ニュースリリース

世界最高水準を実現した「高精度人物検出技術」の開発について

~監視カメラによる不審者チェックなどのセキュリティ精度の向上にも貢献~
2009年01月13日

 当社は、画像の新たな分析手法を用いて、世界最高水準の性能を持つ「高精度人物検出技術」を開発しました。開発した技術では、「CoHOG(Co-occurrence Histograms of Oriented Gradients、輝度勾配方向共起ヒストグラム)」と呼ぶ新たな分析手法を用いることにより、従来の世界最高水準と比べて誤検出数をおよそ半減できるようになります。なお、1月13日から東京で開催される国際学会PSIVT2009 (The 3rd Pacific-Rim Symposium on Image and Video Technology) において、本開発技術の発表講演とデモ展示を行います。

開発の背景

 近年、デジタルカメラなどには「顔検出」機能が備えられていますが、同様にカメラ等の画像から人物全身の大きさ、位置、数を見つけ出す処理を「人物検出」と呼びます。

 カメラ等を使ったこの人物検出技術についても、自動車での歩行者事故の防止や、監視カメラによる不審者の検知といったセキュリティ、さらには映像コンテンツの自動検索といったシステムへの搭載が始まりつつあり、その重要性が高まっています。ところが、人物はその形や服装が顕著に変化することや、複雑な背景から人物のみを抜き出す必要があるため、様々な状況下で人物を正確に見つけることは難しい課題です。

 これまでも、高精度な人物検出を目指し、撮影された物の輪郭など、濃淡が変化する部分のヒストグラム「HOG(Histograms of Oriented Gradients、輝度勾配方向ヒストグラム)」を使った技術開発に取り組んできましたが、形が人物とは似つかわしくない物でも人物に似た分析結果が得られる場合があり、誤検出を減らすことが困難でした。

「高精度人物検出技術」の特長

 このたび新たに開発した高精度人物検出技術では、2つの異なった位置での輪郭のペアがどのような頻度で現れるかという「CoHOG(Co-occurrence Histograms of Oriented Gradients、輝度勾配方向共起ヒストグラム)」と名付けた画像の新たな分析手法を用います。この手法により、画像特徴を多くの人物画像から集めてより詳細な統計学習をすることが可能となり、高精度な人物検出ができるようになります。

 新たな分析手法では、物体の「形」を詳細に表現できますので、偶然に人物と似た特徴が得られることが少なくなり、これまでの世界最高水準と比べて誤検出数をおよそ半減することができます。

 なお、本技術の実験データによると、今回開発した分析手法を車載用として応用し歩行者の検出を行った場合、ある一定条件下では背景を歩行者(人物)とみなしてしまう誤検出を10分間に1回相当とすることが可能です。

 また、輪郭のペアは多数の組み合わせが考えられますが、人物検出に有効なペアだけを選択的に用いる方式となっていますので、従来方式と同等の処理時間のままで、高性能化することができました。

 本技術は、可視光や赤外線など様々なカメラに適用できますので、自動車での歩行者事故の防止や、監視カメラによる不審者の検知、映像コンテンツの自動検索など、幅広いシステムへの搭載が期待できます。当社は、今後2~3年内での実用化を目指し、さらに検出精度の向上を図っていきます。