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技術情報

世界最高出力のKu帯パワーFETの開発について

衛星通信基地局向け、窒化ガリウムで実用化

衛星通信基地局向け、窒化ガリウムで実用化

当社は、Ku帯※1(14.5GHz)に対応した高周波増幅素子として世界最高の出力65.4Wを実現した窒化ガリウム・パワーFET※2を開発しました。 ハイビジョン放送データなどの大容量通信に対応した衛星通信基地局などへの採用を見込んでおり、本年中にサンプル出荷を開始し、来年3月末までに量産を開始する予定です。

Ku帯対応の高周波増幅器では、現在主流の電子管を半導体で置き換える開発が進められており、特に高周波特性に優れた窒化ガリウム素子の実用化が期待されていました。

今回開発したFETは、電子移動度の高いHEMT※3構造をKu帯向けに最適化したほか、基板とチップ間の配線を信号ロスの少ない貫通電極※4で形成しました。さらに、回路基板の設計も全般的に見直し、窒化ガリウム素子として実用的な性能水準を達成しました。

窒化ガリウム・パワーFETは、衛星通信基地局やレーダー向けに、電子管からの置き換えも含めて堅調な需要が見込まれます。これに対応し、当社では昨年のX帯(9.5GHz)向け製品化に続き、Ku帯向けにも早期製品化を目指し、今回の開発を進めていたものです。

なお、本件については、10月8日からミュンヘンで開催されているマイクロ波の国際会議「European Microwave Conference 2007」において本日発表を行います。

  • ※1 Ku帯:12~18GHzの周波数帯
  • ※2 FET:電界効果トランジスタ
  • ※3 High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)
  • ※4 トランジスタからチップ裏の接地面まで貫通孔(via hole)を形成し電気的に導通させる技術

開発の背景と狙い

近年、衛星通信の大容量化・高速化やレーダー到達距離の拡大に伴い、増幅素子の高出力化が求められており、既存のガリウムヒ素製品に対し高周波・放熱特性で共に優れる窒化ガリウム製品へのニーズが増大しています。

これを受けて当社では、C帯(4~8GHz)以上の高周波・高出力窒化ガリウム素子の開発に取り組み、既に6GHz帯、9.5GHz帯で世界最高出力の製品を販売しています。今回、新たに14.5GHz品を製品化するものです。今後は、より周波数の高いKa帯(18~30GHz)以上に対応した製品開発も進めていきます。

開発の概要

  • 1 デバイス技術

    • (1)今回のFETでは、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)構造を採用しました。
    • (2)今回の開発に際し、熱伝導率の高いシリコンカーバイド(SiC)ウェーハ基板上に形成した、窒化ガリウム層とアルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)層の積層構造を、Ku帯に向けに最適化することで優れた性能を実現しました。
    • (3)Ku帯への高周波化に向け、ゲート長を0.3μm以下に微細化するとともに、各電極の形状や素子構造などを熱の分散も考慮して最適化しました。
  • 2 プロセス技術

    • (1)チップの素子形成面とパッケージへの実装時接地面との高周波接地性を改善するために、チップ内に裏面まで通じる貫通孔(Via hole)を形成する独自技術を開発しました。今回のFETで採用しているSiC基板は貫通孔形成が難しいため、本技術は新製品実現のためのブレークスルーの一つになりました。
    • (2)微細化で顕著となるゲートリーク電流を抑制するため、ゲート電極周辺の保護膜形成方法に独自の工夫を導入し、リーク電流を当社従来比30分の1に低減しました。
    • (3)ゲート長0.3μm以下の安定加工を実現するため、EB(電子ビーム)露光を導入しました。

新製品の主要特性

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新製品の主要特性
線形利得 8.2dB
飽和出力 65.4W
動作電圧 30V
動作周波数 14.5GHz
チップサイズ 3.4mm x 0.53mm
パッケージサイズ 21.0mm x 12.9mm (最外周寸法)

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2007.10.09 株式会社 東芝