家電拠点集約

家電拠点集約

CASE STUDY 01大手家電メーカー様

大手家電メーカー様

課題

  1. 販売チャネルの変化により、配送の大ロット化に対応が必要
  2. 全国約20ヵ所の物流拠点がキャッシュフローに悪影響
  3. 生産拠点も国内から海外が中心となり、リードタイムの改善が必要に

全国20ヵ所の物流拠点を3拠点に集約し、
キャッシュフローと利益率の改善

ロジスティクスを取り巻く環境は、常に大きな変化を続けています。2000年代前半に、生産拠点の海外移転や、販売チャネルの変化にともない、倉庫の拠点配置は分散傾向から一気に集約傾向へと舵が切られました。本事例の大手家電メーカーも、生産拠点を海外にシフト。しかしその結果、リードタイム増加によってキャッシュフローが悪化し、ロジスティクス改革の必要に迫られていました。その対策の1つとして実施したのが、「拠点集約」です。
当社は、業界に先駆けて「拠点集約」を実施し、キャッシュフローや利益率の改善を実現。ここでは、当社 プラットフォーム事業部 坪倉が、詳しい取り組み内容と効果を紹介します。

導入の背景と課題販売経路や製造地の変化に伴い棚卸資産が増加
キャッシュフローの改善が求められた

かつては、「街の電気屋さん」と呼ばれたメーカー系列家電販売店が全販売量の8割を占めており、小口のルート配送で納品をしていた。そのため、全国各地に物流拠点を置き、拠点ごとに安全在庫を保持する必要があった。しかし、激化した家電量販店の値下げ競争の影響で、家電量販店に対する売上が「街の電気屋さん(メーカー系列家電販売店)」に対する売上を逆転し、家電量販店が全販売量の9割を占めるようになると、大量ロットでの納品が主流となり、従来の拠点数は不要となりました。各物流拠点の在庫管理や、各地域の需給バランスの把握には多大な工数がかかるため、1984年時点で全国20ヵ所あった物流拠点を維持することのデメリットの方が目立つようになってきました。
「拠点ごとに在庫を持つため、お客様の棚卸資産は増加し、キャッシュフローが悪化していました。喫緊の課題として、当社は、物流の観点からキャッシュフローを改善するようにお客様から求められていたのです」(坪倉)
さらに、国内人件費の高騰や、海外における優遇措置を背景に、お客様は、2000年頃から生産拠点を海外にシフトし始めました。その結果、輸送リードタイムが延び、トータル物流コストが増加していたため、物流費の削減も必要な状況であったと、坪倉は言います。

施策キャッシュフロー改善のため、
本州2拠点までに集約

当社は、お客様からキャッシュフローの改善依頼を受け、棚卸資産の圧縮を図ることとなりました。現状を確認すると、拠点が分散していることで各拠点が安全在庫を持たなくてはならず、会社全体の在庫が過剰になっていました。さらに、製造リードタイムが伸びたことで部品在庫や仕掛在庫も増えており、適正な在庫量への改善が求められていました。
そこで、製品在庫の削減効果が期待できる「拠点集約」を提案。加えて、部品在庫や仕掛在庫の削減を目的として、部品の一部共通化と倉庫内作業フローの改善などの施策も検討しました。
「施策の柱となったのは『拠点集約』です。各拠点の稼働率や日本各地へのアクセスなどを勘案し、各拠点の集約地は最終的に、関東(神奈川県川崎市)と関西(大阪府大阪市)の本州2ヵ所と北海道(恵庭市)の3拠点に決定しました。
九州拠点は、関西拠点に集約することにしましたが、長距離輸送になるため、コストを抑える必要がありました。家電業界では「注文翌日の午前着」が、主流となっています。しかし、鹿児島県南部など距離が遠い一部の地域には、翌日の午前着で配送することが困難なため、サービスレベルは下がりますが、お届け日数を半日伸ばすようにお客様と調整しました」(坪倉)
しかし、「拠点集約」によって新たな問題が発生したのです。「1つ目の問題は、季節変動する需要への対応です。拠点を集約すると、繁忙期と閑散期で作業量が大きく異なるため、弾力性のあるリソース管理が欠かせません。取扱物量を予測して、計画を立案し、その後もPDCAを回したことで効率よく倉庫の運営を行えるようにしました。2つ目は、輸送会社の変更による配送先との関係再構築です。重要なのが、配送先と従前の輸送会社のドライバーとの間にあった暗黙の取り決めを把握することでした。大部分は拠点集約する前に内容を把握の上、調整できましたが、把握しきれなかったケースもあり、お客様と話し合いを地道に重ね、解決していきました」(坪倉)

大手家電メーカー様

キャッシュフローの改善施策を進めることと並行して、損益改善の施策も打ち出しました。物流コストは販売変動費に該当するため、削減できれば利益率が上がります。定期便を廃止した「輸送モードの変更」や、お客様にコンテナ単位で発注してもらうことで、無駄な積み下ろしをなくす「コンテナ直送」などを実施しました。こういった施策は、サービスの品質にも影響があり、ステークホルダーがお客様のエンドクライアントにも及びましだ。そのため、当社だけでこの施策を遂行することは困難でした。そこで、当社だけで出来ることと、エンドクライアントとの交渉等、お客様の協力が必要なことを明確にし、役割分担をして共同で交渉に臨みました。
「エンドクライアントとの交渉は、お客様にお願いしましたが、私はお客様の物流コストを削減するため、当社内との交渉が必要でした。当社のミッションは、どのようにお客様へ貢献するかでしたので、極論をいうと、私は『東芝ロジスティクスの売上をどう減らすか』しか考えていませんでした。その一つが当社の倉庫を使用せずに行う「コンテナ直送」でした。その話を社内に持ち帰ると、損益責任を持つ上長に『なんでうちの倉庫の在庫を減らすのだ』と怒られてしましましたが、なんとか説得して、理解してもらいました(笑)」(坪倉)

効果棚卸在庫の圧縮に成功し、
キャッシュフローの改善を実現

2008年には、ほぼすべての配送先で翌日配送を実現できるよう、本州2拠点・北海道1拠点への集約が完了しました。「拠点集約」を実施した結果、棚卸在庫が減り、お客様から指示のあったキャッシュフローの改善を実現することに成功。同時にコスト削減にも貢献しました。


    【効果】
  • 拠点数が減ったことにより、安全在庫の総量が減り、在庫コストマイナス32%
  • 定期ルートの配送を廃止し、物流コストマイナス9%

在庫コストは各月の月末在庫(瞬間在庫)の年間平均


また、拠点集約した結果、倉庫などの固定資産を減らすこともでき、棚卸資産の圧縮と相まって大幅なバランスシートの縮小を実現。また、物流コスト・在庫コストの削減により利益額が大きくなり、投下資本利益率の上昇にもつながりました。

今後の方向性「集約」か「分散」か
トレンドを見極め、時勢に合った拠点戦略を考える

拠点の「集約」と「分散』のトレンドは、時勢によって移り変わります。
「当社は、家電業界では先駆けてドラスティックな拠点集約を進めてきましたが、労働力不足や、労働規制の強化などにより、長距離ドライバーの確保が難しくなっているため、今後は『集約』から『分散』に進んでいくと分析しています。ただ、再び分散させるとしても、過去と同じように全国各地に多くの拠点を設置するのではなく、今の集約拠点の利点を取り入れたハイブリッド方式を検討していこうと考えています」(坪倉)

大手家電メーカー様

また、今後の展望について、複数の家電メーカーや家電量販店との共同物流を実現する、当社の家電プラットフォームを活用した取り組みについても語ってもらいました。

「拠点の管理を含めた家電プラットフォーム事業の構想としては、家電量販店と倉庫の相互利用も拡大していきたいですね。当社は、中部地区で家電量販店対応の倉庫を運営しているのですが、同倉庫にお客様の在庫を置かせていただければ、家電量販店から受注した製品を運搬レスで倉庫内の名義替えだけして納品できます。倉庫内のやりとりなので物流コストは削減され、リードタイムも短縮されます。このような製販一体の倉庫拠点も増やしていく予定です」(坪倉)

労働力人口の減少や法制度の改定など、これからもロジスティクスを取り巻く環境は変化を続けていくことになります。当社は、時勢に合わせたロジスティクスのあるべき姿を追い求め、お客様にとってのベストソリューションを提供していきます。