東芝デジタルソリューションズ株式会社

「人を想う」サービスによる「おもてなし」/佐久間 敦

訪日外国人をおもてなしする
トータルインバウンドサービス

2020年の東京五輪を控え、訪日外国人に対するサービス、いわゆるインバウンドサービスの拡充が注目されています。その中で大きな課題は外国人とのコミュニケーションです。言葉の壁を乗り越えるソリューションとして、同時通訳サービスへの期待が高まっています。東芝は、長年蓄積してきた高度な言語処理技術をベースに、現在、さまざまなインバウンドサービスの開発に取り組んでいます。目指すのは、訪日外国人と受け入れ側の両方を支援する新しい「モノ+こと」づくりです。

インバウンドサービスでの「モノ+こと」づくりを目指す

 2014年の訪日外国人旅行者数は1341万人に達し、前年比29・4%増を記録しました※1。政府は訪日外国人旅行者数を2000万人にするという目標を掲げており、さらなる増加が期待されています。2020年には東京五輪も控えています。

 訪日外国人に向けたサービスの拡充は、日本の社会全体にとって大きなテーマといえるでしょう。私たちも独自の技術を生かした新しいサービスで、その一翼を担いたいと考えています。

 日本を訪れてくれた人には地域のコミュニティと触れあい、日本ならではの価値に共感してもらいたい。そんな思いもあり、私たちは訪日外国人に対して「利便性」だけでなく、「楽しさ」や「驚き」「感動」を提供できるインバウンドサービスを目指しています。観光や買い物、飲食などの体験は重要ですが、プラスアルファのサービスによって「おもてなし」を実現する。それは、東芝の掲げる「モノ+こと」づくりの方向性とも合致します。

 インバウンドサービスは多様な要素で構成されます。スマートフォンをはじめ、各種センサーやデジタルサイネージなどのデバイスが、ネットワークを介してインバウンドサービスの基盤と連携することで、さまざまなサービスを提供するというのが大まかな構造です。

図1 トータルインバウンドサービスによるおもてなし

 そのサービス基盤の主要な部分を担うのが、同時通訳や知的対話などを実現するクラウドサービス「RECAIUS」です。この他、位置情報や認証・決済などの要素を加えることで、幅広いインバウンドサービスをトータルで支えます。ここで特に重要になるのが、同時通訳と位置情報に関する技術です。

 私たちがインバウンドサービスを提供する際の主たるお客さまは、受け入れ側となるデベロッパーや小売業、交通機関、ホテルなどです。

 こうした施設におけるサービスは、大きく三つのフェーズに分かれています。店舗への集客力を高める「認知・集客」、施設やエリア内で外国人の不安やストレスを減らす「回遊・誘導」、外国人に対応するスタッフを支え接客力を高める「購買・体験」です(図1)。

  • ※1 日本政府観光局(JNTO)の「国籍/月別 訪日外客数(2003年〜2015年)」

店舗スタッフと買い物客のコミュニケーションを支える同時通訳

 認知・集客フェーズでは、適切なタイミングと場所で、適切な情報を発信することが重要です。例えば、旅行前に外国人が日本を訪れる計画を立てている段階にアプローチする現地プロモーション、その他、スマートフォンへの情報配信、カメラで性別や年代などを把握しデジタルサイネージに関心の高い情報を提示するといったことが考えられます。

 回遊・誘導フェーズでは、セルフ端末を用いた情報提供があります。訪日外国人が施設内のサイネージの前に立って質問すると、欲しい情報を自国の言語で伝えてくれます。文字情報を表示することもできますが、合成された音声で伝える方が適した場面もあるでしょう。スマートフォンで位置情報を把握し、質問した人を適切な方向に誘導することもできます。

 回遊や誘導をサポートするICTにより、施設の案内などを担当するスタッフの負荷は軽減されます。店舗や施設の視点で見ると、この「前さばき力」を高めることで施設運営の効率を向上させるとともに、「おもてなし」のレベルアップを図れます。

 購買・体験フェーズでは、案内や接客などの円滑化をインバウンドサービスが支援します。これまでにもショッピングモールや都内の百貨店などいくつかの現場にサービスを導入し、サービスの検証を行いました。

図2 同時通訳サービスの画面例

 ショッピングモールや百貨店では近年、旅行者の国籍や言語が多様になり、多くの店舗がコミュニケーション上の課題を抱えています。そこで、私たちが開発した同時通訳サービスを提供(図2)。タブレット端末を使って、店舗スタッフと来店者の会話をリアルタイムに翻訳しました。

 店舗スタッフが日本語、来店者が中国語で話した内容は、即座に翻訳されて手元のタブレット端末に表示されます。来店者の中国語のお問い合わせに店舗スタッフが日本語でお応えできる上、そのやり取りがタブレット端末に2カ国語で表示されることでお互いに安心して利用できる点や、店舗での会話特性に対応した辞書によってスムーズな会話が行える点などが確認できました。

 このサービスは現状、日・英・中の3カ国語に対応できます。また、タブレット端末を使った設置型の同時通訳サービスだけでなく、スマートフォンアプリを用いた携行型や、無人での対応端末などでのサービス提供も検討しています。

 こうした実証サービスを通じて、これまで見えなかった訪日外国人に対するおもてなしの課題をあぶり出すことで、インバウンドサービスを一層ブラッシュアップしていきたいと考えています。

高精度の同時通訳システムと通訳者による支援を組み合わせる

 私たちの同時通訳サービスの強みは辞書にあります。カスタマイズができることで業種や店舗の特性、地域的な傾向だけでなく、専門用語や業界用語、社内用語にも対応する辞書を追加できます。小売業などのような一般消費者向けの領域だけでなく、専門性の高いビジネス向けにも活用できます。

 ただし、同時通訳の精度が向上してきたとはいえ、機械学習によるコンピューター技術だけでは現状では限界があることも確かです。そこで、人手による補完サービスも検討中です。例えば、同時通訳サービスとのやり取りの中で「どうしても通じない」「ニュアンスが分からない」といった場合は、通訳者が待機するセンターにつないでサポートしてもらうというものです。これにより、本来の課題である外国人とのより良いコミュニケーションを実現するとともに、受け入れ側はより少ない人手でより多くの外国人に対応することができるでしょう。

 同時通訳の精度向上に向けた取り組みは継続的なものです。サービスが利用される度に、個々の表現や改善点などがフィードバックされ、機械学習のプロセスを経て辞書がレベルアップしていきます。

 このようなビッグデータが蓄積されれば、将来的には多方面での活用も視野に入ってきます。例えば、訪日外国人の困りごとを体系的に整理すれば、外国人向けの新しい商品やサービスの開発に役立てられます。位置情報とひも付けて、その場所での会話を解析することで、地域の魅力アップにつながる提案もできるかもしれません。

 急増した訪日外国人に向けた日本のインバウンドサービスは、まだまだ不十分です。今後はさまざまな顧客やテクノロジーを持つ企業との協業を通じて、新しいサービスを次々に立ち上げていきたいと考えています。

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