技術です。また、両方式でパッケージングしたMEMSについて、ドライバICを搭載したものとしては世界最薄となる0.8mmのマルチチップパッケージの試作にも成功しました。 MEMSは本格展開に向けての低コスト化が大きな開発課題で、パッケージングにおいても生産性に優れ、小型でかつ中空を実現した技術の開発が強く望まれています。空気抵抗のない「真空気密方式」はジャイロセンサのように可動部分に高速動作が必要とされる用途で有効とされていますが、一方で真空内では可動部分の振動が続くリンギング(残留振動)が生じやすい傾向があります。そのため、高速動作が必要でない携帯電話などの用途には、内部を実圧にしてリンギングを低減し、より低コストでパッケージング可能な「実圧気密方式」が有効と考えられており、用途に応じた開発が進められています。 当社は、今後も両方式における量産化向けの技術を開発することで、MEMS本格量産の早期実現を目指します。なお、今回の成果については、5月28日より開催されているECTC2008(Electronic Components and Technology Conference)で昨日と本日の2日間にわたり発表しました。 開発の特長 1.「実圧気密方式」(図1参照) 「実圧気密方式」では、中空構造の作製において、可動部分を覆う犠牲層と呼ばれるポリマー層をSiO2(二酸化ケイ素)膜で覆った後、膜上に複数の穴を開け犠牲層を除去(エッチング)し、さらに樹脂を塗布して穴を封止します。エッチング効率は穴の直径と数に比例して向上しますが、効率を上げると、封止の際に樹脂が中空構造内に流入する可能性が大きくなるという課題がありました。今回、樹脂の表面張力を考慮し、穴の直径と形状およびその間隔を最適化することで、エッチング効率向上と樹脂の流入防止を両立することに成功いたしました。さらに樹脂材料が透水性のため、樹脂封止型の中空構造は、耐水性を要求される用途への適用が困難とされてきましたが、CVD法*2により無機膜をハイブリッド構造で積層することで、気密性を実現し、水の侵入を許さない耐水性パッケージを実現しました。 [ 図1:「実圧気密方式」のパッケージング構造 ] 2.「真空気密方式」(図2参照) 中空構造を真空状態で作製する「真空気密方式」では、気圧差で中空構造が潰れる力が働きますが、中空構造の外形を波型にすることによって大気圧によって潰れることのない強固な構造としました。また、犠牲層をエッチングする穴の形状を円形から楕円形にすることで製造過程における応力を低減し、破損の危険性を低減しました。さらに、厚い補強樹脂を積層することで、その後のマルチチップパッケージへの搭載において、高圧が必要とされる樹脂成形工程の適用も可能にしました。 [ 図2:「真空気密方式」のパッケージング構造 ]
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