ニュースリリース

二酸化炭素分離・回収技術のパイロットプラント建設について

- 10トンCO2/日規模の実証試験により実用化に向けて研究開発を加速 -
2008年12月03日

 当社は、火力発電所などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中等に貯留する技術「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術」の実用化を加速するため、福岡県大牟田市にある株式会社シグマパワー有明 三川発電所内にCO2分離・回収パイロットプラントを設置します。パイロットプラント建設は、来年春に着工、同年8月頃から実排出ガスを使った実証試験を開始する予定です。

 

 CCSは大別してCOの分離・回収と貯留の2つのプロセスから構成されます。この度当社が進めるのはCO分離・回収技術の開発です。このシステムの実用化に向けた技術課題として、いかに発電所の経済性を損ねずにCO2を分離・回収するシステムを構築するかが求められています。当社はこれまでの基礎研究を通して、
CO2の分離・回収過程でエネルギー消費が少ないアミン系吸収液の開発に成功しています。小規模試験装置を利用した試験では、その性能が業界トップクラスであることを確認しました。

 

 今回三川発電所内に建設するパイロットプラントは、CO2回収量が10トン/日規模のもので、石炭火力発電プラントのボイラー排ガスの一部を利用して、システムの性能を実証するとともに、火力発電プラント排ガス中のSOxなどの含有物がシステムに及ぼす影響、タービンなど他の発電システム機器との統合とその運用ノウハウなども含め、今後の大型発電プラント向けシステムの設計に必要な検証を行います。

 

 当社ではパイロットプラントでの実証試験と並行して、現在、国内外で複数計画されている実規模の実証プラントへの参画を目指しています。今後、2015年頃にも全世界の火力発電市場においてニーズが高まると見られる商用CCSシステムに対応できるよう研究開発を一層加速し、当分野における事業の確立を進めます。

パイロットプラント設置の背景と狙い

 火力発電は世界の全発電量のおよそ3分の2を占め、将来にわたって電力の安定供給に重要な役割を果たしていくものと見込まれます。一方で、火力発電の過半が埋蔵量の豊富な石炭を燃料としておりますが、石炭は天然ガスなどの他の化石燃料と比較して、発電量あたりのCO2排出量が大きいため、環境対策が強く望まれています。また現在、特に欧州を中心に、地球温暖化防止の観点から、新設火力発電所のCO2排出上限値の規制化が検討されており、火力発電所にCCSを併設する動きが今後加速していくことが予想されます。現在、世界中でCCSの実用化に向けた研究開発が進められており、当社もこれまで研究所での要素開発を行ってきました。10月1日にはCCS開発と事業推進の専門組織をそれぞれ設置して事業化に向けた本格的な活動を開始しており、今回のパイロットプラント建設により、一層の加速を目指します。

パイロットプラント概要

所在地 : 福岡県大牟田市新港町1番地46(株式会社シグマパワー有明 三川発電所内)

導入設備 : ボイラー排ガスからCO2を分離・回収する設備一式

処理能力 : 10トンCO2/日

CO2分離回収方式 : 燃焼後回収方式(化学吸収法)

(株)シグマパワー有明 三川発電所 概要

発電方法 : 火力発電

認可出力 : 47,500kW

燃料   : 石炭

(株)シグマパワー有明 概要

会社設立 : 2005年4月1日

本社所在地 : 東京都港区芝浦一丁目1番1号

代表者 : 取締役社長 長尾 進一郎

資本金 : 4億2500万円

東芝出資比率 : 81.3%

パイロットプラント構成図

 

パイロットプラント構成図