ニュースリリース

エボラ出血熱検査試薬の実用性評価完了について

2015年04月08日

国立大学法人 長崎大学
株式会社 東芝

 国立大学法人長崎大学(以下、「長崎大学」)と株式会社東芝(以下、「東芝」)は、長崎大学熱帯医学研究所が開発したエボラ出血熱検査試薬の実用化に向け、先月、西アフリカのギニアで実検体を用いた実用性評価を実施いたしました。この実用性評価で、現在、現地で用いられている既存の検査法であるリアルタイムRT-PCR法(以下、RT-PCR法)と同等の判定精度を持ちながら、判定時間が平均11.2分と1/6程度に大幅に短縮されるなどの優位性があらためて確認されました。

 現地での実用性評価は、長崎大学熱帯医学研究所の安田二朗教授と黒﨑陽平助教が実施したもので、安田教授らは3月16日にギニア共和国の首都であるコナクリ市にある国立ドンカ病院を訪問し、17日から24日までエボラ出血熱患者から採取された実検体を用いた検証実験を行いました。なお、実験に先立ち、ギニア共和国でエボラ対策を統括するサコバ・ケイタ国内調整官と面会し、新検査法の概要を口頭で説明しました。

 今回の実用性評価研究は、平成26年厚生労働科学研究委託事業「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究代表者 聖路加国際大学 竹内勤特任教授)」の分担研究として実施しているもので、検査機器や試薬、防護服等はすべて日本から輸送し、ドンカ病院がエボラ対策を担当するコナクリ市内、および郊外のエボラ治療センター等から集められた100検体について、現在現地で行われているRT-PCR法との比較を行いました。また、安田教授らは現地スタッフへの技術指導もいたしました。

 これらの検体(陽性47検体、陰性53検体)を対象にブラインド検査(検査者が陽性検体か陰性検体かわからない形で行う検査)を行った結果、安田教授らが開発した検査試薬を用いる新検査法は、高い判定精度を持つと評価されている既存のRT-PCR法の検査結果と100%一致しました。また、陽性の判定にかかる平均時間はRT-PCR法が約1時間だったのに対して、新検査法は平均11.2分注1でした。なお、判定中に停電が発生しましたが、安田教授らが実施した新検査法はバッテリー内蔵の装置を用いるため、停電の影響なく検査を実施することができました。

 今回の実用性評価については、現地共同研究者であるマガズバ・ファリ博士(国立ドンカ病院ウイルス診断部長兼ギニア政府出血熱プロジェクトコーディネーター)から高い評価をいただきました。また、3月26日に開催された定例のギニア政府エボラ会議で、本検査法が、標準検査法(RT-PCR法)の結果との一致率100%であり、ギニア政府が把握している機器の中で最も高性能であること、所要時間が平均11.2分と短いこと、小型のため持ち運びも便利であること、検査に不慣れな人にも使いやすいということなどが高く評価されたとの連絡を受けました。

 現在、ギニアだけでもエボラ出血熱の新規患者数は50-100例/週で推移しており、流行の収束に向けて予断を許さない状況が続いています。長崎大学と東芝が取り組む新検査法が現地で導入されれば、ギニアをはじめとする西アフリカでのエボラ出血熱の収束に貢献できると確信しております。

注1 実検体から抽出したRNAを判定するまでの時間。

添付資料