ニュースリリース

令和元年度全国発明表彰「内閣総理大臣賞」と「発明賞」を受賞

　当社グループは、公益社団法人発明協会主催「令和元年度全国発明表彰」において、負極材にリチウムチタン酸化物（LTO）を用いることで、出入力性能に優れ、長寿命を実現した当社のリチウムイオン二次電池SCiB™の発明で「内閣総理大臣賞」を受賞しました。また、複数のアンテナを用いて高速伝送を実現するMultiple-input Multiple-output（MIMO）通信を広範囲で可能にし、無線LANの国際規格にも採用された技術で「発明賞」を受賞しました。

　内閣総理大臣賞を受賞した当社のリチウムイオン二次電池SCiB™は、従来のリチウムイオン電池で一般に用いられる黒鉛負極に替えて、LTO負極を用いることで、安全性を確保しながら高入出力性能、長寿命性能を実現しました。LTO粒子の基礎的な電気化学的研究に取り組むことで、高入出力が可能な電極の開発に成功し、加えて過放電状態(内部短絡時)のLTOが絶縁性に変化する特徴があるため安全性に大きく寄与することを解明しました。さらに、大気中での副反応の影響を抑制することで高い品質を保ったままLTOを微粒子化することに成功し、高入出力、長寿命、高い安全性を合わせ持つ大型の二次電池の製造に成功しました。本発明による大型の二次電池は、従来の黒鉛負極を用いたリチウムイオン電池に比べ、1/5の6分間で80％以上の急速充電が可能です。また、6分間の急速充電を繰り返した場合、黒鉛負極を用いたリチウムイオン電池と比べ劣化が非常に小さいことも確認されています。
　LTOを負極材に用いた二次電池は、2008年にSCiB™として世界で初めて製品化され、電気自動車やマイルドハイブリッド車をはじめ、バス、鉄道、無人搬送機、家庭用蓄電池、電力蓄電システムなどに幅広く採用されています。当社はSCiB™を新規成長事業の一つに据えており、今後さらなる普及により、地球環境、エネルギー・資源問題の解決と、安心・安全な社会に貢献してまいります。

　発明賞を受賞したのは、現在、世界中の多くのスマートフォンやタブレット、ノートパソコンに搭載されている無線LAN通信に関する技術です。通信を行う際は予め標準化された信号（パイロット信号）を用いて送信機と受信機の発信器の周波数を合わせておく必要があります。しかし通信の高速化のため複数のアンテナを用いるMIMO通信では、複数のアンテナから同じパイロット信号を送信すると、アンテナ間の信号の位相差に応じてパイロット信号に強弱が生まれ、特定のエリアでパイロット信号が受信がされず高速通信が行えませんでした。
　本技術は、パイロット信号のアンテナ間の位相差を変える信号構成です。本信号構成の採用で周波数毎に異なる方向にパイロット信号を送信することが可能になり、受信機で複数周波数でのパイロット信号を合成することでどの方向でも発信器の周波数の調整が可能になります。これにより高速伝送が可能なMIMOのエリアカバー率が大きく向上します。本発明はMIMO通信による高速伝送に必須の技術であり、国際規格であるIEEEの無線LAN規格802.11nおよび802.11acに採用されています。802.11ac規格では、本発明を用いた8アンテナのMIMO技術により、無線LANの速度を従来技術と比べて8倍高速化することが可能になりました。

【受賞者】
内閣総理大臣賞
受賞案件：「出入力性能に優れた長寿命大型二次電池の発明」
受賞者：東芝研究開発センター　首席技監　高見　則雄
　　　　電池事業部　セル応用技術部　部長　稲垣　浩貴

発明賞
受賞案件：「MIMO無線LANエリアカバー率向上のためのパイロット信号構成の発明」
受賞者：東芝研究開発センター　ワイヤレスシステムラボラトリー　室長　青木　亜秀
　　　　東芝研究開発センター　ワイヤレスシステムラボラトリー　主任研究員　江頭　慶真
　　　　東芝研究開発センター　コンピュータ＆ネットワークシステムラボラトリー　主任研究員　佐方　連
　　　　東芝欧州研究所　ブリストル研究所　副所長  瀬戸　一郎
　　　　東芝エネルギーシステムズ株式会社　ＤＸビジネスデザインプロジェクトチーム　参事　竹田　大輔
　　　　東芝インフラシステムズ株式会社　車両システム技術部　国内ユーザ担当　参事　豊田　毅彦

　なお、内閣総理大臣賞を受賞した企業として、当社が発明実績功績賞（代表：代表執行役会長CEO　車谷暢昭）を受賞しました。　
 

全国発明表彰とは

全国発明表彰は、大正８年に、我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に始まり、多大な功績を挙げた発明、考案、又は意匠（以下「発明等」）、あるいは、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等が表彰されるものです。科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ、顕著な実施効果を挙げている発明等を対象とする第１表彰区分と、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ、中小・ベンチャー企業、大学及び公設試験研究機関等の研究機関に係る発明等を対象とする第２表彰区分があります。内閣総理大臣賞、発明賞はいずれも、第１表彰区分での表彰となります。