4PLスペシャリスト「発見力」 長年の「自己流ロジスティクス」
に潜む課題を捉えた発見力

長年の「自己流ロジスティクス」に潜む課題を捉えた発見力

課題

  • 1 低温帯の倉庫で働く環境に難があり、人手不足
  • 2 倉庫内の製品保管が、全て平積みなど、ロジスティクスの知見が不足
  • 3 拠点が複数箇所に分散し、効率悪化によるコスト発生
  • 1
    低温帯の倉庫で働く環境に難があり、人手不足
  • 2
    倉庫内の製品保管が、全て平積みなど、ロジスティクスの知見が不足
  • 3
    拠点が複数箇所に分散し、効率悪化によるコスト発生

お客様の物流課題を発見し、その解決に向けて具体的な戦略を描く当社の4PL。戦略を描くだけではなく、実行支援までを担います。
東芝ロジスティクス株式会社 プラットフォーム事業部 4PL開発室の河田 耕 氏は、4PLスペシャリストとして、大手医薬品メーカーD社のロジスティクス改革を、2018年4月の戦略策定フェーズからサポート。現場にも足を運び、机上の空論に終わらない現実的なロジスティクスの実現に向けて、動き出しています。
D社の課題を発見し、解決までのマイルストーンを置いた当社の「発見力」とは。河田 氏がプロジェクトについて語ります。

20年以上続く「成り行きロジスティクス」の改革ニーズ

――プロジェクトを受注した経緯を教えてください

東芝グループ企業からの紹介で、ロジスティクス改革を検討していたD社が主催するコンペに参加し、7ヵ月のコンサルティングプランを提案したことがきっかけでした。

D社のロジスティクス改革は、2018年4~10月の「計画フェーズ」と2019年1~7月の「実行フェーズ」に分かれており、各フェーズでコンサルティングを担う企業のコンペが開かれるとのことでした。

D社には、今後の事業成長に向け、2020年までにロジスティクスを刷新したいとのニーズがありました。当社がこれまでの経験に基づき、オペレーションの効率化や倉庫の自動化、拠点集約などを盛り込んだ提案をしたところ、それが先方のニーズと合致。大手ロジスティクス企業が競合する中、「計画フェーズ」のパートナーとして当社を選んでいただきました。

――受注した当時、D社のロジスティクスはどのような状況だったのでしょうか?

倉庫に大きな問題が3つありました。1つは、働く環境作りに改善の余地があったこと。D社の取扱商品は、低温での保存が必要な薬品です。そのため倉庫内は非常に寒いのですが、作業はすべて手作業。厳しい環境ゆえに、新しい作業員の採用は難しい状況でした。既存の作業員は高齢になりつつあり、D社としては早急に働きやすい環境を整える必要があったのです。

20年以上続く「成り行きロジスティクス」の改革ニーズ

2つ目に、作業効率の低さでした。WMSを導入しておらず、1人ひとりが手作業で検品チェックをしているため、余計な工数が掛かっており、とても非効率だと感じました。
3つ目としては、スペースの使い方が、もったいないと感じることがありました。フォークリフト免許の有資格者が、1人もいないとのことで、倉庫の「高さ」を全く活用していない状態で、荷物はすべて平積みだったのです。
これらの課題は、過去20年以上に渡り、ロジスティクスを社内にて実施しており、ロジスティクスに関する一般的な知見を持っていないために生じていたものです。

20年以上続く「成り行きロジスティクス」の改革ニーズ

ロジスティクスの潜在的な課題を発見し、
経営層と目線を合わせたグランドデザインを策定

――2018年4~10月の計画フェーズでは、どのような切り口で取り組んだのでしょうか?

現状把握に始まり、「作業の標準化」「拠点集約」「倉庫の自動化」の3つのポイントでロジスティクス改革のグランドデザインを策定しました。

現状把握するにはデータが必要なのですが、D社はWMSを導入していなかったので、精緻な作業データはありませんでした。そこで、最初の作業は、現場に足を運びデータを取ることにしました。私も含めた当社のプロジェクトメンバー4人でストップウォッチを片手に作業工数の計測をしました。

その結果見えてきたのが、受注から発送までの作業手順にムダがあることでした。一般的な倉庫と比較すると、半日分ほど長い時間を使っており、作業員1人当たり1.5~2時間のアイドルタイムが存在していました。これを解消するために、作業スケジュールの見直しと、「作業の標準化」が必要だと思いました。そこで、さらに倉庫内のデータを可視化するために、WMSの導入を提案させていただきました。

――倉庫内作業を標準化させる提案をしたのですね。
「拠点集約」や「倉庫の自動化」は、なぜ必要だったのでしょうか?

「拠点集約」が必要だったのは、D社が所有する複数の物流拠点の間で、無駄な輸送コストが発生していたためです。当社で在庫の横振りなどを考慮して試算した結果、拠点分散によるロスは年間数千万円に上ることが明らかになりました。D社も、「集約した方がいいのでは?」と感覚的には思っていたようなのですが、データを見て、拠点集約・集約化が必要と判断いただきました。

「倉庫の自動化」については、「倉庫を最先端の技術を用いてフル自動化したい」といった先方の思いがあったことから、検討を開始しました。

特に、冷蔵倉庫での作業が自動化されれば、作業員に優しい環境に近づくので、できるだけ希望を叶えたいと私も思っていたのですが、投資額には限りがあります。経営的な目線に基づいて試算を出し、費用対効果を検証。全自動化は難しいことを説明し、工程の一部のみを自動化する方針としました。

ロジスティクスの潜在的な課題を発見し、経営層と目線を合わせたグランドデザインを策定

――どういったことを心掛けてコンサルティングを進めたのか教えてください

方向性にズレがないかをすり合わせることに最新の注意を払いました。
毎週のようにワークショップを開催し、逐一お客様のご要望を確認しました。累計50回以上のワークショップは、限られた期間の中で計画の質を高められた成功要因だと感じています。

ワークショップを開催した意図には、当社からの意見の押し付けをしたくないという思いもありました。当社が「このやり方が絶対だ」と言ってしまうのは簡単です。先方も「ロジスティクスのプロ」がいうことだからと了承してくれるかもしれません。ですが、それでは新しい物流構想に対する先方のモチベーションの低下が懸念されます。当事者意識が弱まってしまっては、当社のコンサルティング期間が終了した後に、ロジスティクスを維持できなくなる可能性もあるのです。なので、ロジスティクス企業として「正解」を押し付けるのではなく、複数の候補を出した上で、最適な答えを共に見つけていく共創の姿勢を常に意識していました。

スピード感のあるグランドデザインとレスポンス
実行フェーズの受注も獲得

――計画フェーズで策定した新物流構想のグランドデザインに対する、D社の反応はどうでしたか?

グランドデザインは2018年9月にD社の承認を得ることができました。2020年の新物流構想を前倒しできる可能性を持ったスピード感のある内容を気に入っていただけたようです。

さらに、グランドデザインを具現化する実行フェーズのパートナーにも、4社の中から当社を選んでいただきました。計画フェーズにおけるD社からの質問に対する当社のレスポンスの早さを高く評価していただき、実行フェーズでもお手伝いさせていただけることが決まったのです。当社と共に描いたグランドデザインなので、最も精緻に具現化できると自負してはいましたが、対応面でも満足いただけたことは嬉しかったですね。当社が培ってきたロジスティクスのノウハウが、広い業種・業界に求められていることを実感するきっかけでもありました。

――計画を描く場面と質問に返答する場面の両方でスピード感を発揮できた要因はどこにあるのでしょうか?

チームの役割分担がしっかりできていたことだと思います。
各分野のスペシャリストをチームに加え、4人チーム体制で運営していました。私はリーダー、ファシリテーターとしてスケジュールコントロールが主な業務でしたが、データ分析や、過去に携わった拠点集約や庫内設計の事例からD社にも展開できそうなノウハウの提供も担っていました。ほかのメンバーも、物流コンサルタントの経験が多くある者や、倉庫に関する知見が豊富な者など、各分野のスペシャリストが揃っており、作業を分担したので、迅速なプロジェクト運営ができたと考えています。

スピード感のあるグランドデザインとレスポンス 実行フェーズの受注も獲得

荷主にとっての最善を追求
ロジスティクスの内製を選択

――2019年1~7月の実行フェーズでの取り組みを教えてください

グランドデザイン実現に向けた具体的な調整を始めました。

最初に実施したのは、このままロジスティクスを内製するのか?それとも外注化するか?の意思決定を支援するための、プロコンリストの作成とディスカッションです。当社を含めた3PL業者への外注化案も出しましたが、最終的に内製との結論に至りました。

同時進行で検討していた拠点集約における倉庫の賃貸借期間が20年なのに対し、3PL業者との契約は長くても5年ほど。倉庫契約期間中に業者との契約更新がなかった場合、また、ロジスティクスの再構築が必要となってしまうといった懸念がありました。それなら、社内にロジスティクスのノウハウを貯めておいた方が、D社の将来のためだということで、内製と決定しました。

――内製・外注のプロコンの他にはどのような調整を進めたのでしょうか?

「拠点集約」についても、具体的な意思決定に入りました。入出荷データから各拠点の稼働率等を算出し、現在のサービスレベルを維持するためには、どこに拠点を置けばいいのか?を検討。候補地をもとにD社とディスカッションをし、複数拠点から2拠点(1拠点+BCP拠点)に集約すると決めました。

「倉庫の自動化」の範囲についても、どこまで自動化するのかを、複数案を用意して意思決定をサポート。出荷前に商品を搬送するベルトコンベアの導入や、倉庫の高さを活用した格納方法など、様々な施策を盛り込みました。

また、WMSの導入についてはコンペを実施し、医薬品専門のWMSを開発している企業を選定しました。当社やグループのIT企業でもWMSを開発していますが、医薬品の管理に特化したWMSの方がD社にとってベストであると判断し、そちらをお勧めしました。

――プロジェクトは、現在も進行中(2019年7月時点)とのことですが、今後について教えてください

実行フェーズは一旦2019年7月で終了しましたが、コンサルティングについては継続の打診があるので、引き続きお客様のロジスティクス構想の実現に向けて、サポートしていきたいと思っています。

課題解決アプローチ

  • POINT 1

    可視化と標準化

    可視化と標準化

    現場作業の無駄を可視化するためのWMS導入と、作業標準化を導入。無駄なアイドルタイムを排除し、効率的な体制に。

  • POINT 2

    拠点集約

    拠点集約

    サービスレベルを維持しながら拠点集約できる範囲を試算し、2ヵ所に集約することを決定。

  • POINT 3

    倉庫の自動化

    倉庫の自動化

    費用対効果を検証し、ベルトコンベアの導入や、倉庫の高さを活用した格納方法などを複数案提示。

河田耕

SPECIALIST PROFILE

4PLスペシャリスト プロフィール

東芝ロジスティクス株式会社
プラットフォーム事業部 4PL開発室
参事 河田 耕

参画プロジェクト

東芝家電メーカーサービスパーツ拠点立ち上げPJ参画
大手メーカー物流子会社物流改革PJ参画
大手電子機器メーカー倉庫ロジ診断・改善

趣味

立ち呑み屋めぐり(笑)(2019年7月現在)

聞き手:前川 有香(株式会社GIG)