ニュースリリース

二酸化炭素分離・回収技術のパイロットプラント竣工について

10トンCO/日規模の実証試験を開始
2009年09月29日
パイロットプラントの画像

 当社は、火力発電所などから排出される二酸化炭素(CO)を分離・回収し、地中等に貯留する技術「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術」の実用化を加速するため、CO分離・回収パイロットプラントを株式会社シグマパワー有明 三川発電所(福岡県大牟田市)内に建設中でしたが、このほど同プラントが完成し、本日から10トンCO/日規模のCO分離・回収の試験を本格的に開始します。

 今回完成したパイロットプラントでは、実際の石炭火力発電プラントのボイラーから排出される排ガスの一部を利用して、CO分離・回収システムの性能を実証します。また、今後の大型火力発電プラント向けのシステム設計に向けて、実排ガスの状態やその含有物が性能等に及ぼす影響を検証することをはじめ、システムの実地的な運転、運用面の知見を収集することを通して、最終的には、当システムが発電システムと、性能および運用面で最適に統合された形で実用化されるよう開発を進めていきます。

 当社は、2006年から研究所レベルにおいてCCS技術を火力発電プラントに適用するための基礎研究に本格的に取り組み始めました。2007年には、COの分離・回収過程でエネルギー消費が少ないアミン系吸収液システムの開発に目処をつけ、小規模の試験装置において性能が業界トップクラスであることを確認しています。また、昨年10月にはCCS事業推進の専門組織を設置して、研究開発の成果を具体的な事業化に結びつける本格的な活動を開始しており、今後もこの体制を拡充していきます。

 さらに当社は、パイロットプラントでの実証試験の結果と知見をもとに、現在、国内外で複数計画されている実規模の実証プラント計画への参画を目指しています。発電プラントメーカーとしての実績・知見に基づいて、CO分離・回収システムと発電システムとの性能および運用における統合と全体最適化の開発に注力し、2015年頃とも見られる商用化の時期に向けて、事業化への動きを加速していきます。

パイロットプラント設置の背景と狙い

 火力発電は、現在、世界の全発電量のおよそ3分の2を占めています。また、火力発電の過半が埋蔵量の豊富な石炭を燃料としておりますが、石炭は天然ガスなどの他の化石燃料と比較して、発電量あたりのCO排出量が大きいことが問題です。一方で、世界全体の経済成長を持続しつつも、2050年までという限られた時間の中で、温暖化ガス排出を50%以上削減する等の環境目標を達成するためには、影響の大きな火力発電をいかに環境に適合させるかが至近かつ緊急な課題になっています。現在、特に先進国を中心に、新設の石炭火力発電所のCO排出上限値を規制することが検討されており、それを受けて実規模でのCCS技術を適用した火力発電所の計画や、その併設を前提とした発電プラントの計画が今後加速していくことが予想されます。当社は、2015年頃にも全世界の火力発電市場においてニーズが高まると見られる商用CCSシステムに対応できるよう当分野における事業の確立を進め、2020年度には売上高1000億円規模を目指します。

パイロットプラント概要

所在地: 福岡県大牟田市新港町1番地46
(株式会社シグマパワー有明 三川発電所内)
導入設備: ボイラー排ガスからCOを分離・回収する設備一式
処理能力: 10トンCO/日
CO分離
回収方式:
燃焼後回収方式(化学吸収法)
着工: 2009年3月
試運転開始: 2009年8月
竣工: 2009年9月